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アイドルの恋愛事情~アイドルカップルの日常~  作者:
番外編

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3 .誕生日(陽葵)

「ただいまー! あ、ちょうどお風呂上がり?」

「おかえり。うん。今出た所」


少しのんびりして待っていたけれど、美月はまだ帰って来なさそうだから先にお風呂に入ることにして、ちょうど出たところで帰ってきた。

リュックを置いて手を洗って戻ってきて、持ってきたタオルで髪を拭いてくれる。帰ってきたばかりなのに甲斐甲斐しい。


「ありがと」

「いいえ。24歳最後の陽葵ちゃんのお世話ができて光栄ですよ」

「ふふ、なにそれ」


自分で丁寧にブローまでして艶々になった髪を満足そうに撫でながら優しく見つめてくれる。


「あと1時間しかないから、急いでお風呂入ってくる。起きててね?」

「うん。行ってらー」


25歳になった瞬間にお祝いしてくれるつもりなのか、バタバタとお風呂に向かっていった。美月はお風呂の時間が短いからそんなに慌てなくてもいいのに。


「起きてるー??」

「ふふ、そんなに急いで出てこなくても起きてるよ」


まだ10分くらいしか経ってないんじゃないかな? タオルで髪を拭きながら出てきて、私を見て安心したような顔をする。


「だって陽葵ちゃんすぐ寝ちゃうもん」

「うわ、信用ないなー」

「それはそうなるよね。何回起こしたことか……」


うん、それはごめん。でもついソファで寝ちゃうんだよね。サイズ感もちょうどいいし。

ソファでのんびり過ごしながらも、美月はチラチラと時間を気にしている。


「陽葵ちゃん、25歳おめでとう。いつもは言えないけど、好き。……大好き。私を選んでくれてありがとう」


そろそろ日付が変わるな、という頃にじっと見つめられて、日付が変わった瞬間に気持ちを伝えてくれた美月に愛しさでいっぱいになる。


「私の方こそ……ありがとう。私も大好きっ!」


言葉では表せなくて、いつもみたいにぎゅっと抱きつけばしっかり受け止めてくれた。


「可愛い……! えっと、プレゼントなんだけど、色々迷って……今年はエステチケットにしてみた。って言っても私はどこがいいとか知らないから凛花さんに相談して……芸能人も多く行ってるみたいで、凛花さんのお墨付きだから大丈夫だと思う」


凛花はグループ1女子力が高いもんね。凛花にどんな顔して相談したのかな、って考えたらにやけてしまう。沢山悩んでくれたんだろうなって思うとそれだけで嬉しい。


「ありがとう。美月からなら何でも嬉しい」

「うん、きっとそう言ってくれるだろうな、とは思ったんだけど。少しゆっくりするって言ってたし、今なら行く時間あるかなって」


確かに、今までならそんな時間は無かったけれど今なら時間がある。せっかくだし早めに行ってこようかな。


「近いうちに行ってみるね」

「そうして。あと、明日一緒に過ごせなくてごめん」

「今一緒に居てくれるだけで充分」


昨年はちょうど同じ仕事で一緒に居られたけれど、今年からはそうはいかないもんね。

仕事なのは美月のせいじゃないのに申し訳なさそうにしてくれている。そんなに気にしなくていいのに、美月の性格上気にするんだろうな。


「美月、明日も早いでしょ? もう日付も変わったし、寝る?」

「うん、そうだね」


寝室に移動してベッドに横になると、美月から抱き寄せてくれる。甘やかしたいと思ってくれているのか、美月の腕の中で眠ることが多い気がする。


包み込まれると安心して眠れるし、毎日こうしていたら数日離れただけで寂しくて仕方なくなっちゃいそう……

ほんの少し前までは別なことが当たり前だったのに、もう戻れそうにない。


「陽葵ちゃん、寝ちゃう……?」

「ん? 眠くないの?」


美月は明日も早いし寝ようと目を閉じれば遠慮がちな声がした。眠れないのかな?


