124 君が好きだよ
私が寮の入り口近くまで戻ると、元フェニックス寮の前の大階段にアレンが神妙な顔つきで座っていた。お腹でも痛いのかなと思って声をかけようとすると、向こうが先にこっちに気が付いた。
私を視界に認めると、彼ははっとして瞳孔を開いた。そしてふっと立ち上がり、少し足早に私の元へまっすぐ歩いてくる。
そして、私の前まで来ると何のためらいもなく、ぎゅっと私を抱きしめた。
「!?!!?!???!?!?!??!?!?」
私の絶叫にも近い、だけど音にならない声が出て、世界はただ折紙アレンの息遣いに支配された。それはとても苦しそうで、包まれている私の方が心配になるくらいだった。
「大丈夫か……、シオン……」
泣いてる?
私は彼が泣いていることに驚いた。そんな顔、今まで一度だって見せたことない彼が──。いや、きっとこれでも強がっているのだ顔を見せまいと、私を抱きしめたんだ。
私は彼の大きな硬い背中に手を回して、ぽんぽんと優しく叩いてあげた。
「大丈夫だよ。私、へっちゃらだから。大丈夫だから」
アレンは少しだけ震えて、また強くぎゅっと私を握った。そう、大切なものを手放したくない赤子のようで、私はそれを慰めた。
「俺は──お前を失いたくない」
「どこにもいかないよ。ずっとここにいるから」
「俺が守れない場所に行ってしまったらどうすればいい……」
「じゃあ頑張って。私のこと絶対守って見せてよ」
「酷なこと言うな……」
「でも、私にとって折紙アレンはそんな奴だよ」
「──俺が」
「私が困っているとき、叫ばなくても、あなたははいつでもそばに居てくれる。不倒門でも、定期考査でも。私がどれだけ救われたか、知らないでしょ」
背をさすって、また彼が私をきゅっと握ると、私はもう一度言った。
「私、あなたほど強い魔剣師みたことないよ。それは平行世界がどうとか、十三獣王がどうとかそういうのじゃないの。あなたには、他の誰もが持ってない、本物がある」
「そのまま返してやりたいくらいだ──」
身体をすっと離すと、私は彼の泣きっぱなしの情けない顔を愛しく思った。
「私は周りが言うほど、きっと本物じゃない。あなたの血に流れる本物を見てそう思うから。私が欲しい本物は、あなたのものだけ」
すると彼の瞳が驚いたように広がった。
「私はあなたの事が好き。一生守るから、一生守って」
気づけば私も泣いていた。ぽろぽろ零れる雫は止まらない。
あーあ、変な所で告っちゃった。もっとロマンチックな告白したかったな。大体、窓のこととか十三獣王とか異世界のこと、なんにも解決してないのに。気持ちを伝えるのは、全部終わってからって思ってたのに。
それでも、私の為に流れた涙を見た時、私は思った。嗚呼、一生この人の隣に居たいって。今言わないと、後悔する気がした。死んでからじゃ遅いんだ。
アレンはまだ驚いていたけど、ゆっくりとまぶたを閉じて、一歩離れて、シャツをグイっと引っ張り顔をごしごし拭うと、また私に向かい合った。
その瞳はまっすぐ強く、そして光を灯していた。
「覚悟が決まった。──シオン。俺はお前に相応しくなれるよう強くなる。ありがとう。お前が居てくれなかったら、俺は一生このままだった」
「うん」
「善は急ぐ。明朝には発つことにする」
「うん」
「強くなって、帰ってくるから」
「うん──え?」
ん?
あれ? 私告白したよな?
え? 発つ??????
どこに!?!?!!?!?!?!
だけどアレンはこうと決めると行動が早い。彼は寮の中にせっせと戻っていってしまった。私は駆けて追いかける。
まってまって、どっか行くのは良いけど!!!
返事を!!! くれぇ~っ!!!!!
お読みいただきありがとうございます!!!
続きが気になった方は☆☆☆☆☆からご評価いただけますと嬉しいです!!
毎日投稿もしていますので、是非ブックマークを!
ご意見・ご感想もお待ちしております!!




