41 森の中で
本日お昼前に誤投稿してしまったものと同じ内容になります。詳しい顛末については活動報告を見て頂ければと……。
次話以降は差し替えたものとなります。よろしくお願いします。
西方諸国の一つ、『ドコープ連合国』に入ったのはドワーフの村を出発してからおよそ一カ月後のことだった。いやあ、飛んでいくのも味気ないからとてくてく歩いていたら、思った以上に時間がかあってしまったよ。
というのは半分冗談でして。
実はドワーフの村を出発する時に「悪目立ちしないためにも人里に出て以降は長距離飛行ができることを隠しておいた方がいい」と言われていたのだ。
知能が高く空を飛べる種族というのは存外少ない。人型ともなればなおさらなのだそうだ。ボクとしても変に目をつけられて付きまとわれたり痛くもないお腹の中を探られたりはしたくない。その忠告に従って、山脈のふもとまで下山して以降は歩いて移動していたのでした。
さて、西方諸国の中でもドコープ連合国を最初に選んだことには訳がある。それは、冒険者を優遇しているためだ。
冒険者のことは後回しにして、まずはこの国の説明をしておこうか。四つの西方諸国の中でも南側に位置していて、その昔この地に所領を持っていた貴族たちがロザルォド大王国が崩壊した際に寄り集まって興したのがドコープ連合国なのだ。
もっとも、現在ではガルデン、レドス、ウデイア、ルドマーの四つが残っているだけらしいけれど。独立独歩の気風が強い反面、仲違いしていてはすぐに攻め込まれてしまうという危機感は持っているため互いの関係はとても良好という、ある意味理想的な繋がりだ。
そんな連合国の急所とでも言うべきポイントが人材不足だった。特に戦える者が少ないことが建国当初からの悩みの種となっていた。
それというのも、ドコープの更に南方には巨大魔物たちが生息している草原地帯があるためだ。縄張り争いに敗れた個体なのか、それとも単に好奇心が旺盛だったのか、古来より幾度も草原地帯から這い出てきた巨大魔物による襲撃を受けてきた土地なのだとか。
大王国時代には国土防衛のために騎士団や兵士たちが派遣されてきていたが、その大元が崩壊してしまってはそれもままならない。悩んだ彼らが出した結論が、戦える人間を受け入れることだった。
もちろん他国へ応援を求めてはあっという間に属国にされ、やがては支配されてしまうことは目に見えている。頼ったのは超国家組織の『冒険者ギルド』だった。
はい、ここからは『冒険者』についての説明だよ。
分かりやすくまとめると、冒険者ギルドによってその能力や人格を保証された人たち、かな。
特に統治機関や行政の手が回らない魔物退治に駆り出されることが多いため、腕っぷしや戦闘力が求められることが多い。
冒険者ギルド自体が街の自警団同士の協力体制から発展してきたものらしいので、この辺りはすんなりと納得できる話だわね。
ちなみに、冒険者ギルドの本部は大山脈を挟んだ大陸の東側、都市国家群の中にあるそうです。
冒険者たちはその実力に沿って、おおまかに十から一までの等級に分けられている。
十等級の初心者からスタートして、街や村近辺に出没する弱めの魔物を倒せるようになれば駆け出しの九等級へ、冒険者ギルドが仲介する依頼の達成を繰り返していくことで、更にランクが上がっていくというシステムになっているよ。
ドコープ連合国では巨大魔物という脅威に対抗するために五等級のベテランや四等級以上のハイランク冒険者を求めている。だけど国内に出没する一般魔物の討伐にも手が回っていないので、それ以下のランクであっても邪険に扱われるようなことはない。
なお、四等級以上になると貴族を始めとした要人貴人の護衛といった依頼もあるため、昇格には人格面も考慮されるようになります。
ここまでの説明でキュピーンときた勘の鋭い人もいるだろうからぶっちゃけてしまうと、ここまでの旅の間に、ボクも冒険者の登録をしました!
ドラゴニュートだし、色々とバレたら面倒なことになるかも?などとは思いながらも、冒険者という身分が旅をする上では便利なため、物は試しとチャレンジしてみたのだった。
そして結果を言うと、ただの取り越し苦労でした。
身分証明にもなる冒険者カードには、名前とランク、それに特別な賞罰記録の有無くらいしか記載されてはいないし、登録の際の検査でも種族を問われるようなことはなかった。
余談だけど、こちらから何も言わないでいると獣人の内の鱗持ちだと勝手に勘違いしてくれることが多いです。
旅の道すがらに依頼を熟していったことで、現在のボクのランクは八等級にまで上がっていた。熟練には程遠いけれど一応は一端の冒険者使いをしてくれる、と言った感じかな。
個人的にはそれ以上に、薬の原料になったり食べたりできる野草やキノコの知識だったり、狩った魔物を解体する方法を習得できたことの方が嬉しかったけれどね。お肉に野菜?があれば大抵の土地で生きていけるのですよ。
あと報告しておかないといけないことは……?
