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18 悪魔と戦う

あけましておめでとうございます!!

お正月ということで、いつもの二回にプラスして余分に更新だあ!

 アイテムボックスからハルバードを取り出して、キンキンガンガンとフェルペと打ち合う。爪はともかく、手首から飛び出したものはとても頑丈なようで斧刃でも切り落とすことはできない。

 とはいえ、衝撃は残っているようだからそこが狙い目となりそうかも。


「チッ!デカいだけが取り柄の鈍重なドラゴンのくせに、私の動きについてこられるなんて生意気よぉ!」

「残念、ドラゴニュートだからデカくもなければ鈍重でもないんだよ」


 対して、言うだけあってスピードはかなりのものだった。彼女は猛毒というチート級の決め技を持っている。接近するにせよかく乱するにせよ、それを最大限に活かすための戦法が高速での移動や体捌きなのかもしれない。


「でも、それに頼りすぎかなあ」

「なんですってぇ!?」

「だって、ほら!」

「ぐぅ!?」


 ぐっと踏み込んでブオンと風切り音がするほどにハルバードを振るう。躱しきれずに両手首の硬刃で受け止めたフェルペだったが、それまで同様衝撃を消すことができずに弾き飛ばされては足元の土煙を舞い上げることに。


「素早さを優先し過ぎて力が足りてない」


 淡々と指摘しながら、得物を肩に担ぐ。

 追撃?なにを野暮なことをおっしゃいますやら。こういう自分に自信があり過ぎる人はね、舐めた態度を取られるのが一等嫌いなんだよね。

 ……あっ、こら、しーっ!普段自分がやっていることなのに、とか本当のことは言っちゃダメだよ。

 ともかく、そんなだから……。


「私を侮るなぁああああああああ!!」


 はい、簡単に激昂させて我を失わせることができてしまうのだ。


「おおっと、怖い怖い」

「ふざけるなぁあああああああああ!!」


 ふざけているとは心外な。こっちは至って真面目ですともさ。フェルペのようなタイプは相手を冷静に観察して一瞬の隙を突いて勝つという戦い方が基本となる。

 つまり、相手に得意な動きをさせないようにするのも立派な戦術なのです!


「うあぁあああああああ!当たれぇえええええええええ!!」


 狙い通りフェイントもなければ騙し討ち的な攻撃もない単調な動作になったのは良かったけれど、ブチ切れ具合がすごくてちと怖いわ……。

 そしてその動きも徐々に精彩を欠いてくる。どうやらスタミナ方面もそれほど鍛えてはいなかったようだ。まあ、毒使いだからねえ。正面から戦いを挑むというより、奇襲や暗殺の方が向いているはずだ。短期決戦ばかり経験してきたなら、継戦能力を高める必要性を感じることもなかっただろうね。


 それに、毒には即効性だけでなく遅効性のものもあるからね。ダメージを与えたと気付かせない方が有利な場合もあり得る。あえて力を抑えることでそうした効果を狙っていたのかもしれない。


「ちくしょおぉおおおお!なんでぇ!なんで当たらないぃいいいい!?」


 それに適した動きをしているからね。当たるどころか触れたり(かす)めたりだけでアウト。要は殺傷力のない模擬武器を用いた訓練と同じなのだ。

 そしてそういう訓練であれば、ボクは嫌というほど経験していた。前世で。


「ほっ!はっ!よっ!……それっ!」

「ウアガアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 どうしても大きくなる回避の動作に対して、ハルバードでの受け流しや迎撃の動きはできるだけコンパクトになるよう心がけることで致命的な隙が生まれるのを防ぐ。


「怒りに我を忘れているとはいえあの猛攻を……。アオイ、あなたは全て捌ききることができますか?」

「あのねえ、分かっていて聞いているでしょう。……無理よ。エルネ様が私たちを下がらせた理由が嫌というほど理解できた。もしも無理にでも参戦しようとしていたら、あの悪魔の毒の餌食になっていたでしょうね」


 あの、お二人さん?完全に鑑賞モードに入っていませんかね?何か遠距離攻撃的なものでサポートしてくれてもいいんですよ?


 ああ、それと決してクレナさんとアオイさんがフェルペよりも弱いという訳ではないからね。多分能力だけで言えば二人が圧勝できるレベルだと思う。今の状況はあくまで場所と相性の悪さが重なっての結果なのだ。

 特に場所。生誕の地を破壊しては元も子もないので、全力を発揮することができない。手加減ともまた違った繊細さが必要になるので、想像する以上のストレスになるのよね……。


 だからその点は悪魔側の作戦勝ちと言えるだろう。今回は運良くボクという反則級(チート)な存在がいたから対処できたけれど、次もまた上手くいくとは限らない。

 集落に帰ったらパパンたちにもしっかり伝えておかないといけないぞ。


「戦いながら考え事ぉおおおおお!!どこまでもバカにしてぇええええええ!!」


 あっと、いけない。他事に意識が向いた分、ほんの少しだけど動きが悪くなってしまった。もちろん怪我を負うような失態(へま)はしていないのだけれど、だからこそ余計にフェルペからは舐めプに感じられてしまったようだ。


「らぁああああああああああ!!」

「にょわっ!?」


 ここにきて爪の硬度が上がった!?ギャリリリリィ!と耳障りな音を立てながら攻撃を受け流そうとしたハルバードが絡め取られる。そのまま大きく跳ね上げられたことで、掴んでいた腕も頭上へと伸びる、つまりはバンザイをするような無防備な体勢になってしまうボク。


「エルネ様!?」


 焦りに満ちたクレナさんとアオイさんの声が重なる。

 それを聞いてニタリと悪魔が嗜虐に満ちた顔で(わら)う。


「アハハハハ!これでお終い――」

「その一言がなければね。【裂空衝】!」

「ギャオウェイ!?」


 フェルペの口上をぶった切り、右脚を振り上げることで闘技を放つ。遠距離攻撃が可能だからといって、至近距離で発動できないというものではないのだよ。

 勝ちを確信していたらしいこともあって、正面からまともに(・・・・・・・・)衝撃波を浴びた彼女は謎の悲鳴を上げながら上空高くへと吹っ飛んでいく。


 ……うん?高く?


「しまった!!」


 気が付いた時には時既に遅しで、悪魔の姿は生誕の地を取り囲む崖の上へと消え去ってしまっていたのだった。


「あちゃあ……。やられたなあ……」


 最後の瞬間に失敗を悟ったフェルペは、即座に逃げる方向へと舵を切っていたのだ。多分命中する直前に地面を蹴って、吹き飛ぶ向きを調節していたのだろう。


「ごめん、二人とも。逃げられたみたい」


 人化して近付いてくるクレナさんたちにペコリを頭を下げる。


「いえ。エルネ様がご無事で何よりです」

「そうよ。悪魔と対峙しておいて怪我らしい怪我もなければ、損害もないなんて、十分過ぎるくらいよ」

「そういえばアオイさん、ヤバ気な炎に巻かれていなかった?大丈夫なの?」

「ああ、あれね。もう直ったわ」


 ……人間種の皆さん、せっかく開発した切り札(マジックアイテム)ですが、本物のドラゴンには効果がなさそうですよ。


〇フェルペの武器

・毒々しい爪……シャキン!と伸びる。長さは10~40センチくらい。

   常に『ドラコロの毒』が分泌されている。超危険。


・手首辺りから飛び出る硬質なナニカ……ジャギン!と飛び出る。ホネ?

   長さは30センチくらい。手首辺りならどこからでも出せる。

   形も変更可能で、湾曲させたりもできる。

   毒はないけど、とても堅くて鋭い。


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