八十七話 一世一代の告白計画①
複雑そうな面々を見回して、アレンはため息をこぼす。
「しかし貴様ら、やはりシャーロットのことに気付いていたんだな」
「そりゃまあ……手配書の似顔絵、やたら上手かったですし」
グローは歯切れ悪くうなずいてみせる。
他の顔ぶれも似たような反応だ。だが、グローはすぐに苦笑をうかべる。
「俺らはあんなの信じちゃいねえよ。だから何も言わねえでいようって決めたんだ」
「……助かる」
アレンは軽く頭を下げる。柄にもなく胸を打たれる思いだった。
(あいつを信じてくれる人間が……こんなにも増えたんだなあ)
しかもそれはシャーロット自身の行いによるものだ。
どんどん彼女の世界が広がっていることに感慨深くなりながら……ふと、アレンは首をひねる。
「だが、そこまでシャーロットを慕っているんだろう。俺が告白するのを止めないのか?」
「俺らはそういうのとは違うんだよ。アイドルのファンっつーか、なんつーか……」
「そもそも大魔王が相手ですしね……」
「まずあの子、俺らなんか眼中にないでしょうし……」
あちこちから飛んでくるのはうっすらと恨みのこもった眼差しだ。
なんだか気分が良くなって、アレンは鷹揚に頷いてみせる。
「それはよかった。俺も見知った顔を闇に葬らずに済むからな」
「もうやだよ、この人」
「すんませーん。酒の追加お願いできますか。できたら店で一番強いやつを」
かくして酒が追加され、ようやくまともな酒盛りの様相を呈し始める。
アレンも軽くアルコールを入れて、勢いのままに切り出した。
「で、話を戻すが告白をしたい。どこかいい場所はないだろうか。贈ると喜ばれそうなプレゼントなどでもいい」
「プレゼントって言われてもなあ……」
「女が喜ぶってなると、花とか宝石とか?」
「花はともかく、シャーロットが宝石を喜ぶかな……」
あまり高価なものは気後れさせてしまいそうだ。
それよりはむしろ、以前町の露天商から買い求めた髪飾りのようなものの方が喜ばれる気がした。今でもあれは毎日つけてくれている。
ひとまず贈り物は保留だ。
そう決めた折、メーガスがぽんっと手を打つ。
「あ、でも場所ならいいところがありますよ」
「ほう……? 言ってみろ」
「ここから北西の方にトーア洞窟っつーダンジョンがあるんですけどね、その手前に花畑があるんすよ」
「あー、あそこか」
グローたちも顔を見合わせて頷きあう。
彼らの話では、この近くにはそこそこ難易度の高いダンジョンがあるらしい。
腕に覚えのある冒険者たちは、その洞窟に潜って鍛錬を積み、魔物を狩って日銭を稼ぐ。
そして街からそこにたどり着くまでの道中に……小高い丘があるのだという。
今の季節は色とりどりの花が咲き乱れて、野うさぎなども姿を見せる。ダンジョンが近いため一般市民はあまり立ち寄らないが、魔物もそこまでは出てくることがないので穏やかな場所……らしい。
その光景を想像して、アレンは膝を叩く。
「おお、なかなかいいじゃないか。シャーロットが喜びそうだ」
「でしょ? ピクニックとか言って誘い出しちまえばいいんすよ」
アレンとゴツめの男たちは酒の力を借りてロマンチックな告白シチュエーションについてわいわいと騒ぐ。かなり異様な光景だ。おかげで周囲は遠巻きにその一団を見守った。
話していくうちに仔細がきまっていく。
ひとまず花畑にシャーロットを誘い出し、素晴らしい景色を堪能。
その後夕暮れをバックに告白する。
アレンでもわかるほど、ロマンに溢れた計画だ。
おかげでテンションもうなぎ登り。アレンはガタッと椅子を立って、天高く拳を突き上げ吠える。
「よーし! こうなったら明日勝負を仕掛ける! 俺はやるぞ! やってやる!」
「ひゅー、マジっすか!」
「俺らも応援してます!」
「いっそもう早く幸せになっちまってください!」
一行はそんなアレンをやいやいと囃し立てる。
場の盛り上がりは最高潮だ。そこに人影が近付いていることに、誰ひとりとして気付くこともなく――。
「なんのお話ですか?」
「うおわっ!?」
おもわず全員の口から奇怪な悲鳴が漏れてしまった。
恐る恐る振り返れば……そこにはシャーロットが立っている。おもわずアレンはごくりと喉を鳴らしてしまった。





