147 ダーインスレイヴ
■SIDE:綾織ナズナ
「この魔剣はマユラ姉さんがシオンの中に鎖として封印される前に、俺に託したものだ」
「……じゃあ、千里行黒龍の暴走も見てきたの?」
「ああ。幼いシオンも見てきた。姉さんが助けた後に気絶したから、病院まで連れてったよ」
「そっか。何か言ってた?」
「おじさんありがとうだってさ」
「おじさん」
「お兄さんと言われたかったがまあいい。それと面白かったのがな」
「?」
「病院で寝てる間もうわごとみたいに剣聖になるんだって言ってたよ」
「ふふっ。シオンは、その時から、ずっとそうだったんだね」
少しシオンの過去の話をして、魔剣ダーインスレイヴに話を戻す。
『お前たちはマユラの下僕か? 後継者なのか』
「後継者だ。正当に、正統に引き継いだ」
『ならば覚悟を示せ』
アレン君はダーインスレイヴで左手のひらをバッサリと傷つけ、染み出してくる多量の血液を魔剣に吸わせた。
『男の血はむさ苦しくてかなわん。マユラの豊潤な血が恋しいわ』
「悪かったな。今度までに血をさらさらにしておく」
冗談みたいなことを真顔で言うのが折紙アレンなので面白い。
『して、何が斬りたくて我を呼んだ。そこにある門は斬れぬぞ。アレは我の担当ではない。エクスカリバーを呼べ』
十三獣王に対応する王庭十二剣、ここでは獅子座に対してエクスカリバーの名を出した。不倒門を獅子座だと認識できているのか? ダーインスレイヴはおそらくこの場で誰よりも、何かを知っている。そんな可能性が辺りを包んだ。
「門は斬らない。アレは味方だ」
『悪魔が味方か? アレらを殺すために我らが造られたとヴァチカンは教えなかったのか』
「ここはヴァチカンじゃない。日本だ」
『馬鹿にするな。それぐらい知っている。ならばヴァチカンの権威も落ちたということだな。それで、我に何を求める』
ダーインスレイヴはやや呆れて言った。獅子座のレグルスは静観している。
「空虚なる漂白について訊きたい。知ってるだろ、仲間のことなんだから」
鼻で笑うダーインスレイヴ。だが嫌味な感じではなかった。
『我らは目的を同じくするだけである。造られた場所も時代も違う。だがマユラは王庭十二剣に詳しかった。それは悪魔を駆逐するために必要だったからだ。そんなくだらぬ話を延々と聞かされた我は次第にそれを覚えた。ああ、知っているさ。空虚なる漂白王庭十二剣、隠されし最後の一振り。虚構を斬り刻む者──そして、己こそが虚構たる者』
ダーインスレイヴはそう言って、カカカと笑った。
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