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30 武器防具に向く鉱物講座

 ターホルさんたちが手に入れたのは面白い素材というのは、金属鉱石に該当するものだという。しかしボクは鍛冶どころかこの世界の初心者なのでさっぱり分からない。

 ということで場所をターホルさんの工房に移し、みんなから基礎的なことをレクチャーしてもらうこととなった。


「一口に鉱物と言ってもその種類は様々よ。だが、武器や防具に向いているものとなればいくつかに絞られてくる」


 代表的なのが『鉄』と『銀』なのだとか。鉄は固くて頑丈なので物理系への適正が高い。そのため剣に槍、鎧に盾と様々な用途にもいいられているそうだ。一方の銀は魔力との相性が良く、杖や対魔法専用の盾に加工されているという。


「もっとも、よほどの事情でもない限りは精錬して性能を高めた『鋼』や『魔銀』を使うものだけどな」

「腕利きの精錬師ともなれば、元に比べて数倍の性能になることだってあるんだぜ」

「数倍!?それはすごい」


 もはや別物レベルだね。ちなみに、ほとんどの国の騎士団や軍で支給されている武具の大半は『鋼』製のものらしい。対して銀は貴金属としての価値も高いため、同じく国の組織に所属していても魔法使いは自前で『魔銀』製の杖などを準備しなくてはいけないことも多いそうだ。


「……せ、世知辛い」

「まあ、魔法の場合は宝石等を追加して属性効果を高めたりもするからな。個人差も大きいから一括支給がし難いっていう面もあるのさ」


 水属性が得意なのに火属性の杖を渡されても困るよね。逆に少数ではあるが、杖を支給する代わりに一定水準以上の魔法が使えるように厳しい訓練を課している国もあったりするそうだ。


「話を戻すぞ。ここからが本番、レアメタルの登場だ。まずは『ミスリル』。こいつは純粋な性能でいえば鋼や魔銀とそう大差はないんだが、いくつか変わった特徴があるのよ。一つは物理と魔法の両方に特製があること。もう一つは武器や防具として使い込んでいくほどに性能が上がっていくことだ」


 特に後者の特徴が顕著で、歴史のある国宝級ともなると一つ上のランクの鉱物で作られた武具と比べても遜色(そんしょく)ないほどになってしまうのだとか。そのためミスリルは成長する金属(グロウメタル)と呼ばれることもあるという。


「そのミスリルの猛攻に晒されているのが『メテオライト』と『ルナストーン』だ。この二つが貴重なのは地下に鉱床がなく、天から降ってくると言われているためだな。ただ、その希少性に(たが)わないだけの性能を持っているぞ」


 鉄、鋼系統の物理に強い性質なのがメテオライトで、銀、魔銀系統の魔力に親和性があるのがルナストーンなんだって。


「リグラウ様が山脈に向かっていたのはこの二つの鉱石を探すためだったそうだ」

「現存しているリグラウ様が製作した武器や鎧も、メテオライトを用いたものが多いんだ」


 なるほど。空から降って来るから大陸随一の山脈、その頂きを目指したということなのね。……気持ちは理解できなくもないけれど、ちょっと安直じゃない?


「この更に上の鉱物として『アダマンタイト』と『オリハルコン』、更には神々がその手で作ったという『神魔鋼』なんてものもある、らしいんだが、鉱床や鉱石が実在するかどうかは怪しいところだな」

「アダマンタイトとオリハルコンで作られたといわれている武器と防具はあるんだよ。普段は『聖神教大神殿』にある宝物庫の奥深く仕舞い込まれていて、十年に一度の特別公開日にだけお披露目されているんだ」


 しかし採掘のできる鉱床は見つかっていない上、それらの武具を詳しく鑑定や調査することも禁じられているので、完全に未知の金属素材扱いみたいね。よくもまあ詐欺や偽物だといった文句が飛び出さないものだよ。これが信仰の力というやつなのか……。


 なお、大神殿に納められてはいるけれど、世界を救う勇者やその仲間たちのためのもの、かと思いきやそんないわれは全くないらしい。それどころか元の持ち主や寄贈された経緯(いきさつ)すら不明になっているのだとか。

 そのため、新しく国が興るたびに「それはうちの先祖のものだから返せー!」と要望され、「ほーん?それなら証拠を見せてみろや!」と返すのが定番のやり取りとなっている。なんなら近年はそれがあって初めて国として認められたことになっている節もあるそうで……。


