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勇者先生 ~教え子が化物や宇宙人や謎の組織と戦っている件~  作者: 次佐 駆人


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37章 出張先、銀河連邦 07

 さて、俺の銀河連邦出張の話は、『ヴリトラ』内であっという間に共有されてしまった。


 新良は当然のこと、青奥寺ら3人も連れていくという話をしたら、やっぱりというかなんというか、ほぼ全員が「行きたい!」と言い出した。


「今回は先方から最大5人と言われてるからダメだ」


「待てハシル、その中に我が入っていないのはおかしいであろう?」


 白銀髪の少女にして人化古代竜ルカラスがブレスを吐く勢いで迫ってくる。


「こっちでなにかあった時にお前には対応してもらわないとならないんだよ。俺を除けばお前が最強なんだから」


「そうは言うが、例の『応魔』がいなくなった今、我が出張るほどのものも出てはくるまい」


「今度はダンジョンが現れ始めてるだろ。もし間違ってデカいのが出てきたらどうするんだよ」


「むう……」


「お前にしか頼めないんだ。後で甘やかしてやるから」


 と言いながら頭を撫でてやると、「そこまで言うなら仕方ない。だが帰ってきたら添い寝だぞ」などと言いながら引き下がった。ふ、チョロいな。添い寝はしないけどな。


 ルカラスが諦めると、さすがに他の女子は諦めモードに入ったようだ。どうもルカラスは女子の間で一目置かれているらしい。


「お兄ちゃん、今回は諦めますけど、いつか連れていってくれますか?」


 こういう時に押しが強いのは山城先生の娘さんの清音ちゃんだ。おさげも可愛い初等部の女の子なのだが、勇者を手玉に取ってくる末恐ろしい一面がある。


「そうだね。『ウロボロス』が新しい航行機関を開発したら一瞬で行けるようになるから、そうしたら連れて行くよ」


「じゃあ約束です!」


 と小指を出してくるので懐かしの指切りげんまんをさせられてしまった。そういえば初等部の児童を見ていると、俺が子どものころの遊びとかが普通に残ってるんだよな。あれは不思議である。


 俺と清音ちゃんのやりとりを見て、新良が耳打ちしてくる。


「先生、そんな約束をして大丈夫ですか?」


「議長さんに頼んでみるさ。向こうには貸しがあるんだし、そのシラシェルという星に自由に行って遊んでいい権利くらいもらってもバチはあたらないだろう?」


「シラシェルのリゾート地のホテルは、最低ランクでも日本円で換算すると一泊50万円くらいですが」


「えぇ……」


 ちょっととんでもない話が出てきてしまったが、まあなんとかなるだろう。たぶん。


 ともかくほかの子たちにも後で連れていくということで、その場はなんとか収まった。


「ところで先生、その議長という人を信じて向こうの星に行って本当に大丈夫なんですか?」


 と鋭い意見を行ってきたのはボーイッシュバトルマニア少女の絢斗だ。中等部ながら中身はかなり大人で、勇者の俺ですら驚く時がある。


「そこは相手を信じるしかないな。銀河連邦はそのあたり信用できそうだし、向こうだって未知の力を持つ人間を初手で敵に回すことはしないだろう」


「確かに僕なら先生を敵に回すなんて絶対にしませんね。もっとも、向こうが先生の力を十分に理解しているとは限りませんが」


「窓口になってるライドーバン局長はよくわかってるはずだから大丈夫だ。なあ新良?」


「そうですね、少なくとも議長が先生に対してなにか工作を仕掛けることはないと思います。非常に特殊な種族の方で、理に合わないことは絶対にしない人物です」


「へえ。それは会うのが楽しみになるな」


「先生でも初めて見るタイプの人、というか存在だと思います。私ももし直接会うことができるなら、とても楽しみですので」


「そのような話を聞くと、ぜひともお会いしたくなってしまいますわね。璃々緒さん、そういう情報はここでは伏せておくべきですわよ」


 金髪縦ロールのお嬢様、九神が皮肉っぽく笑いながら言う。


 新良も「たしかに。今のは失言だったかもしれない」とすぐに認めたので、それ以上の話にはならなかった。これは九神のナイスフォローなんだよな。こちらも末恐ろしい未来の九神家総帥である。


