第29話 妻ではなく、酋長として(1)
「どう言う事って、そう言う事、二人共……。健太が女癖が悪いから、あれらは不満があるとわらわに告げてきた。だからわらわが、奴らに好きにしろと言った。それが悪いのか?」
ウルハとサラの問いかけに対してアイカは、男女の争いの原因が僕だとわかると。
今までは自身の顔色を変え、困惑していたのにさ。
急に安堵した表情へと移り変わり、二人の話しを聞いた。
でッ、聞け終われば、アイカは二人に対して、だけではないか?
僕やその他の奥さま達も含めたメンバー達へと悪びれる様子もなく。
怪訝な表情をしつつ僕が悪いのだとはっきりと告げた。
でも、みなさんも知っての通りで、この時の僕はまだ、オーク種族の婚姻習わしの件を知らない状態だから。
僕が女癖が悪いと、アイカに嫉妬心も含めて不満を申されても。
エリエやプラウム、サラを僕に与えたのは、アイカだから。
僕が女癖が悪いと言われても困る。
だからこの時の僕は、相変わらずメソメソと女々しく泣いてはいたけれど。
自身の脳裏で、(アイカさん、僕が女癖が悪いと言われても困る)と嘆くように思っていた。
「アイカ姉! 健ちゃんが女癖が悪いと言うけれど。アイカ姉は健ちゃんに洗濯の件は説明をしたの? サラはしていなし、エリエ姉やプラウム姉もしていないと思うよ?」
「あっ! わらわも多分していない……」
そう、ここで初めて、アイカは自分のミスに気が付いた。
異世界からきた他種族の僕が、オーク種族の婚姻の習わし、常識と言う奴を知らないと言うことをね。
それなのに僕が悪いと言うか?
アイカ自身が、ウルハ達に対して嫉妬心を剥き出しにしながら頭にきていた。
でもアイカは、この集落の酋長だから、ウルハ達に、自分の夫に手を出すな! と怒声を吐く訳にはいかない。
だからアイツは大人の対応で、ウルハ達が僕に言い寄ろうが素知らぬ振りをしたから。
男達の件も素知らぬ振りをした。
僕のことは、死なない程度で好きにしろとでも告げたのかな?
僕自身は最後までアイカに怖くて尋ねていないから。
よくはわからないけれど。




