八十五話 イケナイ告白のために②
突然の惨劇に、アレンはすこしばかり目を丸くしてしまう。
「急にどうした、おまえたち。もうそんなに飲んだ後なのか? いかんぞ、酒は飲んでも飲まれるな、だ」
「いてて……よ、酔いなんか一発で吹き飛びましたよ!?」
盛大にすっ転んでテーブルを破砕したメーガスが、悲鳴のようなツッコミを叫ぶ。ほかの面々もよろよろと起き上がり、なぜか怯えたような目を向けてくる始末。
グローが首に巻く蛇もぽかんと口を開いて固まっている。
「えっ、参考までに聞かせてもらいたいんすけど……あんた、女神様に何を告白するって?」
「もちろん愛の告白だが?」
「ひ、開き直りやがったよ、この人……」
ともあれ全員であたりを片付けてから、ふたたびアレンを囲む会が始まった。
アレンのポケットマネーで全員に新しい酒を用意したのだが、誰も口をつけようとしない。
全員が全員押し黙り、まるでお通夜のような空気をかもしだす。
アレンは眉をひそめて集団の顔をじろりと睨む。
「なんだ。俺がシャーロットに告白して、貴様らになにか不都合でもあるのか」
「不都合っていうか……」
「この展開は予想外っていうか……」
メーガスとグローは神妙に顔を見合わせる。
その他の三下たちも、ひそひそと言葉を交わし合った。
「おいおい……こんなに早い展開、誰か賭けてたか……?」
「いや、最短で三年後とかだった気がする」
「俺なんて一番の大穴『十年後くらいにその場の勢いで手を出してしまって責任を取る』に有り金全部賭けてたのに……!」
「貴様ら後で表に出ろ」
本音を言えばすぐにでも制裁を加えてやりたかったが、話が進まないのでひとまず保留しておく。
メーガスは顔を覆って天井を仰ぐ。
「しっかしマジかー。ぶっちゃけ、大魔王さんは無自覚のままいくのかと思ってましたよ」
「いったいどんな心境の変化があったんすか……」
「それは、その……色々だ」
手を握って見つめ合っただけとは、さすがのアレンも言えなかった。気恥ずかしかったのもあるが、なんとなくまたテーブルを粉砕される予感があったからだ。
咳払いをして、踏ん反り返って続ける。
「ともかく俺はシャーロットに告白する。貴様らは色恋沙汰とは無縁そうだが、枯れ木も山の賑わいと言うだろう。無い知恵を絞ってアドバイスしてみせろ」
「人にものを頼む態度じゃねーんだよなあ……いつものことだけど」
「……」
半笑いのメーガスだった。
だが一方で、グローの方は難しい顔で口をつぐむ。
「なんだ、グロー。なにか言いたそうだな」
「……俺はあんまりよくは知らねえんだがよ」
グローはため息とともに口を開き、アレンをじろりと睨め付ける。
「ぶっちゃけ女神様、訳ありの身だろ。あんたはその事情を知った上で匿ってる。違うか?」
「……その通りだ」
アレンはそれを素直に認めた。
他の面々もまた、気まずそうに視線をそらす。





