表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
170/372

140 花束を君に贈ろう

 降神カナンは努めて冷静に言った。私はそれに驚かなかった。


「魔笛は一度戻る度に、誰かの命を代償とする。指定された誰かだけは、巻き戻ることが出来ず、時間の濁流に取り残される──これを伝えたのはフェアであるためだ。シオン、覚悟はできているか」

「……できていると言えば嘘になります。でも、誰かがやらなければならなくて、それに犠牲が付きものなら、私は英雄になりたいので、この身を捧げます」

「変なヤツだな。英雄になりたいなんて願望、隠すべきじゃないのか」

「今はそういう時代ですよ」


 私は震える手で笛を握った。


 その時、誰かの熱い手が、私の手を包んだ。直後、私は殴られる。


「いてっ」

「シオン。あなたは馬鹿だよ。大馬鹿者」


 ナズナが覚悟の決まった顔でこちらを見つめる、え?


「あたしね、シオンが好き。友情的な意味でも、家族的な意味でも、恋愛的な意味でも、好き、大好き。愛してるって言ってやる。……だから、あなただけが死ぬのなんて認めない」


 ナズナは私の首から《魔笛》を引きちぎり、魔剣技アーツを発動した。


幻影への変身(ファントムカフカ)。Gravity プラスハンドレッド」


 ナズナとライザ先輩以外の全員が地に臥せった。私はたとえコピーだとしてもこの重力には逆らえないことを知っている。自分が一番知っている。


 私の手から、魔剣空虚なる漂白(ブランクオール)が取られる。


「はは、生贄の私だけは楽に死なせてくれるんだ。で? 君が戻って何をする? 情報の欠落、力の無さ。選ばれし者でもない君が──」

「選ばれし者じゃなくていいんです。神様があたしを選ばなくっても、シオンはあたしを見つけてくれた。それだけであたしは世界で一番頑張れる」


 そうナズナが言うと、ライザ先輩は、八神ライザは、ラウラ・アイゼンバーグは、今までで優しく笑った。


「君を認めるよ綾織ナズナ。わたしを使って、跳べ!」

「なず、な、まっ、て」


 まだお返事できてないのに。


「シオンには相手がいるでしょ? 今頃どこかで眠ってる王子様が」


 その頬には涙が伝った。


「だい、すき、だよ」


 ナズナ、置いていかないでよ。


「大丈夫、あたしきっと、なんど繰り返したって、やり遂げるから」


 彼女はそっと跪いて、私のおでこにキスをした。


「なず──」

「じゃ、行ってくるね!!」


 ──PIIIIIIIIIIIIIIII……。


 魔笛は盛大に鳴らされた。世界が泣きだすような、そんな音がした。

お読みいただきありがとうございます!!!


続きが気になった方は☆☆☆☆☆からご評価いただけますと嬉しいです!!


毎日投稿もしていますので、是非ブックマークを!


ご意見・ご感想もお待ちしております!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブクマ・ポイント評価お願いします!

同作者の作品

黎明旅団 ─踏破不可能ダンジョン備忘録─

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[一言] なずなちゃあああああああああん(;゜Д゜)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