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四十七話 迷い道ハプニング③

 かくして彼らの歓待は『演技』などではなくなった。

 全員が全員、邪気の消えたニコニコ笑顔を浮かべながら、シャーロットを取り囲む。

 かなり異様な光景である。アレンはこれと似た物を、以前話の種に入り込んだインチキ新興宗教団体の集会で見たことがあった。


 そんななか、グローが首を傾げてシャーロットにたずねる。


「それにしても……女神様はあの大魔王とどういったご関係で?」

「みなさん、アレンさんのお知り合いなんですか?」

「知り合いっていうか……」

「無理やり知り合いにさせられたっていうか……」

 

 男たちはげんなりと顔を見合わせる。

 アレンがここに来たことは厳重に口止めしておいたのだが、うっかり口を滑らせないとも限らない。

 

(喋ったらどうなるか……わかっているだろうな?)

 

 一応、遠距離狙撃用の魔法をいつでも放てるように準備だけしておく。しかし幸いなことに魔法を使うような展開にはならなかった。


「ほんとに、あの人とはどういったご関係なんで?」

「アレンさんとは……えっと、その……」


 グローの問いかけに、シャーロットは口ごもる。

 本当のことを正直に言うわけにもいかないからだろう。やがて彼女はぽつぽつと語り始める。


「私、もう帰る家がないんです。でもアレンさんがご親切にも、使用人として雇ってくださって……だから関係といったら、その……」


 そこでシャーロットは言葉を切って、不安げに告げる。


「ご、ご主人様……ですかね?」


 たしかに表向きは雇用主とメイドの関係なので、なんら間違っていない言葉である。

 だが、それはなんとも背徳的な響きだった。おかげでアレンは「ぐうっ」と胸を押さえてしまう。


「ちょっと、おにい。大丈夫?」

「見てるこっちが胸焼けしそうですにゃ」


 エルーカとミアハがそろって冷たい目を送ってくる。

 さらに言えば、それを聞いていたグローたちも神妙な顔を見合わせて、気遣わしげにシャーロットへ声をかけるのだ。

 

「女神様、ひょっとして(だま)されてるんじゃないですか……?」

「いや、俺らみたいに脅されて服従させられているとか……」

「くっ……大魔王め! こんな素晴らしい方を惑わすなんて……!」

 

 いつしかそれは大魔王ことアレンへの恨みつらみへ変わっていって、決起集会のごとき熱気となった。

 

「あいつら……」


 アレンは渋い顔をするしかない。ただまあ、自分でもシャーロットと並ぶと犯罪じみていることは嫌でも承知していた。


 かたや、ゴロツキ集団を鼻歌交じりにねじ伏せる大魔王。

 かたや、誰にでも優しい女神のような少女。

 誰がどう見ても不釣り合いだと思うだろう。


 だがしかし……シャーロットはくすくすと笑う。

 

「ご心配ありがとうございます。でも、アレンさんはお優しい人ですよ。なにかの誤解です」

「ほんとですか……?」

「……大魔王にもそういう感情があるんだな」

 

 グローたちは戸惑いつつも、ひとまず納得したようだった。

 シャーロットはにっこり笑って(たたみ)み掛ける。

 

「はい。アレンさんは私に、イケナイことをたくさん教えてくださるんです!」

「っ……!?」


 ゴロツキたちに衝撃が走った。

 しかしシャーロットはそれに気付くこともなく、頰に手を当ててどこか照れたように続ける。


「この前も、アレンさんと夜通しでイケナイことをしたんですよ。はしたないことだと分かっていても……とっても楽しい一夜でした」


 先日やったイケナイことといえば、お菓子とゲームで夜更かしして、次の日はともに昼過ぎまで惰眠(だみん)(むさぼ)ったことだろう。

 たしかに楽しい一夜ではあった。

 だが……。

 

「おにい……」

「魔王さん……」

「……外では言わないように、あとで注意しておく」


 アレンは初めて、己の言語センスを後悔した。

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