表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/372

143 レグルス

■SIDE:綾織ナズナ

 ピシっ。そんなコメディみたいな音が鳴ったのは、あたしとシオンが一緒に不倒門を殴り続けて7時間後のことだった。前回彼女が殴り続けたのが11時間だと考えると、ふたりで協力した甲斐はあったというものだ。


 それにふたりとも疲れてはいるけど、ぶっ倒れてはいない。


『ほう。我を殴る人間がふたり現れるとはな』


 不倒門はふと静かに思案するように話し出した。


「あなたにとって何か不都合なの?」

『否。歴史上、というのもおかしいが、繰り返す我の魂が、これは初めてだと言っている』


 繰り返す魂という表現が引っかかった。


「まって。不倒門、あなたは仙石ネムリのループとか《魔笛》のループの記憶があったりする?」

『否。そんなことは知らぬ。だが、我を殴るのはいつでもその娘だけだった。その娘だけが我を素手で傷つけることが出来る。それはある才能によるものだ』

「えっと、あの、ごめんなさい私、なにも状況がつかめてなくて……」


 昔の引っ込み思案なシオンがおずおずと言った。あたしはとりあえず何も言わずに彼女のことをぎゅーっと抱きしめてから、ちょっと休んでてと言った。シオンは「ふわふわだ……」とわけわからないことを言いながら、疲れが出てぶっ倒れるようにコテンと眠ってしまった。かわいい好き。


「ごめん不倒門。その力の名前ってさ《ブランク》って言わない?」

『知らぬ。我の認知は判断せず』

「じゃあ、言い換えるね。本物を見抜く力、的なことじゃない?」

『肯定する。そうだ。我を魔力無しに破壊できるのは、真実を真実として認められるもののみである。資格は物質だけに非ず』

「あたしにはその力がないけど、もしかしてこの剣の力とか?」


 あたしは空虚なる漂白(ブランクオール)を背中から引き抜いて不倒門に見せた。すると不倒門は今までにない唸り声をあげた。


『興味深い。それは遠い過去の魂が知っている。王庭十二剣が一振り、空虚なる漂白(ブランクオール)。何も斬ることができぬなまくらだが、虚構だけを切り裂くことが出来る。ああ、そうだ。それは贋物を切り裂くのだ』


 虚構を……切り裂く……。


『わからぬ。お前のような小娘がそれを持っているのが、我にはわからぬ。だが、それを持つ者は我を切り裂ける。我とは即ち虚構であるからだ』

「それってどういうことなの?」

『我という存在は「決して壊れぬもの」として生み出された。だがこの世には絶対的な絶対は存在せぬ。故に、決して壊れないという虚構を切り裂けるのは、虚構のみを切り裂けるその魔剣だけだということだ』


 だから真実を見通す目──《ブランク》を持つシオンは魔力を使わずにひびを入れることが出来たんだ。


『そして虚構に正しき審判が下るとき、我はようやく解き放たれるのだ』

「え、唐突だね。あなたはなにかに縛られているの?」

『ははははははっはっはははははっはっはははっはっはははは──』

「???」

『知らぬのも無理はない。我は不倒門であり、それ以外でも以上でもないからな。だがこんな我にも昔には正しき名があった』

「名前って?」


 不倒門は少しも躊躇することなく、その名を口にした。


『我の名は十三獣王キングスが一柱。獅子座のレグルスだ』


 あたしは膝から崩れ落ちた。


『我を、知っていたか?』

お読みいただきありがとうございます!!!


続きが気になった方は☆☆☆☆☆からご評価いただけますと嬉しいです!!


毎日投稿もしていますので、是非ブックマークを!


ご意見・ご感想もお待ちしております!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブクマ・ポイント評価お願いします!

同作者の作品

黎明旅団 ─踏破不可能ダンジョン備忘録─

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[一言] ここでまた新たに(;゜Д゜) こりゃもう校舎が悪魔でも不思議じゃない(ォィ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