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時魔術士の強くてニューゲーム ~過去に戻って世界最強からやり直す~(Web版)  作者: 坂木持丸
第3章 王都エンデ

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45話 刺客

 こちらに近づいてきた男の肩に、すれ違いざまに手を置いた。


「――――“時よ、進め”」


 その一言で――かちり、と街の人波が停止した。

 俺と近づいてきた男だけが、いつも通りの時間の中を動く。


「…………は? …………え?」


 状況を理解していないのか、目を白黒させる男。

 そんな男の服の時間を止めて動きを封じてから、俺は問う。


「……何者だ。俺たちを狙っていたな?」


 男がぎょっと目を見開く。


「ずっと隠れて見てただろ。魔力の隠蔽の仕方があからさまだったぞ」


「な、なんのことかわからな――」


「なら、質問を変えようか。お前は……魔術士協会の人間だな? 合成魔獣(キマイラ)を仕向けたのもお前か?」


「…………」


 男はうまく平静をよそおっていたが――。

 その体に触れている俺にはわかった。


「今、魔力があきらかに乱れたな? その反応……やっぱり、魔術士協会のやつか」


「……なっ」


 監視するためか、目立つローブなどは身につけていないようだが。

 魔力の流れを見れば、素人かそうじゃないかはすぐにわかる。


「俺を襲えと指示を出したのは誰だ?」


「さあ、なにを言ってるのかわからな……」


「悪いけど、時間を無駄にするのは嫌いなんだ」


 俺は触れている肩を通して、男の体内魔力を操作する。


「あ、ぐぅう……え、が……ッ!?」


 男が全身から魔力を噴き上がらせて、泡を吹いた。


「お、おま……お前……まさか、おれの魔力の流れをっ!?」


「ああ。ちなみに、このまま魔力を暴走させ続けたら、どうなるか……わかるよな?」


「……っ!」


 先ほどエルに魔力操作のやり方を教えたときと、やり方は同じだ。

 体外魔力の操作によって、相手の体内魔力を暴走させる。

 それによって、魔力回路が壊れたら、魔術が使えない体になる。


 まあ、止まっている相手に長時間触れていないといけないため、すでに無力化させている相手にしか使えないが……こうやって脅すときには役に立つ。


「ふ、ふふふ、ふ……わ、わかった、話してやるよ」


 男は観念したように口を開く。


「話したところで……どのみち、お前はもう終わりだ。十二賢者に目をつけられたんだからなぁ。一級魔術士を倒したらしいが……お前はまだ、十二賢者の怖さを知らない」


「…………」


 まあ、前回の人生では、俺がその十二賢者のトップだったんだけどな。


「それより、とっとと話せ」


「ああ、いいとも。よく聞け。おれに指示を出したのは、十二賢者の――」


 そこで、男の言葉がぴたりと止まる。


「十二賢者の、誰だ?」


「いや……あ、あれ……なんでだ? 思い……出せねぇ」


「どうした? 早く答えないと魔術が使えない体になるぞ?」


「ち、違っ! なんも思い出せねぇんだ! 本当だ! な、なんでだ、わからない……おれはどうして、お前を――襲った? 思い出せない……思い出せない、思い出せないっ!」


 男の様子がおかしくなる。過呼吸を起こし、がりがりと頭をかきむしる。


(……とぼけている演技ってわけでもなさそうだな)


 男の恐怖や不安は、体内魔力の乱れを通して伝わってくる。

 本当に、指示した人間のことを忘れているのだろう。

 そして、忘れたことも忘れていたのだろう。


(……記憶操作)


 その言葉が脳裏に浮かぶ。

 やはり、この王都には、()()()()()()がいるらしい。


「ああ、そうだ――思い出した! 思い出した! 思い出した! 思い出した! おれはお前を襲わなきゃならねぇ……なぜなら、お前を襲わなきゃならねぇからだ! おれが……おれが、おれが――そう決めたんだ! その()()がちゃんとある! ふ、ふ、ふふふふっ!」


