第51話 見て見ぬふり(1)
しかしアイカさんの腹違いの兄らしい……。でも僕には従兄で、元許嫁だと、うそを集落の人達から教わっている。そんな彼……。ウォンさんが彼女を今までも……。まあ、今後もさ、止めるから僕は、他界したと言われている前王の思惑通りに素直な気持ちが段々と薄れ、自分の妃達さえ、猜疑心の目で見る冷たい男へと変貌していくけれど。
それでも僕は弱いなりにも、夫を侮る、妃たちへと認めてもらいたから、毎日の修練を欠かさずに川への洗濯の前か、後には、自分の男の勲章を上げるために。
「今日もおねがいします」と。
僕は頭を下げ、オーク種族の若い男性陣らへと相撲の稽古をお願いするのだった。
◇◇◇
第21話 見て見ぬふり(1)
「ふぅ」と。
「──よし、がんばるか……」
僕は陽が落ち外は月夜の灯りの灯が当たる箇所以外は漆黒の闇に覆われた時間……。
まあ、そんな時間帯だから、この部屋も蝋燭の灯りだけでは薄暗く、余り神殿の外と変わらない暗闇の中で微笑みながら独り言を呟くと。
「1、2,3、4,5……」と。
僕は力強く数を数えながら腕立て伏せ……。
そう僕のような、女性と余り変わらぬ、チビで華奢な自分はとにかく、今の成長期の身体を上手く利用して筋肉をつけるしかない努力……。
まあ、僕が人種と言うだけで、この集落の人達のような戦闘種族のオークではない訳だから。
僕のこの腕立て伏せや腹筋……。朝夕のジョギングや剣道、柔道、空手の練習もするだけ無駄……。努力の無駄だけれど……。
それでも結婚してから月日が経ち、夫婦仲がよくなるどころか、日に日に悪くなる僕とアイカさんなのだが……。
僕も神輿や傀儡君主だとしても一応は王さまだから異世界ファンタジーの女王さまに認めてはもらいたい。




