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勇者先生 ~教え子が化物や宇宙人や謎の組織と戦っている件~  作者: 次佐 駆人


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38章 出張、未だ終わらず  10

 エルフお嬢様を乗せた黒塗りの車とその一行は、凄いスピードで道路を走っていった。


 なんとその車列が近づくと、他の車はどうやら自動的に道路脇に停車するようになっているらしい。さすが独裁者の身内となると扱いが違う。


 お嬢様一行の車列は一切減速することなく件の超高層ビルの元へと走っていき、そして正面エントランスに横づけした。


 車からボディーガードとお嬢様、そしてお付きのメイドが下りてきて、そのまま玄関から入って行く。


 下から見上げる総統の住む超高層ビルは、圧倒するほどの威容を誇っていた。


 そもそもこのビルの周囲半径200メートルほどはビルの敷地になっていて、美しい庭園になっていると同時に、周囲は城壁で囲まれていて、一般人が入れないようになっている。


 俺の『罠感知』スキルが凄まじく反応しているので、監視カメラや防御機構も山のように設置されているようだ。


 さらによく見るとビルの壁面にいくつもの半球状のドームが並んでいるのだが、おそらくそれは戦艦についている砲塔と同じものだろう。いざとなったら中から砲身がでてきて射撃ができるに違いない。つまりビルに見えて、この建物は城でもあり、要塞でもあるということだ。


 しかしそれ以上眺めいている暇はない。俺はお嬢様エルフ一行の後をついて、ビルの中に侵入した。


「リ・ザ、お父様はどこ? メンタードレーダ議長は?」


「お待ちください。ただいまメイド長に確認を取りますので」


 ロビーで立ち止まったエルフお嬢様の質問に、お付きのメイドが答えて腕のブレスレットで連絡を取る。


「総統閣下は執務室でお仕事をなさっているようです。メンタードレーダ議長は70階の来賓の間にて休まれているようです。30分後に一度面会をされるそうですが、本格的に対談をするのは明日のようです」


「そう。ならばまずはお父様のところへ行きましょう」


「お待ちください。総統閣下のところには、今ゼンリノ師がいるようです」


「ゼンリノ師ですって? どうしてお父様はあんな胡散臭い外惑星人を重用しているのかしら」


「お嬢様、お気を付けください。ゼンリノ師は我が国、我が星にとって重要な方です。お嬢様もそれはご存じでいらっしゃいますでしょう」


「ええまあ。あの『アビス』とかいうのに対応できたのはゼンリノ師のおかげというのは知ってるわ。だからってそれ以上お父様の仕事に口出しするのはどうかと思うのだけれど」


「総統閣下は、ゼンリノ師にまだ協力してもらう価値があるとご判断なさっているのでしょう。とにかく今は執務室へ入ることはできません」


「仕方ないわね。では来賓の間に行ってみましょう。メンター人は近くまで行けば話ができると聞いてるし」


「しかし……」


「近くに行くだけよ。付いてきなさい」


 そう言い切ると、エルフお嬢様はつかつかと奥のエレベーターの方に歩き始めた。


 しかしいい話が聞こえてきたが、気になるのは「ゼンリノ師」とやらか。


 確かに上の方から魔王軍四天王に匹敵する強烈な気配が漂ってくるのだが、それが「ゼンリノ師」の可能性は高い。やはり異世界で見た、『魔人衆』の一人と思われるあのスキンヘッドの大男がいるのだろうか。どちらにしろそいつに俺の気配を掴まれるわけにはいかない。ここからは少し慎重に行くか。


 エルフお嬢様についていって、70階までエレベーターで上る。しかしこのビル、監視カメラがアホみたいに多い。独裁者の悲哀を感じるところではある。


 70階は非常に高級そうなフロアだった。廊下の壁の質感まで下のロビーとは数段レベルが違う。床なんて足が埋まりそうなほどふかふかのカーペットが敷かれている。俺は微妙に飛んでいるので大丈夫だが、透明人間がいたとしても踏み跡で一発でバレるだろう。


 その廊下を、メイドを連れたエルフお嬢様が歩いていると、屈強そうなエルフ警備員が2人、礼をしつつも立ちはだかった。


「申し訳ありませんお嬢様。総統閣下よりお嬢様を含め誰も通すなと命じられております」


「お役目ご苦労さま。でもここに立っているだけなら問題ありませんわよね?」


「ええ、それくらいなら……」


「なら結構よ」


 エルフお嬢様は一歩下がって、その場で目をつぶってなにかをつぶやき始めた。


「メンタードレーダ様、お答えください。メンタードレーダ様」


 などと口にしているので、どうやらメンタードレーダ議長と念話で話そうとしているようだ。そこだけ見れば微笑ましいシーンではある。


 一方それとは別に、俺の頭の中に議長の声が響いてきた。


『そこにいるのはミスターアイバですね。もうここまでいらっしゃったのですか』


『ええ。補佐官たちはとりあえずバスに乗せてこの近くまで来るように手配してあります』


『さすがですね。例の研究所とやらはどうでしたか?』


『「洗脳チップ」というのを研究していたようです。「洗脳チップ」は以前「フィーマクード」が『深淵獣(モンスター)』を操るのに使っていたもので、どうやらこのドーントレスが「フィーマクード」、ひいては「魔王」とつながっているのは確定的となりました』


『やはりそうですが。近くに「魔王」の気配も感じますし、面倒な話になってきましたね』


『今回は議長たちを助けることを優先しますよ。銀河連邦としても、今回の件でこの星を正式に調べることもできるようになるでしょうし』


『もし帰れたら最優先で対応いたします。銀河連邦としてもいろいろと思惑が絡みそうな案件ですけれどね』


『お疲れ様です。ところでドーントレスの総統閣下のご息女が議長とお話をしたがっているようです』


『ああ、なにか呼びかけを感じているのはそういうことですか。面白い方のようですね。少し話をしてみましょう。ミスターアイバとしては、なにか考えがありますか?』


『実はそのお嬢様を人質にして往還機を調達して、さらには「ウロボロス」を奪還しようかと考えているんですよ』


『なるほど、でしたら少し細工をしましょうか――』


 その後2、3打ち合わせをして、俺は通話を打ち切った。


 代わりにエルフお嬢様がビクッとなって、そしてすごく嬉しそうな顔でうなずきはじめた。どうやら議長が彼女に話しかけたらしい。


 まあこの後彼女には可哀想なことになるが、こちらは生きて親元に帰すつもりはあるので少し我慢してもらおう。もっともその後で、親元がどうなるかはこちらも保証はできないが。


 問題は「ゼンリノ師」とやらだな。奴がどう動くかでアドリブを強いられそうだが、こっちはいざとなれば倒せばいいただけだ。

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問題はお嬢様が素直に親元へ 帰るかどうか
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