 なお、技術顧問(?)として獣人族研究員のイグナ嬢は『ウロボロス』に乗っていくことが決まっているが、こちらは会談の場には出ないのでノーカンである。


 ともかくこれで『銀河連邦』への出張は決まった。


 後はどんな話になるのかと、それから勇者のトラブル体質がなにかを引き寄せないことを祈るのみだ。まあこんなことを祈ること自体、なにかを引き寄せそうなきもするのだが。




 出発当日。


宇宙戦艦『ウロボロス』の『統合指揮所』には、俺と青奥寺、新良、双党、レア、そしてイグナ嬢と『ウロボちゃん』が揃っていた。


 もちろんほかにアンドロイド少女クルーも15名ほどいて、それぞれ席について操作盤とにらめっこしている。


 今回は『ウロボロス』で開発された技術を渡すということもあり、新良の宇宙船『フォルトゥナ』ではなく、この『ウロボロス』で惑星シラシェルに向かうことになっている。


 なお有事の際に備えて、勇者コレクションである艦隊と『フォルトゥナ』は、俺の『空間魔法』に収納した。


「皆準備はできたな。じゃあ『ウロボロス』、航海について説明してくれ」


 俺が指示すると、銀髪猫耳アンドロイド少女『ウロボちゃん』が前に出て、正面大型モニターを指し示した。


 モニターには地球が映し出され、それがズームアウトし太陽系の全体図、そして天の川銀河の全体図に変化する。その銀河の間に一本の曲線が表示される。地球から銀河の中心を挟んで反対側に、中心部を迂回するように引かれた線である。


『こちらをご覧ください~。本艦はこれより地球を離脱、ラムダ航行により御覧のルートを進み、惑星シラシェルまで直行をいたしまっす。所要時間は約2時間になりまっす』


「ん? 新良、シラシェルって前に行ったファーマクーンより近いのか?」


「いえ、むしろ遠いはずですが……」


 あれ? 前にファーマクーンに行ったときは同じラムダ航行で12時間かかったはずなんだが。


「なあ『ウロボロス』、なんでそんなに早いんだ?」


『すでに本艦のラムダ航行装置は次世代型航行装置の機能を一部取り入れているのでっす。本艦に搭載されていたラムダ航行装置は、以前の8倍の速度が出まっす』


「えぇ……。それってキチンと試験運転とかしてるんだよな?」


『勿論でっす。むしろ安全性は改修以前より上がっていまっす』


「あっそう」


 う~ん、なんかもう勝手に強化されていってるなあ。


 まあいいか、俺が便利なようにしてくれるんだろうし。


『予定時刻よりは早く到着してしまいますが、惑星シラシェル付近宙域の偵察も必要だと思いますので、時間に余裕を持たせてまっす。だめでしょうか~?』


 いつものあざとさ100%のうるうる目で見上げてくる『ウロボちゃん』。


 俺が頭をなでて「問題ない。助かる」と言うと、ニコッと笑顔になって説明を再開した。


『送られてきた招待状データによると、当該宙域で待機していれば、先方の船が迎えにくることになっていまっす。その船に曳航されて、惑星シラシェルの軍港に入港する予定でっす』


「こっちが戦艦だから軍港なのか」


『民間の宇宙港ではリードベルム級艦を受け入れられないのでっす』


「むしろよく『ウロボロス』を港に入れることを許可したな」


 俺の疑問には新良が答えた。


「恐らく本当に先生がリードベルム級艦を所有しているのか知りたいのでしょう。それにこの艦は『フィーマクード』の技術レベルを知るのに丁度いいサンプルになります」


「調査が入るってことか?」


「港に入る時には、すべての艦艇は港の安全確保のために必ず兵装などをスキャンされることになっています」


「なるほど。別に俺は構わないが、『ウロボちゃん』みたいな人間型アンドロイドはマズいんじゃなかったか?」


「そこはお目こぼしされると思います。どちらにしろこの船を動かすにはクルーが必要ですし、緊急時の人員補充のためのアンドロイド作成は一応合法です」


「ならいいか。それにこっちは別に『銀河連邦』に所属してるわけでもないしな」


「そうですね。ただそのぶんなにをされても文句は言えないということでもあります」


「そこは互いの信頼関係という感じだな。じゃあ『ウロボロス』、早速惑星シラシェルに向かってくれ」


『了解でっす。では本艦は、これより「銀河連邦」内の惑星シラシェルに向けて出航しまっす』


『ウロボちゃん』が指示を出すと、クルーたちが一斉に作業を開始した。


 計器盤のモニターの表示などが目まぐるしく変化していき、『統合指揮所』に微振動が走る。


 サブモニターに映っていた地球がだんだんと小さくなっていき、そして『ウロボロス』はラムダジャンプに入った。

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― 新着の感想 ―
うーん。何やら不穏な予感が。向こうも一枚岩では無いでしょうし、辺境の野蛮人程度が……って舐めた態度をとる連中やまだ魔王の紐付きの連中も絶対居そうですし。向こうの所長さんがどれだけ上手く立ち回れるか。下…
すでに日帰り可になってた 清音ちゃんも小旅行気分で行けるね
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