第65話 あれから(1)
「あなた?」
「ん? 何、アイカ?」
「洗濯ついて行こうか?」
「うぅん、別にいいよ」と。
自身の首を振る僕だよ。
「でも?」
「大丈夫だから」と。
僕はあれから、あの日から。
そう、この集落始まっていらいの内戦と。
男王が家臣に討たれ、冥府へと旅立ってしまうと言った。
僕が産まれ育った世界ならば教科書に乗りそうな事件……。
う~ん、僕が物語を書いて後世に残そうかな? と思うような。
この軟弱、ひ弱な僕が少しだけだが英雄! 主人公になれた大事件が終わり一月以上の期間が過ぎたのだが。
あの日を境にアイカはこんな調子だった。
とにかく僕の御機嫌伺ばかりをアイツはしていた。
そう、只今二人──。
アイカとウォンから逃走を図っている僕だけれど。
実は昨晩も、今日の朝もアイカの奴は、僕の御機嫌伺をしてきては甘えていた。
アイツ自身は、僕のことが好きで仕方がないのだと装っては甘えていたよ。
だからあの時のことは許して欲しい。
アイカ自身もまさか、あんな大事件になるとは思っていなかった。
そう、アイツ自身が自分を含め妹達、従姉妹達……。
そして義母に対しての男性の執着心や嫉妬心があんなにも根深いものだと知らなかった。
気がつかなかった。
だから『ごめんなさいあなた』と、『ゆるしてくださいあなた』とね。
『もう二度とあなたを放置……。素知らぬ振りをしませんから許してください』、
『わらわの事を信じでお願い……。だからわらわの事を捨てて集落から出ていくなんて二度と言わないでお願いします』と。
アイカの奴は毎晩すすり泣きながら、あの時の失態と自分が犯した罪を許して欲しいと。
アイツは僕に告げていたからね。
「僕が一人でいくから。部屋でゆっくりとしているといいよ」
「……でも?」
「アイカ、僕のことは心配しなくていいよ。僕は家族を捨てて、この集落を飛びでるようなことはしない。だから心配しなくていいよ」
「本当に?」
「ああ、本当だよ……。僕の家族は君達だけ、なのだから。家族を捨てて集落を飛びでるようなことはしない。大丈夫さ」と。
僕がアイカに何度も根気よく説明をすれば。
「うん、分かった」と、微笑みながら頷き。
アイツはやっと僕の下半身……足などを抱き締め、甘える行為を辞め解放してくれる日々が続いていた。




