百四十話 問題児との会食風景②
そんな妹に、シャーロットは明るく笑ってぐっと拳をにぎってみせた。
「だからさっきの授業で教えていただいた雷の魔法も、ちゃんと練習しますね! 使いこなせるように頑張ります!」
「まあ、あれはすこし難易度の高い魔法ですので……分からなければ、また聞いてくれてもかまいませんよ」
「本当ですか!? ありがとうございます、ナタリアさん!」
「……別に。弱者に施すのは強者の務めですから」
ナタリアはそっぽを向きつつも、その頰はほんの少しだけ赤く染まっていた。
姉妹の距離は瞬く間に縮まっているようだ。思った以上の手応えに、アレンはニヤリと笑う。
「よかったじゃないか、シャロ。いい先生が見つかって。あの呪文は敵の動きを止めるタイプのものだからな、非力な女性が習得すれば百人力だろう」
『それじゃ、アレンがバカやったときに使えるじゃん。よかったねえ、ママ』
「し、しませんよ、そんなこと……」
シャーロットは苦笑しつつ――ふと、ナタリアの食事に目を留める。
「それよりナタリアさん……今日のご飯はそれだけですか?」
「はい? 十分な量でしょう」
ハンバーガーにフライドポテト、それにオレンジジュースという取り合わせだ。
焼きそばパンやフランクフルトといい、やたらとジャンキーな食事を好む幼女である。
良家の娘ゆえ、こうした庶民の味には触れてこなかっただろうし、ここに来てハマったのかもしれない。
しかしシャーロットは目をつり上げてみせるのだ。
「お野菜も食べなきゃダメですよ! 私、サラダか何かを頼んできます!」
「えっ、い、いいですよ別に……」
『では、儂が随伴いたしましょうか?』
「大丈夫ですよ、すぐそこです。ちょっと行ってきますね!」
「おう、気を付けてな」
「ええ……」
意気込んで注文カウンターへと向かったシャーロットのことを、ナタリアは戸惑いながらも見送った。
フライドポテトをちまちま摘まみつつ、首を傾げてうなる。
「本当に変な人ですね……どうしてあそこまでわたしにこだわるのでしょう。仕事だから、といった雰囲気でもないですし」
「あー、故郷の妹がちょうどおまえと同じ年頃らしい。重ねているんじゃないのか?」
「……なるほど。納得です」
嘘は言っていないが、真実でもない。
アレンの曖昧な言葉に、ナタリアは小さくうなずいてみせた。
シャーロットもシャーロットで、お姉さんらしいことができるのが嬉しいのだろう。
そんな会話を繰り広げるふたりを横目に、すこし慣れたらしい舎弟たちが、おそるおそるといった様子でルゥ達に話しかける。どうやら魔物言語ができる者が何名かいるらしい。
「え、えっと、『こんにちは』……?」
『こーんにーちはー!』
『うむうむ、苦しゅうないですぞ。挨拶のできる若者は好ましいものですな』
「なんて言ってるんだ?」
「フェンリルの方は聞き取れるけど、地獄カピバラは俺もよくわからねえ……めちゃくちゃ古い公用魔物言語だ、これ。下手したら千年くらい前の……」
「この地獄カピバラ、何歳なんだよ……」
一部は戦々恐々としながらも、和やかな会食の空気が生まれた。
そんななか、ナタリアはラーメンをすするアレンをジト目で見ていたが、やがて小さくため息をこぼしてみせる。
「ちょうどいいでしょう。シャロさんもいないことですし、あなたに少し聞きたいことがあります」
「なんだ?」
「あなたはわたしの……エヴァンズ家からの依頼を受けて、送られた者なのですか」
「違う」
アレンはきっぱりと否定した。
続きは明日更新。
来週の木曜日はとうとう桂先生によるコミカライズが始まります!よろしくお願いいたします。





