第28話 洗濯屋健ちゃん? (4)
「おい!」
「お~い!」
「あんたぁ~!」
「あんたぁ~、ちょっと待ってよ。あんたぁ~」
僕……。お爺さん役がね……。山へと芝刈りではなく……。お婆さんの役である川へと洗濯に向かっていると。川の上流から桃がどんぶらこ、どんぶらこ、ではなく。若い女性達が、この集落の男王である僕のことを呼ぶ大きな声が多々聞こえてくるから。
僕はとにかく後ろを振り返ることもしないで逃走──!
この集落の女性達から逃走を謀るのだが、実話ね? 僕を追いかけてくる女性はね、最初の頃は二人で……。僕はその娘達から逃げ回っていた……。
僕は彼女達と関わりたくないから、プラウムさんが木の皮を編んで作ってくれた洗濯篭を背中に背負いながらオークのアマゾネス達から逃げに、逃げていた。
でもさ、僕がふと後ろ振り返ると──。オークの少女やお姉さま達……。
そして淑女のお姉さま達まで混ざって……。彼女達から逃避行を続けている僕の背を今日も追っかけてきながら。
「──姉さん、逃げているよ。あのひと?」
「──どうするんだい、ウルハ?」
「──このままだと、あのひとに逃げられてしまうよ、姉さん……。それでも良いのかい?」
僕の背を追いかけてくる彼女達の口から、こんな台詞が多々漏れ続け、誰かさんへと尋ねると。
「はぁ~。何を言っているんだい。あんた達~! うちがあのひとの事を放っておく訳ないだろう~~~! さぁ。皆ぁ~! 家のひとの事を追いかけるよ~。そしてこれを手渡しすのだぁ~! 皆~~~!」
アイカさんの義理の姉に当たるウルハさんから、こんな恐ろしい台詞が吐かれると。
「「「「「待て~~~!」」」」」
「「「「「こら~~~!」」」」」
「「「「「逃げるな~~~!」」」」」
僕に逃げるな! と荒々しい声が多々聞こえてくる。




