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勇者先生 ~教え子が化物や宇宙人や謎の組織と戦っている件~  作者: 次佐 駆人


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37章 出張先、銀河連邦 16

 顔合わせの後は、すぐにホテルの高級レストランで夕食をとることになった。


 同席者は青奥寺たち4人とライドーバン局長だ。新良にとっては上司同席ということになるのでちょっと気を使うだろうが、情報交換も兼ねているので仕方ない。


 レストランのテーブルは隣同士が離れていて余裕があり、さらには防音装置によって周囲の音が聞こえない仕様になっていた。プライベートな話もできるという配慮である。


「先生先生、それでどんな感じだったんですか、銀河連邦評議会の議長って人は!?」


 注文が終わると、目を輝かせた双党がいきなり質問してきた。


「どんな感じと言われても、見た目以外は普通に話のできる人だったな。特に偉そうな感じもなくて、俺も緊張しないで済んだ」


「先生は誰が相手でも緊張しないから意味のない情報じゃないですか~」


「失礼な奴だな。これでも緊張するときもあるんだぞ。この間のバスケットのゴール下とかな」


「緊張するタイミングが意味不明で~す。で、見た目はどんな感じなんですか?」


 その質問には新良も少し興味を持ったようにこちらに光のない目を向けてくる。というかメンタードレーダ氏ってテレビとかに出ないんだろうか。


「ん~……簡単に言うと雲人間、か?」


「えっ、蜘蛛人間ですか? 手から糸とか出す感じ?」


「オウ、それはとても気になりまぁす」


 双党のボケはともかく、レアが反応するのに少し吹き出してしまった。まあレアの母国出身だからなその人だと。


「違うわ。空に浮かぶ雲の方な。なんていうか、人の形をした雲というか、煙というか、靄というか、そんな見た目なんだよ」


「なんですかそれ」


「身体が半分別の次元に入ってて、キチンとした実体がないみたいなことを言ってたな。さすがに俺も驚いたわ」


「???」


「それは本当に理解が及ばない感じですね。でも話はできたんですよね?」


 一瞬停止した双党に代わって、青奥寺が真面目な顔で聞いてくる。


「頭の中に声が響いてくるんだよ。クウコみたいな感じだけど、それも少し驚いたな」


「そんな不思議な人が銀河連邦にはいるんですね。璃々緒は知ってたの?」


 青奥寺が顔を向けると、新良は微妙に首を縦に振った。


「話だけは。メンタードレーダ議長はメディアにもほとんど出てこない人だから。メンター人は姿も声もメディア機材では捉えられない。直接会った人だけが彼の姿を見て、声を聴くことができると言われている」


「そういう不思議な人が議長をできるというのはすごいことね」


「メンター人は知性や精神が普通の人間より高次にあると言われているから、銀河連邦の議長をするならメンター人が適任とはずっと言われていた。ただメンター人は世俗のことにほとんど関心がないとも言われていて、滅多に星から出てこない。要請を受けて議長になったメンタードレーダ議長はメンター人の中では変わり者扱い……と本人は言っていたと思う」


