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勇者先生 ~教え子が化物や宇宙人や謎の組織と戦っている件~  作者: 次佐 駆人


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41章 惑星ドーントレスの危機 04

 モンスターの大氾濫が起きた、惑星ドーントレス。


 勇者艦隊はその大気圏に突入して、今は大海原の上空を500メートルくらいの高さで飛んでいるところである。


 モニターには前方の景色が映し出されているが、青い海のはるか彼方に陸地が見えてきた。それは前回俺がこの星に来た時にお邪魔をした、総統のいる国がある大陸である。

 

 当然ながら海岸沿いから都市は広がっていて、それが内陸まで続いている。オーバーフローが起きたからといって都市部すべてがモンスターに襲われているわけではないので、このあたりはまだ平和な様子である。


 ただよく見ると路上の車の数は少なく、緊急車両らしきものが停まっているのが目につく。オーバーフローのニュースは大陸全土に広がっていると見るべきだろう。


 勇者艦隊は海岸沿いから内陸部上空へと進んでいく。地上の人間から見たら、巨大戦艦2隻を先頭にした艦隊が頭上を通りすぎるわけで、いったいどういう気持ちで見上げているのだろうかと少し気になったりもする。


 惑星に下りてから、青奥寺たちは全員がモニターにかじりついている。


 そのモニター上に急にいくつかの四角い枠が出現し、その場所が拡大表示された。


『前方に飛行型のモンスターを確認いたしました~。以前接触したワイバーン、それとドラゴンだと推定されまっす』


『ウロボちゃん』の報告通り、映し出されているモンスターは羽根の生えた巨大トカゲの『ワイバーン』と、それに前足と角のたてがみを追加したファンタジーモンスターの雄、ドラゴンである。


「こりゃかなり高レベルのダンジョンがオーバーフローを起こしたな」


『ワイバーンはともかく、ドラゴンは一般の駆逐艦では火力負けすると思いまっす』


「俺たちのは大丈夫だよな?」


『「魔力ドライバ機関」で駆動する「マギシールド」と「マギレーザー」を完備しているので楽勝でっす』


「頼もしいな」


『ではここから、各艦割り当てられた都市へと向かいまっす。よろしいでしょうか~?』


「やってくれ」


 指示をすると、サブモニターに映った宇宙戦艦たちがそれぞれ左右に分かれて飛び去っていく。『ウロボロス』と行動を共にするのは『ヴリトラ』だけである。俺たちが向かうのは最大の激戦区だが、この2隻は戦闘能力が他の船と段違いなのでそれで十分なのだろう。


「先生、モンスターがこちらに気付いたようですよっ」


 双党の言葉に、モニターに目を移すと、100匹近いワイバーンと10匹前後のドラゴンがこちらに向かってきているところだった。


 俺たちにとってはそこまで驚くものでもないが、この惑星の人間にとっては悪夢みたいな光景だろう。


「『ウロボロス』、問題ないな?」


『余裕でっす』


「じゃあやってくれ」


『了解でっす。マギレーザー準備完了、自動照準よっし。攻撃開始~』


 モニター上に映るワイバーンたちに照準マークがつくと、そこに向かって『ウロボロス』の船体のあちこちに設置された半球状のドームから赤いレーザーがパパパッと閃く。


 するとワイバーンたちは瞬時に穴だらけになって、黒い霧に変化しながら墜落していく。


『ウロボロス』と『ヴリトラ』の弾幕は凄まじく、100匹はいたワイバーンたちは瞬く間に全滅してしまう。


 ドラゴンはさすがに多少耐えたが、それでも狙われてから10秒は持たずに消滅する。


「うわ~、なんかモンスターが可哀想になるくらい一方的ですね。前より確実に威力上がってますし」


「狙いも正確すぎまぁすね。ほぼすべての攻撃が命中しているように見えまぁした。レーザーだから偏差射撃も必要なさそうでぇす」


 双党とレアが感心したように腕を組みながら、そんなことを言い合っている。ちなみに偏差射撃というのは、相手の動きを予測した射撃のことである。「レーザーと違って実弾は『遅い』ですから、弾を置いておくみたいな感じでぇすね」とのことだが、よく考えたら魔法も同じだったかもしれない。


 ともかく俺が見ても酷い戦いだが、こっちは50兆円の巨大戦艦2隻である。これくらいはできて当然だろう。


『ウロボロス』はそのまま直進し、ほどなくして近未来的な巨大都市の上空に到着した。


 モニターに映る街並みは、たしかに俺が以前来たことのあるものであった。総統の居城ともいえる超高層ビルを中心に巨大ビル群が周囲に並ぶその景観は、地球では決して見られない規模のものであるが、今はその巨大都市も3割ほどが瓦礫の山と化していた。


