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竜姫の冒険 ~前世はVRゲームのテイムモンスター?~  作者: 京 高
第4章  西方諸国2 ディナル農耕国
97/108

97 ついでにバラします

 飛べることがバレました。まあ、絶対にバレると困るというものでもないのだけれど。

 ウデイア領砦の大浴場で一緒にお風呂に入っていた女性の冒険者や兵士たちには、ボクの背中に羽があることを知られていたからね。

 それに、数が少ないだけで空が飛べる種族がいない訳でもないし。


 とはいえ無駄に脅威に思われることがあるので、秘密にしておく方がいいと諭されたのよね。

 なぜ飛べるだけで警戒されてしまうのか?それは街や城などの防衛設計は地上からの侵攻を前提したものだからだ。

 例え堅牢な門やら壁やらを作っても、空を飛べればひょーいと無視して進まれてしまう。危険視するのも納得だよね。


 さて、それでは騎士二人はどうなのか?

 立場上警戒する必要があるのは間違いないだろう。その一方で、無闇に情報を拡散するようなことはしないようにも思う。


「んー、まあ、話しちゃってもいいかな。答えはイエス。飛べるよ」

「やはり……。良かった、見間違いではなかったのだな」

「うむ。眼を疑っただけでなく、頭がおかしくなったのでは?とまで考えてしまったからな……」


 そこまで思い詰めるほどのことだった!?

 ……と、ともかく続けましょうか。


「服で隠しているけど背中に小さな羽があってね。それをパタパタッと動かすことで飛べるのです」

「羽、ですか……」

「鳥のようにそれだけで飛べている訳ではないのだろうけれど。魔力を用いた一種の魔法みたいなものなのかもね。ああ、詳しくは聞かないでね、ボクも何となく飛べると把握しているだけで理屈は全く分からないから」


 魔物にもどうやってその巨体を浮かべているの!?とツッコみたくなるやつはいくらでもいるので、この点は特に疑問に思うことなく納得してくれた。


「一応これも言っておくと、隠していたのは余計な警戒心や野心を抱かさないためだね」

「ああ、一騎当千な上に空まで飛べるともなれば、方向性はどうあれ良からぬことを考えるやからが現れてもおかしくはないでしょう……」


 微妙に遠い目というか虚ろな表情になっているということは、該当しそうな人物に心当たりがあるということなのかしらん?

 ドコープ連合国はそれなりにまとまっているし中央には優れた人材が集っているとはいえ、中には自分本位なやつとか危険なほどに上昇志向の塊な集団がいたとしてもおかしくはない。むしろいるのが当たり前だろうね。


「うおっほん!それにしても秘密が露見するかもしれない危険を冒してまで空中で戦った、あの少女のような姿の者はなんだったのか……?」


 と、そこで一人が咳ばらいをして強引に話題を変更する。幼少期から森に出入りしていた辺り、彼らの家格はそれほど高くないのだろう。立場上そういったことに口を出すのは憚られるのかもしれない。

 ボクとしてもあまり深掘りはされたくないので、その流れに乗ることにする。


「ああ、あれは悪魔だよ」

「んなあっ!?」

「悪魔ですとっ!?」


 本日一番のリアクションを頂きました。この様子だと、悪魔が危険な存在だというのは大陸で共通した認識だと思って良さそうだ。


「周りが滅茶苦茶になってはいけないから、障害物も何もない空中へ蹴り上げたのよ」


 あれは確実に周囲の状況など気にかけないタイプだった。もしも地上で戦っていた場合、樹林に一体どれだけの被害が出ていたことやら。

 加えて二人が巻き込まれないようにだとか、女性がいる小屋が破壊されないようにといった配慮もしなくてはいけなかっただろうから、面倒な戦いになっていたこと間違いなしです。


「悪魔にはきっちり止めを刺したから心配いらないよ。ああ、でも、どうしてあの人を攫ってきたのかとか、こんな所に監禁していたのかとかは聞きそびれてしまったかあ……」

「いえ、それで正解です。悪魔はとても狡猾で卑怯だと言います。交渉が可能だと思えばどんな搦め手を使ってくるのか分かったものではないですから、倒せるときに倒しておくのが賢明です」


 ふむふむ。そういう考え方もアリか。策の全貌を知ったところで既に起きてしまった被害をなかったことにはできないし、それならばこれ以上の悲劇を生まないよう悪魔そのものを退治してしまった方が良いということね。


「しかし、今の話を聞いて合点がいきました。悪魔であればゴブリンの十体だろうが二十体だろうが簡単に捕らえることができるでしょうし、引きずる膂力があってもおかしくはないですからな」

「あのゴブリンを縛り上げていた鎖って何だったんだろう?悪魔の能力だと思っていたのだけれど、戦いの最中にはそんな素振りを一切見せなかったのだよね」


 むしろ能力は超回復という使い方次第ではとっても危険な代物でした。つくづく経験の浅い個体で良かったよ。


「恐らくは『捕縛の鎖』と呼ばれるマジックアイテムでしょう。ダンジョンなどで発見されることが多いものの一つだそうで、我が国にも複数保管されていますよ。過去には極悪な犯罪人の輸送時などに使用されたこともあったようです」


 姉妹品に『捕縛の縄』があり、こちらはかなりの数が出回っているのだとか。四等級以上のハイランク冒険者であれば冒険者ギルドで普通に買えてしまうくらいよくある物らしい。

 それなら悪魔と一緒に消滅させてしまっても惜しくはなかったかな。そもそもゴブリンを縛り上げていたものだから、使いたいかと問われても拒否していた可能性が高いね。


「犯人だったらしい悪魔も倒したし、これでもう危険はないはずだよ。彼女には明日目を覚ましてから告げればいいでしょ」

「了解です。恐ろしくて眠れないならいざ知らず、そうでもないようですから起こすことなく体力の回復に努めてもらいましょう」


 一方のボクたちは交代で寝ずの番をすることになった。

 魔物は近寄れないはずだったのだが、悪魔がゴブリンたちを連れて来てしまったからね。やつがいなくなった以上ないとは思うのだけれど、念には念を入れて用心しておくことになったのでした。

 ちなみにボクは一番楽な最初にしてもらえた。部屋の隅で竈の火種を絶やさないように気を配りつつのんびり過ごす。


 アルスタイン君とシュネージュルちゃんはちゃんと寝られているかしらん?

 隣国のお偉いさんたちの急な宿泊に、村の人たちは大慌てになったかもしれないねえ。


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