そうそう、魔法の扱い方を習って『基礎魔法』が使えるようになりました!各属性の初歩中の初歩といった感じで、小さな火種を作ったりコップ一杯の水を生みだしたりできるくらいなので直接攻撃に使用できるほどの強さはないけどね。
こちらは街や村で生活している人々が普段使いしていることから『生活魔法』なんて呼び方をされることもある。
「ふんふんふふーん♪」
そんなこんなで今日も今日とて、森の中の小川で撃退した魔物を解体中。ついでに少し早い時間だけれどお昼ご飯にするため、焚火も炊いておりますですよ。
解体しているのはイノシシ系の魔物で『ボアローボア』。名前の通りというか、放たれた矢のような高速の突進が得意なそこそこ危険だと言われている魔物だった。
「美味しいお肉にするためにも、血抜きは大事だよねえ」
血は小川のせせらぎによって流されていくので匂いもその分散っている。肉食の魔物を呼び寄せることはないだろう。
血が流れ出尽くしたのを確認して切り開いていく。頭や内臓は食料にもなるけれど錬金といったものの素材にもなるので、袋に一まとめにしてアイテムボックスへと放り込んでおく。時間も停止しているようで腐ることもない。旅をするようになってこの便利さを痛感する次第でありますよ。
あとは可食部を切り取って、骨と皮を分ければ終了だ。細かいところは町のお肉屋さんとか冒険者ギルドに丸投げすればいい。
「んー……。本当は少し寝かして熟成させた方が美味しくなるんだけど……」
切り分けたばかりのお肉というのも、それはそれで美味しそうに見えてしまうのよね。
「ちょっとだけー。ちょっとだけ味見をー」
脂の多そうなところを切り取ってフライパンに乗せる。火にかければすぐに脂が溶け出し、芳醇な香りが漂い始めた。自分でやっておいてなんですが、これはヤバイ。
「おっふ。こ、これはもう、匂いの暴力なのでは!?」
もうすぐお昼ということもあって、こんな匂いを嗅がされたら途端に空腹を意識すること間違いなしだわ。街道から外れた場所で良かったね。
〇エルネのステータス
名前 : エルネ
種族 : ドラゴニュート
職業 : 覚醒龍姫
技能 : 〔瞬間超強化〕 〔竜帝尾脚術〕 〔ブレス〕〔飛翔〕
〔完全人化〕 〔完全竜化〕 〔遮断結界〕
〔基礎魔法〕← new
闘技 : 【三連撃】、【裂空衝】、【流星脚】
魔法 : 【ファイア】、【ウォータ】、【ウィンド】、【アース】
【ライト】、【ダーク】、【エレキ】
※初歩中の初歩ですが、実は全属性を使いこなせる人は稀です。
〇西方諸国 その昔西方の地に栄えたロザルォド大王国の系譜に連なる四か国の総称。
・ローズ宗主国 … 三国に囲まれた小国。
大王国時代の首都だったローズの街とその周囲約十キロというわずかばかりの国土。
分裂直後の動乱期に和平交渉を成立させたイトリーゲ(最後の大王の末妹)を称えるという名目で建国された三国の思惑が絡み合った国。
しかし、彼女の手腕は三国の想定を超えていた。各国の王族や主要貴族が共に学ぶ『統一学園』や、大陸でも最高峰の頭脳をもつ賢者や学者を集めた『西方研究室』といった重要施設を次々に開設し、ついには手の出しようがない聖域を作り上げてしまったのだ。
こうして主に文化面での優位性を打ち立てたローズ宗主国は、その名の通りの立場を得るに至ったのだった。
だが、近年では各国の追い上げも激しく、その優位性が徐々に揺らぎ始めている。
・チェスター武王国 … 北東に広がる元大王国の盾。
北東から東側に位置し、ホーリーベルトが機能する以前は北方との領土争いの最前線だった。そのため武を尊ぶ傾向が強い。元首もまた『武王』を名乗っている。悪く言えば脳筋集団。
ビンス王家は大王国時代の最古の大公家だった。
聖神教の台頭以降、外部との大規模な戦争が発生していないため、国内全体でフラストレーションが溜まっている。
・ディナル農耕国 … 外敵と接しない平穏な国。
北から西側に広がる大規模な農耕地域。国境を接しているのは西方諸国だけのため、少々平和ボケ気味なところがある。
カール王家は大王国時代には侯爵位で王家の外戚になったり、王家の令嬢を降嫁されたりした名門貴族だったが、凋落をいち早く感じ取り中央と距離を取っていた。その一方で有能ながらも零細な貴族を傘下に取り込み地盤を固めていき、真っ先に独立を果たしたのだった。
・ドコープ連合国 … 南方の元貴族連合国。
南一帯を支配しているが、その実態は多数の貴族たちの所領が寄り集まった連合国家。ただし、現在まで残っているのはガルデン、レドス、ウデイア、ルドマーの四家のみ。
独立独歩の気風が強いが、南方に巨大魔物が生息する草原地帯があるため互いの関係は親密。また、冒険者を優遇しており、人材不足を各地から流れてきた冒険者によって補っている。




