報道(下)
配信回になります。
「こんばんは~」
リビングの壁を背にして配信を始めれば、すぐに人数が増えて、みんなが待っててくれていたことが分かって嬉しい。コメントも沢山書き込まれているし、全部は無理だけど沢山拾いたいな。
コメント
:こんばんは
:1日に2回も配信ありがとう
:こんばんは。待ってました!
:お家?
「1日に2回も配信ありがとう、こちらこそ2回も見てくれてありがとうございます。待っててくれた人も多いですよね。皆さんありがとうございます。今は家ですよ」
コメント
:可愛い
:夜ご飯食べた?
「夜ご飯はうどん食べました。皆さんは何食べました?」
コメント
:一緒で嬉しい!
:焼肉食べてる
「あ、一緒の人もいますね。焼肉食べてる人は出先で見てくれてるのかな? アーカイブ残すので、無理しないでくださいね」
コメント
:優しい
:アーカイブありがとうございます!!
:昼間の髪型可愛かったからもっと見たかった
:美南ちゃん見てる?
:何時まで配信しますか?
「何時までにしようかなぁ……特に決めていないんですけど、1時間くらい?」
コメント
:美月ちゃんは?
:今日は何配信?
:記事の話は?
:長くやって欲しい
「美月はね、まだ帰ってきていないです。今日の配信は、まずは雑談配信ですかね。昼間の配信でも言いましたが、もしかしたら美月も一緒に映るかもしれません。見たくないっていう方もいると思うので、その時にはそっと画面を閉じて貰えたらと思いますので、よろしくお願いします」
コメント
:ひまみつ大好きです
:ひまみつファンとしては楽しみしかない
木村美南:ひまみつさんのおうちのペットになりたい。もしくは壁か床
書き込まれるコメントは、ほとんどが美月が合流することを望むもので、間に合って美月が了承すれば一緒に配信をして問題なさそう……ん?
「なんかすごいコメントあるなって思ったら美南ちゃんじゃん。ペットって、最後の収録のやつ? でもペットは美南ちゃんじゃなかったよね? 壁か床はもうさ……落ち着かないから却下」
コメント
:草
:壁か床は草
:やっぱり居たか
:美南ちゃん落ち着け
:壁か床w
木村美南:あの時は柚葉さんに負けました
「やっぱりそうだよね。そっか、柚葉ちゃん選んだっけ。というか、あれ勝ち負けだったんだ……」
コメント
:最後の収録ってなに?
:冠番組かな
:メンバーの中で選ぶなら、の回答の話?
:柚葉ちゃんに負けた美南ちゃん
木村美南:愛が足りないのか……
コメント欄も盛り上がっていて、毎回コメントして盛り上げてくれる美南ちゃんに感謝。
「そうそう。最後の冠番組収録で、質問コーナーみたいなやつをやって。メンバーを当てはめるなら誰っていう質問でね。美南ちゃん、愛は足りてます」
コメント
:美月ちゃんに怒られるぞ
:どちらかというと重い方
:恋人に美月ちゃん選んでたよね
:陽葵ちゃん冷静w
:美月ちゃんまだ?
コメントで美月に関する内容が目立つようになってきたな。美月は予定通りなら、仕事が終わってる時間だと思う。
30分ほど雑談をしていれば、玄関が開く音がして、静かに美月が部屋に入ってきた。私と目が合うと、目を細めて笑ってくれて、本当にその表情が好きすぎる。
声は出さずに手を洗いに行った美月を見送ってコメントを見れば、私の視線で気がついたのか、美月関連のコメントが沢山目に入ってくる。
コメント
:視線の先に美月ちゃんいる?
:美月ちゃん帰ってきた?
:笑顔可愛すぎない?
「皆さん、よく気が付きましたね。美月が帰ってきまして、今は手を洗いに……あ、戻ってきた。美月、お疲れ。おかえり」
「陽葵ちゃんもお疲れ様。ただいま」
「配信出来そう?」
「うん。でも映っちゃって大丈夫?」
「大丈夫。最初の方に、見たくない人は閉じてねって伝えてあるから」
「最初から見られなかった人もいると思うから、もう1回伝えておいたら?」
「そうしようか。この後からは美月と一緒に配信しますが、見たくないっていう方はここまでで、画面を閉じて貰えたらと思います。ご視聴ありがとうございました! またねー!」
コメント
:推しのおかえりとただいまが見られる日が来るなんて
:今来たけど終わり?