「おい、落ち着け……」


「ふ……ふ、ふふふふ……っ! なぁ、お前――おれが動けないからって、油断しただろ? もう勝った気になってただろ?」


 男がからかうように、べろりと舌を出した。

 その舌につけられている銀のピアス――それがこの男の魔術の発動体なのだろう。

 男の舌の上には、すでに完成した魔法陣が輝いていた。


「ふふ、ふふ、ふっ……尋問するためには口を自由にしないといけないもんなぁ? 妙な魔術を使うから警戒したが……やはり、ガキはガキだ。実戦経験が足りてないから、こうして足元をすくわれる」


 ふぅぅぅう……と。

 煙草の紫煙のようなものが、男の口の奥から漏れ出てくる。

 いや、それは煙ではない。


「……はえ?」


「ふ、ふふふふ……そうだ。おれが品種改良し、胃の中で飼っていた肉食蠅の魔物たちだ。この蠅たちは人間のあらゆる穴から侵入し、体の内側から血肉を喰らい、卵を産みつけるッ! そして、この数、この小ささだ――この蠅全てに対処することは不可能ッ!」


 ぶぶぶ、ぶぶぶぶぶ……ぶぶぶぶぶ……と。

 男の口の中から現れたのは、無数の蠅の軍団。

 蠅は黒煙のように密集し、耳ざわりな羽音をかき鳴らす。


(……趣味の悪い魔術だ)


 魔術士協会らしい――といえばそうかもしれないが。


「ふふふ、ふふ……ふふふふふッ! 聞いて驚け! おれはかの高名な“傀儡の魔術士”――レインズ・オールドベル一級魔術士の愛弟子、蠅柱の魔術士ベルゼグ! おれの使役魔術は、すでに5位階にまで到達してい――」


「悪いけど」


 はら、はら……はら……と。

 俺が手のひらを向けると、蠅たちが地面に落ちていく。


「こんな子供の遊びに付き合ってる時間はないんだ」


 蠅の寿命は短い。

 肉体の時間を――老化を早めてやれば、すぐに死ぬ。


「…………は? …………え?」


 男がぽかんと地面に落ちた蠅を眺める。

 しかし、すぐにはっとしたように、口の中でふたたび術式を組み直そうとし――。


「――“時よ、戻れ”」


 俺が手のひらを向けると、男の作った魔法陣がふっとかき消えた。

 魔法陣の時間を、“構築前の時点”まで巻き戻したのだ。


 ――術式殺し。

 未来でも恐れられた、対魔術士用の技の1つ。

 実力者には効かないが、この程度の相手になら充分に通用する。


「……なっ!? なんでっ!? おれの術式がっ!?」


「さて、うろたえてるところ悪いけど――そろそろ、終わりにしようか」


 どうせ、この男から得られる情報はもうないだろう。

 それに少し時間をかけすぎた。あくまで俺たちは加速しているだけで、街の人波もゆっくり動いているのだ。


 見れば、エルも屋台でアイスを受け取っている。

 そろそろ、こちらをふり返る頃合いだ。

 だからその前に、俺は男の顔面を手のひらでつかむ。


「ああ、そうそう。魔力回路を壊すのは繊細な作業なんだ。なるべく、じっとしていたほうがいい。じゃないと――前に壊した魔術士みたいに、無駄に苦しむことになるからな」


「……ひ……ぃっ! ま、待て……待ってくれっ!」


 男が追いつめられたように悲鳴を上げる。

 まあ、魔術士協会のやつらにとっては、魔力回路が壊されるのは死より恐ろしいことみたいだからな。

 魔術士協会に対するいい見せしめにもなるだろう。


「……わ、悪かったっ! は、話すからっ! なんでも話すっ! だから、魔力回路だけはっ! や、やだッ、やめろッ――せめて、殺してく――」



「――――終われ」



 最後に、俺はそう告げた。

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