138 ザッツライト
お前しかいないだろ。
という目で皆が一斉に私を見た。私は「えっ」と間抜けな声を出すしかない。
「待って待って、詳細を聞こう。巻き戻るとかなんとかって、まず意味がわからないし、話を聞かない限りは何とも言えないよ」
でもそれに対して曽根ちゃんとロナンは心が決まっているようで……。
「この人選がそもそも謎いけど、《ブランク》ってやつを持ってるなら、もう浅倉シオン、あなたしかいないんじゃない?」
「俺は降神カナンか浅倉シオンの二択だ。どっちでもいい。俺や曽根は器じゃない」
「そう言われるとマジでムカつくけど、その通りだよ。ナズナちゃんどう思う?」
「うぇ!? あたし? うーん、あたしはもうちょっと詳しく聞いてみたいかな」
私がうんうんと頷いて承諾すると、降神カナンも頷いた。
「まずその《魔鍵》をなぜお前が持ってるライザ。それは俺の記憶ではラウラ・アイゼンバーグの所有するものだ」
「そうだね。まずは説明しないと」
ライザ先輩はやっぱり寿命で死ぬなんて言う風には見えなかった。
「──1999年、ROOT-01では《大断裂》という災害が起きた。世界はそれ以前と以降に分かれ一変する。全ての元凶であるラウラ・アイゼンバーグが今現在いる場所だ。そして、ROOT-1999、わたし達が生きるこの世界では大断裂が起きなかった。ならこの世界にいるラウラ・アイゼンバーグの別の可能性は誰?」
私は寒気がした。いつでも全てを知った様な口ぶりをする女性が、どこか西洋の顔立ちをしているということに、全く今更ながら気が付いた。
「わたしの本名はね、ラウラ・アイゼンバーグって言うんだ」
全員の呼吸が止まったような気配がした。現状の把握を、脳が拒絶している。理解がし難い。でも、総てがつながった。
「ごめんね、情報が欠落している様に君らと接したのは、君らが今どの段階まで情報を得ているか確認する為だったんだ。私は全て知っていた。何度もこの世界をやり直しているからなんだ。この説明をするのも80回目くらいになる」
世界が破滅しなかった世界でも、覇者となる運命だけは持っていた八神ライザ、もといラウラ・アイゼンバーグは、世界の未来を変えようと、《魔鍵》を使って世界をループした──。
「この世界はね、本来なんの問題もなかったんだ。でも、ある地点で偽皇帝の遺筆を手に入れてから世界は変わった。浅倉シオン。わたしがループを始める前の世界で、何が起きたかわかる?」
私には、私にだけは心当たりがあった。
「私が偽皇帝の遺筆で人を皆殺しにしたんですね」
ラウラ・アイゼンバーグ──ライザ先輩は指を鳴らして言った。
「ザッツライト」
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