「陽葵ちゃんが嫌じゃなければ、私がシたいなって。あ、でも陽葵ちゃんの誕生日だし、好きな方でいいんだけど……」


え、お誘い?? 美月から?? しかも私が受けが嫌って言ったら抱いていいってこと? 

まさかこんなことを言われるなんて思わなくて思考が追いつかない。


「……それは誘ってるってことでいいの?」


寝ようなんて気持ちはもうどこかに行ってしまい、美月を見れば恥ずかしそうに頷いてくれて理性が飛びそう……

このまま抱きたいところだけれど、この前もシてくれようとしたのに襲っちゃったもんね。


「シてくれる?」

「……っ!! うん」


嬉しそうに頷いてくれて、可愛さに思わず頬が緩む。


「上目遣いやば……陽葵ちゃん可愛い……どうしよ」


今日はどうやって触れてくれるのかなって見つめれば若干挙動不審になっているし、無意識だと思うけれど心の声ダダ漏れ。美月から、って卒業するって伝えた日以来? なんだか私まで緊張が移った気がする。


「えっと……脱がせていいですか」

「ふふ、どーぞ。ね、今日緊張しすぎじゃない?」

「なんだろ、心臓やばい」


情けな、って照れ笑いをしていて素直で可愛い。


「私も一緒。なんか緊張が移ったんだけど」

「あ……ほんとだ。陽葵ちゃんも早い」


手を取って胸元に触れさせると、自分だけじゃないからか少しほっとしたような気配がした。


優しく触れてくれて、大切にされてるなっていつも感じる。今日は誕生日だからかずっと優しくて、ひたすら甘やかしてくれた。心地の良い疲れでこのまますぐにでも眠れそう。

 

「ひまり……愛してる」


……ん?? 呼び捨てだし、それに愛してるとか……え、夢??

美月の腕の中で気持ちよく微睡んでいたけれど、聞こえてきた言葉に一気に目が覚めた。


「っ?! 今のって……」

「え、待って、陽葵ちゃんもしかして起きてた? 聞こえた?!」

「半分寝てたし夢かなって……」


聞こえた? ってことは本当に言ってくれたってことだよね。うわ、意識あってよかった……聞き逃すところだった。


「夢見てたんだねー」

「いや、さっき自分で聞こえた? って言ってたし」

「そんなこと言ってませーん」


じっと見つめれば、手で顔を覆って隠されたけれど、隙間から赤くなっているのが見える。


「ね、もう1回言って?」

「ぅえ?! もう1回とか恥ず……じゃなくて、何を?!」


普段からも呼び捨てで呼んでくれてもいいのに。でもこういう時だけって言うのも破壊力が……


「ちょっと陽葵ちゃんニヤニヤしすぎ……!」

「ふふー、ほら言ってごらん?」

「言いませーん!」


ああ、本当に可愛い。こんな機会滅多にないし、もうちょっと押してみようかな。


「だめ? 今日誕生日だし……」

「ぐっ……」


ちょっと卑怯だけれど許してね。ちらちら様子を伺えばしばらく唸っていたけれど、大きく息を吐いて見つめてくれる。


「陽葵、愛してる」

「ありがとう。私も愛してるよ」

「うん……あー、まさか聞かれてたとは……恥ずかしっ!!」


私をぎゅっと抱きしめて首筋に顔を埋めてくる美月がただただ愛しい。素直じゃない美月も、真っ直ぐ目を見て気持ちを伝えてくれる美月も愛してる。

最高の誕生日プレゼントをありがとう。



工藤 陽葵

25歳になりました。今年も沢山のおめでとう、の言葉をありがとうございます。皆さんからの投稿の一つ一つをじっくり読ませていただいています。

今年も沢山のいい報告ができるように頑張りますので、引き続き応援頂けたら嬉しいです。

写真は卒コンのオフショットです。

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黒狼と銀狼
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