第32話 洗濯屋健ちゃん? (8)
◇◇◇
「よ~し、男王着いたぞ! ここが主夫の洗濯場だ!」
現地──。小川に到着するとウルハさんは大変に大きな声……。
そうまるで僕が洗濯場に到着したことを必死に洗濯をしている人達へと大袈裟に知らせるように声を大にして叫んだ。
だからお爺さんが芝刈りではなくお婆さんの洗濯係へと変貌を遂げている主夫のオークの男性達が僕とウルハさんのことを一斉に見詰め……。少しばかり間が経てば、沢山の主夫の人達は周りの人達と。
『ヒソヒソ』と僕達の方をチラチラと見ながら何かしら会話をし始めるから。
僕は何だ感じが悪いな……。ここの人達はと思えば。
「お~い、男王~。ここで洗濯をしよう~」
ウルハさんが僕達の目の前の小川の端──開いている個所へと座り込んで手を振り、呼ぶから。
「はーい」
と僕は言葉を返して、ウルハさんの真横へと座りながら、僕がランドセルのように背負っている、草の葉や木の皮でプラウムさんが夫のためにと編んでくれた洗濯籠を。
「よいしょ!」
と声を漏らしながら降ろして。
何故かこんな太古の原生林にある百円均一の洗濯板と香辛料の少ない、昔ながらの洗濯石鹸で他人の目……。
そうやはり異世界からきた部外者であり、種族の方も人種であり、移民族扱にもなる僕には冷たい視線が注ぎ込まれるけれど。
アイカさん達との祝言の日の夜の宴でも、僕は集落の人達から冷たい視線を浴び、話しかけてももらえない状態だったから。
まあ、洗濯へといけば、ここの人達が僕に馴れるまでは冷たい視線を浴びることは覚悟していた。
だから僕は主夫達の冷たい視線に対して素知らぬ振りを決め込みながら洗濯物をゴシゴシとウルハさんと仲良く洗い始める。
それも僕が異世界人と言うこともあるから。僕は彼女へと異世界日本の話しや自分の生い立ちを色々と洗濯の最中に話してあげたら。
ウルハさんは、
「そうか、そうか」、「それは凄いな」、「男王は賢いのだな」
と、僕の話を興味津々に聞いてくれた上に褒め称えてもくれたのだ。