「神魔鋼の方はそういう現物すらないからな。さすがに眉唾だと思われていることも多い」

「呼び名からして国や組織によって『神鋼』に『神鉄』、それに『神銀』とバラバラだから」

「『セトゥラ内海』を挟んだ東の『大樹林』の奥地に隠されているとか、『聖地』に密かに安置されているとか、噂だけならいくらでもあるけどな」


 世界の七不思議とかかな?過去には「南西部の草原地帯に生息する超巨大魔物のお腹の中にある」なんていう噂に踊らされて、多くの冒険者が消息不明になったこともあったそうだ。

 それ、実は悪魔が関わったりしていない?


「噂といえば大山脈ドラゴンが収集している、なんてものもあったな。……エルネ様、それっぽいものを見たりしなかったか?」

「ないねえ」


 間髪入れずに首を横に振ると、全く期待していなかったのだろうターホルさんたちは軽く笑っていた。

 ……とはいえ、絶対にないとは言い切れないのがドラゴンの集落という場所でして。倉庫の全てを確認して回ってもいないから、密かにどこかの片隅に転がっている可能性は捨てきれなかったり……。


「少し長くなってしまったが、武具に適した鉱物の話はこんなところだ」

「ありがとう。勉強になったよ」

「おう。ちなみにリグラウ様のハルバードはミスリル製で、昨日見せたあの剣は鋼と魔銀、その二つを練り合わせた合成物だ」


 ん、んん?ここにきて新たな情報が飛び出してきたぞ。鋼と魔銀の合成物?つまりは物理的にも頑丈な上に魔力の通りも良くなっていると?


「そんなこともできるんだ!?」

「ああ。まあ、ミスリルを使う方が何倍も簡単だから廃れかけた技術なんだけどよ」


 そういえばミスリルは元から両者の特性を持っているのだったね。


「ところで、結局例の面白い素材っていうのはなんだったの?」

「ん?ああ、肝心なことを伝え忘れていたな。俺たちが手に入れた素材は、『メテオライト』と『ルナストーン』だ」

「え!?すごい!!」


 鉱物としての存在が確認できるものとしては最高峰のものだよね!?天から降って来るというのは、ちょっと胡散臭いけれど。


「ボクは完全に物理系の攻撃しかできないから、メテオライトを使うってこと?」

「いいや。どちらも使う必要がある。だからこそ素材が足りねえんだよ」


 ……ほわい?


〇大陸について 2


・東方  … 内海と大樹林。

 セトゥラ内海は東西と北の三方を陸によって囲まれた内海。南側は大きく開いて外海に繋がっているためか、中央にかけては巨大な海洋性魔物が住み着いていたり周遊したりしている。よって、海上での移動は沿岸沿いに限られている。

 内海の更に東には大樹林が広がっている。大陸北東部から続く巨大な半島の中腹から先端に当たる。『世界樹』なる巨木があるとか、精霊が住む異世界への扉があるとかなんとか?エルフや複数のセリアンスロープたちが閉鎖的なコミュニティを築いている。外との交流が全くない訳ではないが、個人間のやり取りが主で、最も大きいものでも村単位でしかない。


・北東部 … 乾燥した高山地域。 

 北部から東部へと伸びる巨大半島の付け根部分。一部の内海沿岸部とその周辺を除いて峠や高地が広がる。東からの乾いた風が常に吹き付けている乾燥地域でもある。根無し草の多いピグミーたちが珍しく定住している、とはいっても遊牧なのだが。

 

・北西部 … 大河流域の肥沃な地域。

 特に大山脈の雪解け水を湛えた『天空湖アルプ』から流れ出て、北の『不凍湾』へと注がれる『アクラン大河』沿いの聖神教が実行支配する地域を指すことが多い。通称『ホーリーベルト』。元々は北と西が支配化を巡って激突する土地だったのだが、約千年前に聖神教が仲立ちとなり停戦に至る。両者の不介入を見張る役割だった聖神教だが、時が過ぎるごとに徐々に実効支配していくようになった。

 アルプ北岸には数多の聖人が神々からの啓示を受けたとされる『聖地』があり、停戦合意の地となった中流域の中州には『大神殿』が置かれ、不凍湾流入口の三角州の『修道院』など、関連重要施設が数多くある。

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