第38話 洗濯屋健ちゃん? (13)
僕は困惑した様子でウルハさんに、愛する妻の作った手編みの篭……。
そう僕の目指す、今日本で流行りのスローライフの冒険譚らしい網篭の中に御自身の汚れた衣服を入れないで欲しいと告げようとすれば。
「ちょっと待ってじゃないだろう、あんた!」
僕が不満を告げる前にウルハさんが怒るから。
「えっ!」
僕はまた驚嘆した。
「うちもアイカやシルフィーのように、あんたの妻なのだから、夫らしく。うちの衣服も洗ってもらわないと困る!」
ウルハさんはあの日……。
そう僕が初めて彼女の洗濯物を洗った日には、妃だと告げてはこなかったのに。次の日には何故か僕の妃だと憤怒しながら告げてきたから。
「えっ!」
僕はあの日──。またまた驚嘆をしてしまうし、狼狽の方も更に酷くなるけれど。
ウルハさんはそんな様子の僕を見ても気にした様子もみせずに。
「ほら、あんたらも、うちのひとに汚れ物を洗ってもらいな」
と、自分の姉妹や従姉妹達にも、僕に洗濯物を洗ってもらいなさいと告げるから。
みなさん仲良し、こよしで、ウルハさんまで僕の妻だと聞かされ困惑……。頭を抱える僕のことなどみなさん放置で次から次へと洗濯物を入れてくるから。
いくら彼女達がビキニ水着のような薄手の衣服を着衣していようともランドセルやリュックサックよりも大きな洗濯籠でも中身が半分ぐらいは埋まるだろうから。
僕は頭を抱えるのを辞め、目を疑いながら。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、みなさん! いくら貴女達が着衣をしている衣服が僕の住んでいた日本のビキニ水着のように薄手の物だとしても。僕一人で洗濯をしていたら他の家事ができなくなるから。僕がアイカさん叱られます……。だから勘弁してください。おねがいします……」
僕は深々と頭を下げながらウルハさんは妃さまらしいから、オーク種族の規定通りに夫の義務である洗濯物を洗うけれど。他の人達は勘弁、許してくださいとお願いをした。
しかし戦闘民族であるオーク種族のアマゾネスのお姉さん達は、ひ弱……。軟弱王の僕が頭を下げたくらいで嘆願を聞き入れてくれる訳はないから。
「……う~ん、そうだね……。家のひとの言う通りだ……。このひとにはうちの家の掃除もしてもらわないといけないから。皆、家のひとの洗濯をするのを手伝うよ! 分ったかい、皆~?」
あの日のウルハさんは僕が、
『おい、おい、お前? 洗濯や家の掃除って、一体どう言うことなのだ?』
と尋ねたくなることを何度も平然と告げるから。僕がその都度、『ウルハさん一体どう言うことなの?』
と頭を抱えながら尋ねたくなる衝動に駆られるけれど。
「ほら~。皆~、余り時間が無いんだ~。さっさと家事を終わらすよ~!」
ウルハさんは大変に嬉しそうな声音でみなさんへと告げながら僕の背を押すから。
「ちょっと待ってよ~。みなさん~!」、「待ってください! みなさん~!」
僕がウルハさんと彼女率いるヤンキーの姉ちゃん達へと告げ、抵抗を試みてもいつもふと気がつけば小川についている強制連行的な状態だから。