「よく分からないが半分神様みたいな人なのかな。異世界には精霊っていうやっぱり人間と神様の間みたいな存在がいたが、それに近いのかもな」


「ルカラスさんとかクウコさんとかもそんな感じじゃないんですかっ?」


 双頭の指摘はなかなか鋭い。確かに聖獣やら神獣やらの括りに入るルカラスたちは、人間より神に近い存在かもしれない。


「あ~そうかもな。あの2人は寿命も長いし、人間よりは上位の生き物と言えなくもないか」


「それはどのような方たちなのかね? とても興味をそそられるのだが」


 ライドーバン局長が目を光らせる。さすがにそのあたりは聞き逃さないか。


「自分たちの仲間、と言っていいんでしょうか、ちょっと変わったのがいるんですよ。1人はルカラスといって、異世界出身のドラゴンという巨大な生き物なんです」


「ドラゴン? どのような生物なのだろうか」


 その問いには、新良がブレスレット端末から立体映像を表示させて答えた。


 卓上に表示されたのはモンスターのドラゴンだが、それはそれでなかなかに見ごたえがある。まあルカラスはそれよりはるかに神々しいのだが。


「ほう、なるほど、どこかの惑星に似た生き物がいて、はるか昔に絶滅したと聞いたことがあるな。だがこの生物は普通の生物ではないということだな?」


「そうですね。数千年生きていますし、人間と同等以上の知能を持ちますし、今はなんらかの術を使って人間の姿に変化しています」


「……ふむ、理解が追い付かんが、なるほど並の存在ではないということはわかった。クウコというのも同じかね」


「いえ、そちらは自分らの世界にいた存在です。普段は狐という動物の姿を取っていますが人間にも化けられますし、やはり数千年生きていて、メンタードレーダ議長の持つ精神感応に近い力も持ってますね」


「ミスターアイバの周りにはそういう存在が集まるということか。今回のルベルナーザの件といい、まったく驚かされてばかりだ」


 ライドーバン局長が重々しくうなずくと、なぜか双党が局長にすり寄って、


「それにいつも巻き込まれてるのが私たちなんですよ~。ひどいと思いませんか?」


 などと被害者ぶりはじめた。


「くくっ。ではミスソウトウをシラシェルまで連れてきたのはミスターアイバの罪滅ぼしかな?」


「いえ、これも無理やり連れてこられたんです。お前は俺のものだから来るのが当然だとか言って」


「かがり、調子に乗らない」


「ああ~」


 俺の代わりに青奥寺がこめかみをぐりぐりしてくれて、急に降ってわいた俺の冤罪は回避された。


 その割にはライドーバン局長は牙をむき出していたが、あれは笑っているのである。多分。


 それを横目に、新良がこちらに鋭い目を向けてきた。


「ところで先生、ルベルナーザ一家の件なのですが」


「なんだ?」


「ルベルナーザ一家の人間が『ポーション』を持っていたということは、彼らがすでにどこかでダンジョンを発見していて、それを利用していると考えていいのでしょうか?」


「そういうことだろうな。もしくは他にダンジョンを利用している個人なり集団なりがあって、そこから手に入れたという可能性もなくはないが」


「実際の問題として、それはどの程度の問題をはらんでいるのでしょう?」


「ダンジョンにもよるが、手に入る魔道具はそれなりに悪事に使えるものもある。ただ銀河連邦の技術を超えるものがあるかどうかは微妙だけどな。まあ『結界の魔道具』なんかは既存の武器に対して絶対的な防御ができたりするから、そこそこ使えるだろうけど」


「『ウロボロス』のように、魔力技術と科学技術を融合して新しい武器を作る可能性もありますね」


「あ~それもあるか。あとはやっぱりダンジョンが手に負えなくなった場合のオーバーフローだな。モンスターがあふれ出したらとんでもない被害がでるからな」


「オーバーフローが起こる可能性は高いと思いますか?」


「ボスで『ポーション』が出るダンジョンは最下級のやつだろうし、そもそもボスを倒しているわけだからそこは大丈夫だろ」


「なるほど。ということは、今回の件はとりあえずダンジョンが銀河連邦内で発生しているという事実が一番の問題なのですね」


「そうだな。ダンジョンがあるなら増える可能性もあるってことだからな。どこの星なのかは調べておいたほうがいいんじゃないか」


 などと話をしていると、ライドーバン局長が小さく「ふむぅ」と唸っている。


 まあ一見大変なことのようにも思えるが、明日の交渉によって『魔導ドライバ機器』の技術が手に入れば、銀河連邦の技術レベルならすぐに対応はできるだろう。問題はAランクSランクモンスターなんていうバケモノが出てきた時だが……それは応相談だな。


 と、そこでグラスに注がれていた水の水面がわずかに波立った。


 次いでレストランの屋内全体が振動すると、会場は多少ながら騒然となった。


 震度は3くらいで日本人としては騒ぐほどのものではないが、このあたりは地震が少ないのだろう。


「地震か……このあたりはほとんどないはずなのだがな。まさかこれもミスターアイバが起こしたのかね?」


 ライドーバン局長がそう言って牙を見せるが……多分それは冗談になっていない感じがするんだよなあ。

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