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竜姫の冒険 ~前世はVRゲームのテイムモンスター?~  作者: 京 高
第3章  西方諸国1 ドコープ連合国
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69 アドバイス

 街に戻ると小金持ちになっていました。

 カウティオスと知り合うきっかけとなったソードテイルレオの討伐、あれの報奨金が入っていたのだ。ちなみに、討伐者と認められたことで素材でも貰うことはできたらしいのだけど、そちらは砦でもらった分があるのでお金で支払ってもらうことにしたのだった。


 といってもアイテムボックスのことは秘密にしているので、現金をそのまま渡されては持ち運ぶだけでも困ってしまう。

 そこで便利なのが冒険者ギルドで預かってもらうというやり方だ。冒険者カードを通して個人に紐づけされているので、誰かがなり替わって不正に引き出すという真似もできない。欠点は冒険者ギルドでなければ引き出せないことかしら。ただし、そこそこ以上の規模の町や村にはまず間違いなく存在しているので、そこまで不便ということにはならないと思う。


「結構なお値段になるもんだね」

「草原地帯に生息する最強格の一つだからな。だが、本当に良かったのか?領都や中央に行くなら、そこで競売にかけることだってできるんだぞ?」


 冒険者カードに記された金額を見てニマニマしているボクに、回収作業の時にもお世話になった職員のおじさんが聞いてくる。

 ソードテイルレオの尻尾は武器に、毛皮は骨や爪と組み合わせることで高品質な防具に加工することができるとあって、戦闘を生業とする人にとって是が非にでも手に入れたいものだったりするのだよね。更に珍しい物や貴重な品を所持することがステータスとなる人々にとっても垂涎ものの品のため、オークションに出せば天井知らずの高値が付くことも珍しくはないのだとか。

 その一方で、ギルドへの売却では決して安く買いたたかれる訳ではないのだけれど、適正価格にしかならない。


「面倒そうだからしない。それにアプリコットさ、様が持ち帰った横で売り払っていたら、良からぬ噂が立っちゃいそうだよ」

「それもそうか」


 わざわざどこかで暗躍する誰かの利になるようなことをしてやる必要はないのだ。不穏分子をあぶりだす罠にできなくはないかもしれないが、それはボクの役回りではないでしょ。


「まあ、これから大変になるだろうギルドへの応援ということで」

「南方の調査と監視の拡充のための区分け設定と六等級連中への研修か。これだけでも忙しいっていうのに、ローズ宗主国のギルドの西方諸国本部機能の停止に伴い国内へのギルド本部誘致の要望……。考えるだけでも頭が痛くなりそうだ」


 はあ、とおじさんが大きくため息を吐く。

 この上逃げたギルド職員の行方の追跡に、再発防止のためにおじさんも含めた職員それぞれの身辺調査といったものまである。支部長クラスの人たちは本当に頭が痛くなっているのでは?


「ところで、ボク以外の荷馬車を護衛するメンバーは決まったの?」

「ああ、そっちはすぐに決まったぞ。三人組と四人組の二つで、どちらも七等級のパーティーだ。……アプリコットお嬢様の前に出せるとなると、こいつらくらいしかいなかったというのが本当のところだな」


 なるほど。チンピラ冒険者たちは素行面で弾かれたということか。まあ、ウデイアのお嬢さまやそのお付きに睨まれてはドコープ連合国ではやっていけなくなるだろうからね。お互いにとって賢明な判断というやつですな。


「領都までの道で用心しなくちゃいけない場所とかある?」

「特にないぞ。街道伝いに移動されるそうだから、必然的に魔物が多い森や湿地は迂回していくことになるからな。ああ、強いて言うなら足取りが遅くて日暮れまでに宿場町に到着しなかった時か」


 夜間は視界が悪くなるから、それだけ戦い辛くなる。ましてやこちらにはアプリコットさんや荷馬車といった守らなくてはいけない存在がいくつもあるのだ。


「仕掛けてくるタイミングもあちら次第だし、本当に戦いになったらかなり不利だね」

「防衛戦ってものは得てしてそういうものだぞ。だからこそ適切に対応できる冒険者は評価されている」


 大規模なキャラバンから個人での行商まで、人と物の移動はなくならないものね。単純な魔物討伐に比べて護衛の依頼が一段上に置かれている訳だ。


 ちなみに、兵士たちが緊急時などに使用する『直通路』はその名の通り真っ直ぐ領都まで伸びており、こちらは先ほど言った森や湿地などの魔物が出没しやすい場所を通り抜ける必要がある。そのため伝令には馬の扱いと戦闘の両方に抜きん出ている優れた人物――場合によっては家格などが考慮されることもあるそうな――が選出されるそうだ。

 実は、そんな道をアプリコットさんたちは通って来たらしいのだよねえ。いくら強さには定評のある騎士が護衛についていて、更に本人が凄腕魔法使いとはいえ無茶をしたものだよ。


 とか考えていると、おじさんがキョロキョロと周囲を見回してから耳を貸せというジェスチャーをしてくる。


「……一つ心配なのは、着いた先々で魔物素材を見せびらかすってことだ。巨大魔物以外の襲撃っていう異常事態への勝利を喧伝して民衆を安心させようっていう思惑は分かる。だがな、実際に目にすることでバカってやつはついつい良からぬことを考えてしまうもんなんだよ」


 牙や骨といった比較的小さな素材でもかなりの値が付くレアものばかりだ。おじさんが言うように魔が差してしまう人が出てもおかしくはない。


「街の中の方が危険かもしれないってことかあ……。気が休まる暇がないのはキツイかも」

「アプリコット様方が見落としているなんてことはないとは思うんだが、行き当たりばったりで決定したようだったからな。一応用心するようにしておけ」

「了解。……今の話を他の人には?」

「いや、お前さんにだけだ。あいつらは名前が売れ始めてきたところで、そろそろ装備の新調を考えている頃だからな。下手に意識させたくない」


 ミイラ取りがミイラになるのを心配しているのか。その点ボクはお金に頓着していないし素材も持っているから盗む理由がない。宿場町の兵士たちにでもお願いするのが適当かしら?

 ただ、もしも例の誰かの息がかかった人間がいれば、騒ぎを起こすための絶好の的になってしまうだろう。

 これは後でアプリコットさんに確認しておかないと不味いかも。最悪に馬車の隅っこで眠ることになっちゃうよ。


 思いもよらなかったトラブルの種が次々と出てくることにげんなりしながらも、彼にアドバイスを求めて正解だったなと自画自賛するエルネちゃんなのでした。


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― 新着の感想 ―
すまない。 本当にすまない。 >そのため伝令には馬の扱いと闘い抜出の両方に優れた人物が選出されるそうだ >闘い抜出  なにかの誤変換なのは分かるけど、正解が分からなくて誤字報告ができません。
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