:第1部終了だね
:2人とも声が優しい
:てぇてぇ
:おかえりとただいまが自然すぎる
:カップル配信はここですか?
「今来た方ごめんなさい。私一人の配信は終わりで、これからは美月と2人でお送りします。美月、お待たせ」
少し時間を置いて、隣をぽんぽんと叩いて呼べば、隣に座ってくれたから、ここからは2人で。
「陽葵ちゃんファンの皆さんこんばんは。山内美月です。お邪魔します。え、こんなに」
「ほとんど減ってないし、むしろ増えてるからね」
「うわー、発言に気をつけなきゃ」
「あ、アーカイブも残すから」
「……了解です」
「かわい」
神妙に頷く美月、可愛すぎない? 思わず声が漏れたわ。
コメント
:ぽんぽんってしてるの可愛い
:早速ご馳走様です
:揃った!!
:この並び自然すぎ
:ひまみつてぇてぇ
:美南ちゃん無事?
:記事の話は?
「美月も合流したことだし、コメントにもある、記事の話ね。お昼の配信見ていない人は何の話か分からないと思うので補足をすると、私がグループを卒業した後から美月と一緒に住んでいまして。後ろ姿で男性と勘違いされたのか、詳細は分からないのですがマンションに入るところを撮られて熱愛報道が出ちゃったんですよね。心配をかけてしまってすみません」
「相手が私で大変申し訳なく……」
「私は美月が相手で嬉しいけど?」
「……何言ってるんですか?」
動揺しすぎたのか真顔になっちゃってるよ? 可愛いけど。
「こんな可愛い子と熱愛なんて、ファンのみんな、羨ましいでしょ? 場所変わってって? 変わりませんよ」
「陽葵ちゃん、それ陽葵ちゃんに向けてのコメントじゃないと思う。私に言われてるんじゃ……?」
コメント
:ほんと仲良いな
:記事、事実だよな
:陽葵ちゃん絶好調だな
:困り顔の美月ちゃんかわいい
「皆さん、写真見て分かりましたか?」
コメント
:分かった
:もちろん分かった
:似てるなとは思った
「分かった方が多いかな? まぁ、私と美月がよく一緒にいる事なんて皆さん知ってますもんね。これからも一緒ですけど。ね、みつきたん?」
「え、何この羞恥プレイ……」
コメント
:プロポーズかな?
木村美南:あぁぁぁぁぁ
:グループの時から公認だったもんな
:陽葵ちゃんの可愛さえぐい
:美月ちゃんがんばれ
:美南ちゃん発狂w
:熱愛報道、あってたんじゃ?
:どっちから一緒に住もうって言ったの? いつ言ったのかも知りたい
「一緒に住もうって言ったのは私からですね。言ったのは、私のソロコンの1週間後くらいだよね?」
「うん。それくらいだったと思う」
コメント
:陽葵ちゃんからなのは解釈一致
:美月ちゃんからなわけない
:陽葵ちゃんからなのは知ってた
:ほら、美月ちゃんはヘタレだから……
:そんなに早くから⁉︎
:思った以上に前だった
「なんか、皆さんにディスられてる……」
コメントを読んで、美月が思わず口に出していて、拗ねていて可愛すぎる。
「拗ねない拗ねない」
「拗ねてません」
コメント
:草
:説得力なくて草
:プロポーズの言葉は?
:拗ね美月ちゃん可愛い
:寝室は一緒?
「寝室は一緒? だって。ふふ、どうでしょうね?」
「別です」
え、それ拾うとか正気? とばかりに冷たい視線が……ごめんって。プロポーズの言葉か迷ったんだけど、そっちの方が盛り上がったかな? まぁ、コメントも盛り上がってるし、良しとしよう。
「即答……もうちょっと悩も? コメントで、一緒でしょっていっぱい来てるよ」
「いやいや、皆さん私を信じてもらってもいいですか?」
「みつきは照れ屋さんなのでね」
「照れてません」
「みつきたん、こっち見て言って?」
「照れてませんー! ……そもそもなんで沢山あるコメントの中から拾うかなぁ」
「みつきたんはどんな反応してくれるのかな? って思って」
「ふーん」
スン、とした表情すら可愛くて仕方がない。頭撫でたら怒るかな? 撫でちゃお。
コメント
:ひまみつてぇてぇ……
:てぇてぇ
木村美南:えっっっ!! しん、しつ……!?
:美南ちゃん生きてる?
:ひまみつ好き!!
