144 永遠
■SIDE:綾織ナズナ
「あなたが……ロサンゼルスをあんなふうにして、特異点から沢山の来訪者を放って……人間に敵対していた元凶だって言うの?」
不倒門は少しだけ間をおいて話した。
『ここに封印されているただの獣にそんなことが出来ると思うのか。我はここで、魂の流転するままに永遠の時を生きゆくまでよ』
だったら今までの事件はなんだった? 魔刃学園っていったい何なの?
「おかしいよ、だって敵も先輩も、みんな元凶は十三獣王の王様になってる獅子座なんだって──」
『仮にそれが真実だとして、お前は一般的な来訪者もとい悪魔とどれ程戦った? この世界にどれだけ、本物が在った?』
ぎくりとした。確かにあたしはこれまで、中級か上級悪魔、果ては十三獣王としか相対したことがない。世間を襲う来訪者は人づてかニュースでしか見たことがない。だけどそれだけで魔刃学園を疑える? 悪魔の甘言であることは否定できない。
『我は昔から人間を嫌ったことなどない。力を貸せと言われれば貸したが、それまでだ。元々悪魔に感情などない、故にそれを渇望する心すら持たないのだ。だから我はある女と契約した』
「女……?」
『降神マユラだ』
ここでその名が出てきたのは意外だった。八神ライザでも幼女学長でも冷帝でもなく、すでに死んだ人間の名だった。
『我はさっき思い出した。我を殴ったのはそこで眠る娘だけではない。降神マユラは不倒門たる我を素手で殴った。しかも我と無駄話をしながらな。初めての経験だった。我に感情はないが、それは好意なのかもしれないとすら思った』
「それで契約って……?」
『急かすな。時間がないわけでもあるまい。降神マユラは我の試練を突破すると、不刃流を見せびらかした。私は魔力が無くても強いんだ、などと言ってな。我は一層気に入った。以来、降神マユラは放課後に我の元に話しに来るようになった。ある時我は、契約を持ち掛けた』
少し空気が変わった。
『我はこの世界を征服する気などなかった。我の名を使って好き勝手やっている蠍座の話は降神マユラから聞いていた。だから、我の力を貸す代わりに、総ての十三獣王を駆逐してくれと頼んだ』
「……っ。十三獣王は世界の均衡を保っているのに、殺したら世界が崩壊してしまう──」
『そうだ。だが我にとっては我もろとも世界が終わってしまった方が、この虚構の世界を生きるより、良い事だった。真実を見通す目を持つ降神マユラにとっても「解放」が世界を救うひとつの手だと、意見が一致した。降神マユラと我は結託し、我に残る全ての力を与えた』
「あなたの力って何?」
『──永遠だよ』
「永遠──……」
獅子座の力《永遠》について、獅子座である不倒門は語った。
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