百三話 イケナイデート計画①
「非モテの貴様らには答えづらい問いかけだったよな。次からは配慮しよう。いやはや、まさかこの場で恋人持ちが俺ひとりとは。ふっ……そうかそうか」
「くそっ……ちょっと元気になってんじゃねーですよ!」
「根本的なメンタルは俺らと同じで非モテタイプだろ、あんた!」
あちこちから上がるブーイングが耳に心地よい。
いくぶん顔色のよくなったアレンだが、問題は依然として解決していない。
あごを撫でてしばし考えて……ぽつりとこぼす。
「だがまあ、先ほど貴様らが出した案。あれはいいかもしれないな」
「っていうと……?」
「無論……デートだ」
デート。
恋人同士がともに出かけるイベントのことだ。
アレンもさすがにそれくらいは知っている。自宅で過ごすのもデートと呼ぶようだが、すでに同居中の身なのでノーカンにしておこう。
(うむ、デートか……断然アリだな。家だとルゥやゴウセツもいて、ふたりきりになることがないし……)
一応二匹とも気を使って距離を取ってくれてはいるものの、やはりどうしてもふたりだけの時間というのが少ない。
デートと称して出かければ、それも解決するはずだ。
「とりあえず先ほどの話をまとめれば、ふたりきりで出かけて……プレゼントを贈ったり、でいいんだな?」
「まあ、そんなんでいいんじゃないですかね」
「あ、表通りに若い女性が行列を作ってるパンケーキ屋がありましたよ。女神様もきっとよろこんでくれるんじゃないっすか?」
「ふむふむ、なるほどなあ……」
あちこちから飛んでくるアドバイスを、アレンはメモ帳に書き連ねていく。
前回の告白シチュエーション会議のときと同様、大の男たちが真面目にデートについて話し合う光景はかなり異様で、ウェイトレスですら近付くことを避けていた。
だがしかし、たったひとりの人影だけは違った。
会議がだいたいまとまりかけた折……ため息まじりの声が響く。
「いやはや……どれもこれも噴飯もののアドバイスですにゃあ」
「む?」
アレンが振り返ってみれば、そこには制服姿のミアハが立っていた。
いつものにこやか営業スマイルとは異なり、どこか呆れたような苦笑をうかべている。
「なんだ、ミアハか。配達中か?」
「はいですにゃ。こちらの冒険者ギルド様も当社のお得意様ですからにゃー。それにしても……魔王さんは幸せそうでなによりですにゃあ」
ミアハはのほほんと笑う。
毎朝配達に来るため、彼女にはアレンとシャーロットの顛末を話してあった。
ほのぼのとしたお祝いムードのなか、メーガスやグローたちはムッと顔をしかめるのだ。
「なあ、運び屋のお嬢ちゃん……噴飯ものっつーのは、俺らのアドバイスのことか? 何が悪いっつーんだよ」
「そうだそうだ! 聞き捨てなんねーぞ」
「悪いわけではないですにゃ。少なくとも、その辺のデート指南書に載っていそうなステキなプランですにゃ」
ミアハはゆるゆるとかぶりを振る。
しかしふっ……と口の端を持ち上げて、ニヒルな目を一同に向ける。
「でも……だからこそ、マニュアル通りで面白みに欠けるというか、遊び心がないというか。あんまり場数踏んでないんでしょーにゃあ、というのが透けて見えるというか……」
「ギクゥッ!」
その瞬間、大勢のハートが容赦なく抉られた。
続きは10月13日(日)更新します。
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