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26 この温度差よ

前半は第三者語りでのユウハたちの話 → 後半はエルネ視点となります。

 エルネが出て行った後、部屋に残ったユウハと三人の長老は誰からともなく大きく息を吐いていた。先端の槍穂の腐食具合を始め、ハルバードの各所に残された傷み具合から激戦を経たことは容易に想像できる。


 だが、最強の一角であるドラゴンを叩きのめすどころかその牙を叩き折り、あまつさえ恐怖と憎悪の代名詞とも言える悪魔を撃退させたなど、誰が思い至るものか。

 ユウハにしたところで、それらは全てエルネの力によるものだと認識しており、まさかハルバードがそこまで活躍したなどとは露とも考えてはいなかった。


「とんでもないお人が現れたものじゃのう……。ユウハ様、無礼を承知でお尋ねいたしますのじゃが、あのお方は間違いなくドラゴン、ということで相違ありませぬか?」

「ええ。昨今では珍しくなったけれど彼女はドラゴニュート、間違いなくドラゴンよ」

「ドラゴニュート……。尻尾もお有りになるので変わっているとは思っておりましたが、エルネ様は元よりあのお姿なのですか。それならハルバードを振り回せたというのも納得です」

「しかし、ただ振り回すだけと扱えるのとでは話が違ってくるぞ。ドラゴンの剛力で振り回されては、いかにリグラウ様愛用のハルバードと言えどすぐにダメになってしまったはずだぞ」


 エルネにも告げた通りこのハルバードは確かに一級品ではあるのだが、使用されている素材は最高のものとは言い難く職人の技量によって無理矢理高められたという面が大きい。

 まあ、だからこそ現役の職人たちへの戒めにもなるし、発奮を促すのにはもってこいなのであるが。


 話を戻すと、本職の戦士ではなく職人だからこそ、このハルバードであっても十二分な働きができていたとも言えるのだ。

 リグラウの手掛けた名品を受け取った者の中には、英雄や傑物として名を遺した存在もいる。もしも彼らにこのハルバードを持たせていたら、一度の戦闘で使い物にならなくなっていたことだろう。

 エルネと共に激戦を潜り抜けておいて、わずかな軸のずれや小さな刃こぼれだけで済んでいること自体があり得ないことだった。


「考えられる可能性はいくつかあるわ。一つはハルバードが壊れないようあの子が無意識に力を抑えていた。……だけど、それだとはぐれドラゴンをあしらうことはできても、叩きのめしたり牙を折るような真似はできないでしょう。いわんや、悪魔を撃退するなんて絶対に無理」


 ユウハの意見はもっともだと、長老たちも揃って頷く。


「だとすれば……、ハルバードを補強していたという辺りかしら」

「武器を補強?そんなことができるのですか?」

「魔法の分類でいうなら身体強化や付与魔術に該当するかしら。得物を自身の一部だと強く認識することによって一体化を成し遂げることで可能となるらしいわ。とはいえ、私も古い本で読んだだけで実物を見た訳ではないから、はっきりしたことは言えないのだけれど」


 精神論ありきで、とても指南書とは呼べない代物だったはずだ。

 恐らくは最初からできた者か、もしくはいつの間にかできるようになった者が書いたものだろう。要領を得ずに説明にもなっていないため、原理や仕組みなど考えたこともなかっただろうと容易に見て取れた。


 しかしながら、ユウハのこの予想こそが当を得たものであった。

 本人は気が付いていないがエルネはハルバードを扱う際、特にインパクトの瞬間に〔瞬間超強化〕を用いていた。

 そして前世の記憶の影響でハルバードに思い入れがあった――「お母さん」のメインウェポンだったため――彼女は、無意識下でそれを自身の一部と判断していたのである。そのためハルバードにまで〔瞬間超強化〕の効果が反映され、通常ではあり得ない強度と硬度を持つに至ったのだった。

 当然誰にでもできるようなものではなく……。


「どこぞの流派の奥義でしょうなあ。いずれにしても規格外。易々と真似ることはできませんでしょう」


 そう言って長老たちは考えを保留したのであった。

 そしてそんな会話が成されていることなど知らない当のエルネは、陽気に街の中を歩き回っていた。



 〇 ◇ △ ☆  〇 ◇ △ ☆  〇 ◇ △ ☆  〇 ◇ △ ☆   



 こんにちは。ドワーフの村をぶらりと気ままに探索中のエルネです。

 正直に言ってすごく楽しい!最初はね、ドワーフさんたちの街ということで質実剛健なたたずまいを想像していたのだよね。それと洞窟内が中心だからちょびっと重苦しくて暗い雰囲気なのでは?とかね。

 実際のところ建物は四角四面とまではいかなくても碁盤目状の区画にあった造りだし、お日様の光が入ってこない所は魔法の明かり頼りになっているから、昼間でも薄暗い。


 ところが!よくよく見ていると色々なところに遊び心が散りばめているのですよ!

 例えば街灯。魔法の明かりの入れ物に一工夫がしてありまして、なんと地面に犬や猫に兎といった影が浮かび上がるようになっていたのだ。

 それなのに明かりの邪魔はしていないという高度な技術!いやはや、次の街灯の下にはどんな生き物が待っているのだろうと、いつの間にか足取りも軽くなっていたよ。


 ただ、場所柄ほとんどドワーフしか住んでいないので、めっちゃ物珍しそうに見られていたけれどね。耳の早い人だと「ユウハさんの後に付いてやって来たらしい」とか「彼女と一緒に歩いていたそうだ」なんてことも知っていた。

 まあ、規模こそ大きいけれど他の町や村との交流がほとんどない孤立した秘境だからね。そのくらいの話題提供ならいたしますともさ。


「ありゃりゃ?奥の方まで来ちゃってた?」


 ドワーフの村は大きく分けると一般住居に長老の住まいを始めとした行政関係の施設がある上層と、工房が立ち並ぶ下層に分かれている。層と言い表しているけれど、お互いは繋がっている。下り勾配(こうばい)を付けた洞窟の奥側を下層と呼んでいるのだ。

 あ、大浴場やサウナは別だよ。あちらは最下層という特別枠な扱いです。実際にこちらは完全に街の地下に潜り込んでいて、いくつかある階段を降りなければ辿り着けないようになっている。


 ついでに解説。洞窟の外の完全地上部分は倉庫などが並んでいたりします。その昔はこちらも居住区だったのだけれど、「寒過ぎて死ねるわ!?」ということで急ピッチで洞窟が拡張された結果、空き家となり倉庫として使用するようになったのだとか。


 そんなこんなで、ボクはいつの間にやら洞窟の奥の下層にまで足を延ばしてしまっていたのだった。


「……んー、まあ、いいか。どうせ明日にはターホルっていう人の工房に行かなくちゃいけないんだし」


 工房街の下見だと思えば問題なし。引き返すことなく、そのまま足の向くまま気の向くままに探索を続けることにしたのだった。


〇ハルバードへの思い入れ

 本編中にもちょろっと書きましたが、エルネの「お母さん」ことリュカリュカの使用武器がハルバードでした。ただし、かなり専用カスタマイズされていましたけどね。




〇ドワーフの村七不思議


1、半裸のホカホカドワーフが飛び出してくる謎の建物

 地上部にある建物の一つには最下層へと繋がる階段があり、夜な夜なサウナ上がりのドワーフたちが涼を求めて飛び出してくるのであった。

 ちなみに、元々は緊急避難用の通路として作られたものだったとかなんとか。


2、???

3、??????

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残り六つは未設定です。読者の皆様でご自由に。……思いつかなかったんだよおおおおお!!

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