148 王庭十二剣
■SIDE:綾織ナズナ
『まずこの世で初めに生まれたのがEXcaliburだ。誰が打ったのかも、誰が鍛えたのかもわからない本物の聖剣。奴に斬り裂けないものは存在しない。だから本当は奴一振りでよかったんだ。
だがヴァチカンは欲深かった。一振りじゃ怖かったんだろうな。だから贋物である我を造った。二番目はダーインスレイヴだ。後の「兄弟」も皆EXcaliburを基にして第三者が造ったものだ。
三番目に生まれたのはTime Keeper。正義決壊天秤が自分の身体を引きちぎって造ったものだ。これはいざというときに自分を殺せるように造ったと聞いた。奴は平等を重んじる。自分が何かを逸した時にそれが必要になるのだと踏んだんだ。
四番目はThe Durandal。通称不滅剣。我もTime KeeperもEXcaliburと比べれば贋物でしかない。偽物だ。だがデュランダルだけは本気でEXcaliburを模倣しようと思い造られたものだ。世界中の刀匠がヴァチカンに集い100年かけて造られた。お前らにも七匠の知り合いは居るか? そいつらの先祖も関わっていたらしい。
五番目のグラム、六番目のハバキリ、七番目のクリカラ、八番目のダモクレスソード、九番目のクラウソラス。こいつらはもともと神話上の存在だったものの名を借りて人間が造った贋物だ。十三獣王は殺せるし、魔剣であることに間違いはないが、それ以上でもそれ以下でもない。
十番目のティルフィングは五番以降の中で最も強かった。時を巻き戻す水瓶座に我をも殺せると言わしめる程にな。だが血を求める性格が災いして人間からは酷く嫌われた。どうでもいい話だがな。
しかしティルフィングが生まれたのは、人間と悪魔の戦争が苛烈になった時代だった。蠍座がそこに居る獅子座の名を使い暗躍していた時期だ。黒死病で何人の人間が死んだ? 世界大戦で何人の人間が死んだ? それを終わらせようと十一番目の魔剣が打たれた。
十一番目。魔剣レーヴァテイン。奴はヨーロッパで何度も蠍座とぶつかった。二次大戦の頃だ。蠍座が起こそうとした百鬼夜行を止めたりな。だが奴にはエクスカリバーに似せ過ぎた弱点があった。それは我と同じく感情があったこと。奴が今人間の姿で居るのは魂の実在を問うためだ。
そして、戦争が終わった世に何が残る?
残ったのは核兵器だ。
欺瞞と愚かさの産物。それを斬る最後の一振りが必要となった。
そして造られたのが空虚なる漂白だ。
その白無垢の剣は虚構を斬る。偽りを、そして欺瞞を。
斬り、自らも虚構を生む。その剣は斬るんじゃない、司るんだ。
総ての王庭十二剣の虚構として働く。
偽物が振れば偽物として振る舞う。だが本物がそれを振れば、本当のニセモノとして振る舞い、エクスカリバーすら真似る。
だから最弱にして、最強なのさ──』
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