第47話 冥府(2)
「ウォン!」
僕は、周りの声!
暴君化したウォンへの批判の声!
喧騒のために注意が逸れたあいつ!
ウォンの奴を僕は、最後の力を振り絞り名指しで呼ぶと。
ウォンの奴は、大変に恐ろしい顔で、僕のことを睨みつつ。
「ん?」と、あいつの口から言葉が漏れたと同時に。
僕の掌にある、《《ある物》》──。
そう、《《砂》》と言う奴をウォンの目にめがけて投げる。
「うわぁあああっ! 目がぁっ! 目が見えん!」、
「このクソガキ! 俺の視界を奪う為に目に砂をかけやがったぁっ!」
ウォンの奴が、自身の目を両手で覆い、かき始める動作にでた。
だからあの時は、僕の思惑通りに、ことが運んでくれたから。
僕はウォンの奴に対して一矢報いるために最後の力を振り絞り。
「ウォンー! 死ねぇえええっ! 死んでぇ、しまえぇえええっ!」と。
僕は異世界ファンタジーな主人公達がボスキャラを葬る時みたいに。
自身の声を大にして叫びつつ。
僕の利き腕で、新たに握り直した。
僕の華奢握り拳よりも大きな、硬い石を。
シルフィーのバカがくれなかった聖剣の代わりに。
ウォン顔へと強打──!
殴りつけてやった!
それも一度ではなく、二度三度と。
「ウォン! 死ね! 死んでしまえ!」
僕は威勢よく! 荒々しく! 叫びながら。
ウォンの顔だけではなく、頭も殴ったと思う?
僕自身が朦朧とした意識の中で、火事場の馬鹿力を使用して殴り回したから。
僕自身も余り記憶には残ってはいないけれど。
あの男……。
オーク種族最強の漢戦士ウォンの顔中が、血だらけになるほど。
僕は無防備なあいつの顔や頭へと石で殴りつけたから。
最後の、最後……。
本当に最後のところで。
まあ、汚い手口ではあるのだが、主人公らしくない勝利を得たみたい?
人の話しだと、ウォンは血まみれになった自分の顔を抑えつつ。
「うぎゃぁ、あああっ!」、
「いてぇえええっ!」、
「いてぇ、よぉおおおっ!」と。
あいつが珍しく、地面をのたうち、転がり回ったみたい。




