表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/225

四十話 アレンの苦悩とシャーロットの挑戦①

 初夏のある朝のこと。

 曇天が見下ろすアレンの屋敷に、ミアハがいつものように訪ねてきた。


「おっはよーございま……あにゃ?」


 手にしているのは小包と新聞紙。

 いつも通りの荷物を手にした彼女だが、この日は目を丸くしてぽかんとしてしまう。

 それもそうだろう。なにしろ玄関先でアレンが体育座りして、頭を抱えていたからだ。

 

「ど、どうしたのですにゃ、魔王さん。こんな場所で」

「……ミアハか」

 

 気遣わしげな声に、アレンは青白い顔を上げる。

 目の下には深いクマが刻まれており、自分でわかるくらいに憔悴していた。声も掠れて今にもぶっ倒れそうなほど。ほぼ徹夜で悩み続けたため、仕方ないといえば仕方ない。

 

「何度言ったらわかるんだ……俺は魔王ではなく、大魔王だというのに……」

「いやだって、魔王さんは魔王さんって感じなのですにゃ」

「わけがわからん……」

「ツッコミにも覇気がないですにゃー。いったい何があったのですにゃ」 

「やっほー、おにい! 可愛い妹が遊びに来たよ!」

「あにゃ」

 

 そこにエルーカも騒がしくやってきた。

 ミアハは耳をぴくりとさせて、にこやかにお辞儀をする。


「おはようござますにゃ、エルーカさん」

「おはよ、ミアハさん! 今日もナイスな猫耳だよ☆」

「いやはや照れますにゃー」

 

 アレンを通してすっかり顔見知りになった女子二人だ。街でもちょくちょく会っているらしい。

 きゃっきゃしつつも、話題は自然とアレンのことに移っていく。

 

「てか、どうしたの。これ」

「さあー? ミアハが来たときには、もうこの状態でしたにゃ」

「ふーん……さては、おにい」

 

 エルーカはキランと目を光らせて、人差し指を突きつける。

 

「ずばり、シャーロットちゃんと何かあったんでしょ!」

「ぐっ……な、なぜわかった!?」

「いや、逆に聞くけど、おにいがそれ以外で狼狽(うろた)えることってある?」

「たいていは自力で強引に解決してしまうでしょうからにゃー」


 慌てふためくアレンをよそに、女子ふたりはしれっとした反応だった。


 ともあれ彼女らの指摘は正解だ。

 アレンがここまで頭を抱えることなど、シャーロット以外にありえない。しかも、今回は非常に厄介なことになっていた。

 

「シャーロットさんと喧嘩でもしたのですかにゃ?」

「それならまだいい方だ……」

 

 ミアハの問いかけに、アレンは自嘲気味な笑みをこぼす。

 そうして彼はぽつぽつと、昨夜起こった事件のあらましを語り始めた。

 

 

 

 昨夜。ふたりで夕飯を食べてから、アレンはシャーロットに切り出した。


『なあ、シャーロット。おまえがここに来てから、もう一ヶ月だ』

『もう……そんなに経つんですか』


 紅茶を飲んでいたシャーロットが、感慨深げに吐息をこぼす。

 たった一ヶ月。されど、もう一ヶ月だ。

 長いようで短い時間だった。シャーロットはこれまでの日々を思い出してか、どこかぼんやりとした様子で黙り込む。

 そこに……アレンはにやりと笑う。


『というわけで……本日は給料日だ!』

『……へ!?』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズ十巻発売!
flpigx5515827ogu2p021iv7za5_14mv_160_1nq_ufmy.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