「お、ひまみつ好き、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
ちょっと拗ねてるのに、ちゃんとお礼を言うところは律儀だよね。
コメント
:美月ちゃん素直w
:明日は早いの?
:今度カラオケ配信してほしい
:陽葵ちゃんギター弾いて歌って
「明日はね、残念なことに早いんですよ。寝坊しないように早く寝ようと思います。カラオケ配信ね、いつかやりたいけどなかなか……美月も一緒にしよ?」
「いや、私はいいよ。陽葵ちゃんギター弾いて歌って、だって。どう? 持ってこようか?」
「いいの?」
「うん。どれがいい?」
「んー、昨日弾いてたやつにしようかな」
「分かった。少し席を外しますね」
コメント
:陽葵ちゃんの誘い方可愛すぎ
:本当に一緒に住んでるんだ
:昨日も弾いてたんですね
:推しカプが尊い……
:美月ちゃん優しい
:最高
:これもう付き合ってるやつ
:ひまみつてぇてぇ
:毎日弾いてる?
ギターを取りに行ってくれた美月を見送ってスマホを見れば、一緒に住んでいることを実感した人だったり、私たちのやり取りを喜んでくれている人のコメントが目に入る。
「一緒に住んでますよ〜昨日も弾いてましたし、なんだかんだで毎日触ってますね。やっぱり上手くなりたいので」
コメント
:改めて聞くとやばい
:一緒に住んでるというパワーワード
:偉い
:充分上手いと思う
:ライブのギターソロかっこよかった
「ギターソロね、良かった、って沢山言って貰えたんですけど全然まだまだで……バンドメンバーさんとかね、本当にお上手で。日々勉強させてもらってます。あ、美月ありがと」
「うん」
美月が戻ってきて、ギターを渡してくれた。
「何がいいかな?」
「最近よく弾いてるやつは?」
「いいね」
美月がスマホの位置を調整して、私だけが映る。美月は自分のスマホで配信をつけていて、そっちでコメントを見るみたい。
配信で歌うのは緊張するな、と思っていたけど、美月が横にいてくれるから普段と変わらない感じで、何曲か歌った。間違えたところもあったけどそこそこ上手く歌えたんじゃないかと思う。
「ちょっと間違えちゃった」
「今日も最高でした。間違いも、生歌ならではだよね。コメント、褒め言葉しか無かったよ。ほら、今も」
「へへ」
コメント
:可愛すぎる
:上手すぎ
:隣で聴ける美月ちゃん羨ましすぎる
:陽葵ちゃん褒められて照れてる? 可愛い!
:美月ちゃん映って
:ライブ行きたい!
:可愛い
:大好き
「皆、可愛いって」
「可愛かった?」
「うん。かわいい」
「え……素直」
「陽葵ちゃんは可愛いし、かっこいいよ」
照れたように笑う美月が映ってなくて良かった。
コメント
:えっっっ
:声が優しすぎ
:すき
:あっっっま!!
:美南ちゃん無事?
:何この2人尊い
:美月ちゃんってこんなに優しい声出すんだ
:上目遣いは反則
:何時まで配信してくれますか?
「まだまだ続けたい気持ちはあるのですが、いい時間なのでこの辺で終わりたいと思います。美月、もう少しこっち来て? 次いつになるかは分かりませんが、また配信しますので、良かったらまた来てください」
「ありがとうございましたー」
コメント
:配信ありがとう
:無邪気に手を振ってる美月ちゃん可愛い
:終わらないで
:また美月ちゃんと配信してくれますか?
「皆さんが望んでくれるなら、美月とまたやります。ね?」
「そうですね……ご要望があれば、また」
コメント
:需要しかない
:期待してます
:嫌な人は見なければいい
:また見たい
木村美南:尊死
「それでは、今日はありがとうございました。おやすみー」
「おやすみなさい」
配信を切って、ちゃんと終了になっているのを確認して美月を見れば、お疲れ様、と柔らかく微笑んでくれた。
「陽葵ちゃん、お風呂まだでしょ?」
「まだ。一緒に入ろ?」
「うん。用意してくるからちょっと待っててね」
なんだか美月が素直。甘やかしてくれようとしてるのかな……?
「陽葵ちゃん……? 甘えたなの? かわいい」
戻ってきた美月に抱きついて擦り寄れば、抱きしめ返してくれて愛しさが募る。美月と過ごす時間は、何よりも私の支え。これからもずっと、そばで笑っていてね。
お読み頂き、ありがとうございました!




