第110話 罠(4)
だって僕は、この死と隣り合わせの状態でアイツのことを思い出すと言うことは?
僕はどうやらアイカに未練がタラタラあるようで御座います。
いくら僕が強気な口調──荒々しい言い回しでアイカのことを罵ろうが。
やはり僕の初恋、初めての女性、妻だったから。
本当に情けないことだけれど。
バツイチ経験のある男性だったら、そんなものだよね?
女性よりも、男性の方が未練がましいと言う話も聞くしね。
それに?
第二の人生と呼ばれる齢で。
僕の何が、体力の衰えと共に使用不能になり、一番寂しくなる年齢五十歳くらいで。
『健太は駄目だからもういらない。神殿から出て行って!』とか?
アイカとウォンがヒソヒソと内密に、じゃないか?
吠えに! 吠え! 泣きながらイキ! 言っていた!
僕を殺傷する計画──。
『健太、悪いのだけれど死んでくれる?』と。
齢をとったところで言われるのも嫌だから。
僕がまだやり直しができるところで密談を聞いたからよかったのかも知れないね? ッて。
僕本当に死ぬかもしれないからやり直すもないよね。
あぁあ……。
でも僕、本当に死ぬかもしれないと思えば。
アイカの顔ばかりを思い浮かべる。
だからまた僕の瞳は情けなく潤んできたよ。
でも僕が死んだら霊魂──霊子になるから日本に帰れのかなぁ?
もしも日本に帰還できたらお化けになって。
友人達の許に『恨めしや~』と言いつつ現れてやり。
僕には四人以上も美人の奥さんいたんだぞ!
僕はお前等と違って経験者──!
ド・ウ・テ・イ・君じゃないのだぞ!
どうだ! 凄いか! 良いだろう! と。
僕は友人達に、異世界ファンタジーなハーレム王になれたことを自慢するのもいいかも知れないね? と。
僕はこんなくだらないことを考えては苦笑い、作り笑いを浮かべては。
自身に迫りくる死への恐怖を誤魔化し続けた。
◇◇◇




