第35話 洗濯屋健ちゃん? (10)
僕は洗い終えたウルハさんの衣服を微笑みながら、あの日手渡したのだ。
「そうかい、あんた……。ありがとうね」
僕がウルハさんに洗い終えた衣服を手渡すと彼女は嬉しそうに受け取ってお礼を告げてきた。
でもさ、その時にウルハさんが僕を呼ぶ時の言い方が【男王】から【あんた】と、とても身近……。近親間のあるような呼び方へと変化したのと。
ウルハさんは僕から洗濯物を受け取った時に嬉しそうに微笑んだ。
しかし彼女の微笑み方は、僕が見てゾッ! と背筋が凍るような妖艶な微笑みだったから。彼女の僕への呼び方が【あんた】と身近な呼び方に変わった時は『あれ?』と自分の首を傾げるぐらいの程度の悩みではなく。僕は狼狽したけれど。
僕とウルハさんの周りにいるオークの主夫の人達が僕からの洗濯物を受け取った様子見て、ワッと騒めき始めるから。
僕はウルハさんの呼び方、態度、仕草で狼狽するどころではなくなり。今度はオークの主夫達の喧騒に対して狼狽をすれば。
「──あんたら! うちに何か文句があるのかい?」
ウルハさんは僕の横で座る動作を辞めて直ぐに立ち上がると、主夫の人達に自分に言いたいこと……。不満があるのならば言ってこいと荒々しく尋ね、告げた。