 ビル群も多くは破壊の跡が見られ、さすがにすぐに崩れ落ちそうなものはないものの、ミサイルの雨でも降って来たのかと思われるくらいである。


 総統ビルの壁面からはいくつも半球形の銃座のようなものが突き出ているが、それもほとんどが破壊されていた。


「これは思ったよりも酷いな。地上はどんな様子だ」


『ドローンを射出して情報を収集しまっす』


 円筒形のドローンが、『ウロボロス』と『ヴリトラ』の側面から多数発進して地上へと降りていく。


 モニターにいくつかの枠が現れて、ドローンの映像を映し出す。


「へえ、地上はモンスターの楽園か。これは思ったより楽しめそうだね」


 言葉の割に、絢斗の表情は多少硬くなっていた。


「これは……どれだけの人が犠牲になったのでしょうか……」


 こちらは三留間さんの感想だが、絢斗を含めて全員思ったことだろう。


 モニターに映っているのは、街のあらゆる場所に徘徊しているモンスターの姿であった。


 懐かしのゴブリンやオークといった人型のものから、ヘルハウンドやカトブレパスなどの獣系、ハーピーやラミアといった半人半妖のもの、バジリスクやサラマンダーの爬虫類系と、有名どころがわんさといる。パッと見ただけで百はいるので、この街全体となると何匹いるか予想もつかない。


 勇者をやっていた時はモンスターに全滅させられた村や町はそれなりの頻度で目にしたが、異世界にここまでの巨大都市はなかったし、ここまでのオーバーフローもそうは見ないので、俺としてもかなり眉間に力が入る光景である。


 しかも問題は、それらモンスターが建物の間や瓦礫の隙間などにもいることで、空から魔法で狙撃するだけでは追いつきそうもない。


 顔をやや青ざめさせた青奥寺が、俺の隣にやってくる。


「先生、どうするんですか?」


「やれる奴は上空から狙撃して、あとは地上戦しかないな。ルカラス、地上の方の指揮は任せるぞ」


 メンバーの中で俺を除けば唯一平然としているルカラスは、それでもさすがに真面目な顔でうなずいた。


「うむ、それは任せよ。ただハシルよ、面倒なモンスターもいくつか見える。女子たちには状態異常除けを持たせた方がよいだろう」


「確かにな」


 俺は『空間魔法』からアクセサリーを人数分出して、それを全員に配った。


「それは毒とか眠りとか石化とか、そういうヤバい攻撃を防ぐお守りだ。ただ万能ってわけでもないから、ルカラスの話をよく聞いてなるべく危険な攻撃は回避行動を取るように」


「はいっ!」


「『ウロボロス』、アンドロイド兵は何体出る?」


『「ウロボロス」「ヴリトラ」それぞれ1000体ずつ出せまっす』


「そんなに」


『ウロボロス』は乗組員1200人で運用する船だったはずなので、1200体のアンドロイドは作っていておかしくはない。ただクルーをそのまま兵士には回さないだろうから、さらにプラスして1000体を兵士用として作っていたのだろう。


 ちなみにウチのアンドロイド兵は一般的な銀河連邦の戦闘用アンドロイドの50体分の働きをするそうなので、2000体いたら10万体の戦闘力になるのだが……うん、考えないようにしよう。まあ新良さんは睨んできてますけどね。


「ちなみに人が集まっている場所はあるか」


『地下シェルターが多くあって、そちらに避難している人間が多いようでっす。それから軍事基地など、いくつかの施設に集まっているのも確認できますね~。そちらは現地の軍や警察機構がモンスターと戦っているようでっす』


「じゃあその軍事基地や施設は『ヴリトラ』の方で助けてやってくれ。おっと、そういえば転送はできるのか? 転送を禁止してる星のはずなんだが」


『転送妨害フィールドは存在しないので自由に転送可能でっす』


「じゃあアンドロイド兵をどんどん降下させてモンスターの駆除を始めさせてくれ。ルカラスたちは遊撃、逃げ遅れた住民の救助とか強力なモンスターの駆除とか適当にやってくれ」


「承知した。娘たちよ、行くぞ」


「はいっ!」


「俺は先にダンジョンを全部潰してくる。じゃあ行動開始だ。『ウロボロス』、俺たちを地上に転送してくれ」


『了解でっす』


 俺の指示と共に、その場にいた全員が転送の光に包まれた。

【『勇者先生』5巻発売の告知】

本日11月25日、『勇者先生』5巻が発売となりました。

アメリカンな転校生レアが目立つ表紙が目印です。

内容はいつもの通り、Web版の全体的な改稿+エピローグ、書き下ろしの追加となっております。

イラストレーターの竹花ノート様のイラストがいつも以上に美しい一冊ですので是非よろしくお願いいたしいます。

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