第180話 災い(1)
「健太、今回の戦は。前回の戦の傷が未だ癒えぬ、お前は領内に残れ。良いな、健太?」と。
僕達領民の領主であり。
僕達家族の家長で、大黒柱のカイジさんが今回の戦──遠征の方は。
いつも戦で重傷を負っても、何故か、寝て起き、一晩経てば傷が完全に癒えているはずの僕の傷が。
今回に限り直りが悪い。
だから僕の妻フェインや。
その他の治癒魔法が使用出来るカイジさんの御后さま達……。
僕の家族にもなる女性達の愛ある治癒魔法での、傷の回復なのだが。
やはり傷の方はある程度回復しても体力の方が完全に完治までいかないので。
「カイジさん、すいません。僕の体調が余りよろしくないので。本当に申し訳ないです。役立たずの僕で……」と。
僕は横たわっていた自身の身体を上半身だけ起こし、カイジさんへと深々と頭を下げ、謝罪をした。
でも僕達の領主、家長は。
みなさんも知っての通りで大変に気さくな、兄貴分肌の強い人だから。
「健太、気にするな。武功は次の戦で立てれば良い……。今回は屋敷でゆるりと傷を癒し、体力の回復に努めるんだ」と。
僕に微笑みながら告げ。
「健太、領地と皆の事は頼むぞ」とも告げてきたから。




