132 セットアップ③
千原ロナンの証言
千原ロナン。ヴァチカンからの帰国子女だ。話せることは話す。
初めに言っておくが俺の竜化は十三獣王とは何の関係もない。これから話すのはヴァチカンについてだ。
母校について悪く言うのは気が引けるが、正直その行動が怪しいと言わざるを得ない。まるで、今日この瞬間を理解していたみたいだ。
今、ヴァチカンはあえて王庭十二剣を放置している。本来、特級宝具を管理するのはヴァチカンだと国連が定めている。だが、ここにいるアンタらが自由にソレを持っている様に、今、ヴァチカンは職務を果たしていない。
それがさっき八神先輩が言っていた「因果を引き付ける重力」なのだとしたらわからなくもない。世界中に鍵となる王庭十二剣を放つ。そして、然るべき時になればそれは自ずと一か所に集う。考えられなくはない。
俺ができるのは、王庭十二剣について話すことだ。これから、今知る限りでここにある剣について話す。
まずオリガ先生の所有する三振りの王庭十二剣について。
ひとつ、魔剣ティルフィング。三度まで願いを叶えるが、三度目を叶えると所持者を必ず殺す魔剣だ。これは強力だが、デメリットが大きい。降神オリガが手放さない理由はわからない。対応は水瓶座だ。水瓶座を殺せる。
ふたつ、魔剣Time Keeper。時空を切り裂き、その自由移動を可能にする。ああいう人間に一番持たせちゃならないタイプの魔剣だ。だが運命の変更は許されていないから、危機度が高いわけではない。天秤座を殺せる。
みっつ、魔剣EXcalibur。切り裂けないものが存在しない魔剣。史上最強の魔剣。他に言うことはない。対応は獅子座。獅子座を殺すならこの剣でだ。
降神オリガがこれだけの魔剣をひとりで保有するのは──思うに、これだけあれば一人で片が付くと考えているからかもしれない。
王庭十二剣がどれだけ強力か、専門的に学んできた俺に言わせればできなくはないと思う。だが、その時に降神オリガが生きているのかは疑問だ。
次はこの空間にある三振り。
浅倉シオンの持つ魔剣レーヴァテイン。斬ったものを焼き尽くし、その魂を冥府へと運ぶと言われている。だがヒト化形態である藤堂イオリに聞いた方が早いだろうから、ここで詳しくは言わない。強さで言えば上から数えた方が早いが、所有者に依存する部分が多いな。対応は蠍座。サソリを殺せる。
降神カナンの魔剣デュランダル。決して壊れない。エクスカリバーと対を為す魔剣。乙女座を殺せる。純情女王の眷属は触れただけで殺せる。ただしこれも使用者に依存するところが大きい。カナン先輩が持っているせいで、最強格に見えるけどな。
最後は八神ライザの持つ魔剣。これだけはヴァチカンすら把握していない。さっき内部調査室……って言っても庶務だけど、フロストに聞いたが、八神ライザが「持っている」ということ以外何もわからないとのことだった。
開示する気があるのかないのかは知らないが、その事実だけは伝えておく。……だが、それを知らせば勝機が潰えると言うのなら、何も言うな。
それともう一本あったな。偽皇帝の遺筆か。学長の角から作られた十三本目。全くの未知だが──恐らく異端である龍王を殺すんだろうな。
他にも散らばる魔剣のことは何となく知ってる。近場の物は以上だ。もし他の王庭十二剣を探しに行くのなら声をかけろ。ロンドンまでなら飛べる。
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