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勇者先生 ~教え子が化物や宇宙人や謎の組織と戦っている件~  作者: 次佐 駆人


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37章 出張先、銀河連邦 06

「先生、さっきの話はあらかじめ考えていたのですか?」


 俺と新良が『フォルトゥナ』の客室に戻って椅子に座ると、待ち構えていたように青奥寺がそう質問してきた。新良と双党も興味津々な様子で俺の顔を見てくる。


「まあそうだな。正直俺自身は金目のものとか貰っても仕方ないし、『ウロボロス』と相談したらああなったという感じかな」


「そうですか。自分の利益とかを考えないのは先生らしいですね」


「でも『ウロボロス』二隻分の資源って多分すごい量ですよね?」


 双党の質問には新良が答える。


「リードベルム級は大国が防衛費の三分の一を使って建造するほどの戦略級戦艦。もちろん資源だけならそこまでのお金はかからないけれど、それでも小国の国家予算くらいには匹敵する」


「だよね~。先生もずいぶんふっかけましたねっ」


「それも『ウロボロス』の提案通りだ。落としどころは1.5隻分らしい」


「そういうことまで考えるんですね『ウロボちゃん』は」


「もうあいつ一人でいい気がするわ」


 と言うと、新良が俺の手を握って顔を近づけてきた。いつになく強い眼力に、俺は上半身を反らしてしまう。


「先生、それだけは絶対にいけません。AIはあくまで人間の補助ですから、『ウロボちゃん』と『ヴリトラちゃん』に関しては先生がしっかりマスターとなっていてください」


「お、おう……。新良の言う通りにはするから大丈夫だ。なんとなくAIを野放しにするとマズいっていうのはわかる」


「お願いします。『ウロボちゃん』と『ヴリトラちゃん』については、実態を知られると銀河連邦の科学局が危険視しかねません。それくらい危うい進化をしています」


「そうなのか?」


「はい」


「それはSF映画などで扱われていたAIが反乱を起こすというような話でぇすか?」


 レアの質問に、双党も興味ありげな目をする。ただ青奥寺だけは微妙にわかっていないっぽい。


「それもあるけど、『ウロボちゃん』と『ヴリトラちゃん』は明らかに先生を主体として、先生の役に立つということを第一義として動いている。だからそこから先生という要素が失われると、『ウロボちゃん』と『ヴリトラちゃん』がどう変化をするかわからない。それが危険」


「なるほどでぇす。あの二人も結局同じということでぇすね」


「あ~そういうことかぁ。納得納得」


「えっ? 二人ともなにがわかったの?」


 うんうんとうなずくレアと双党、それを見て青奥寺が珍しく慌てている。


 というか俺もなにを納得しているのか全然わからないんだが。「同じ」と言っているのだから、俺の周りになにか『ウロボちゃん』たちと同じものがあるということなんだろうが……。


「ともかくこれに関してはライドーバン局長の返事待ちだな。新良、銀河連邦側はこの提案を受け入れると思うか?」


「恐らくは受け入れるとは思います。局長は連邦最高評議会の議長とも直接つながっていますので、そちらに話を持っていくはずです」


「評議会にかけるってことか?」


「そこから先はわかりません。ただ、議長は単独で独自の強い権限を持っています。ですから回答は予想より早いと思います。早ければ1週間ほどで来るでしょう」


「それは意外だな。2、3カ月は覚悟してたんだが」


「さすがに日本で言うお役所仕事は連邦評議会には存在しませんから」


「そりゃいい方に文化文明が進歩してるんだな」


 そういうことなら悪い方には話は行かないか。


 一番マズいのは、力ずくでその技術を寄越せとか言われることではある。なにしろ銀河連邦的には地球は存在しない星扱いだ。無法も通そうと思えば通せる。


 まあさすがに、一国の軍に匹敵する『フィーマクード』の艦隊を退けた勇者と戦うほど、間抜けな人間が議長をやっているということはないだろうが。




 ライドーバン局長からの返事は、なんと3日後に来た。


「……え~と、つまり銀河連邦のトップが、直接俺と会って取引をしたいと、そういうことですか?」


『端的に言えばそうだ。もちろん地球が銀河連邦に所属していない以上、非公式の、超法規的な会談ということになる』


 モニターの向こうのライドーバン局長は、いつも以上に真面目な感じである。冗談という線は完全にないようだ。


「なぜそのような話になったのでしょうか?」


『ミスターアイバ、むしろこれは当然の措置だよ。そちらが提供しようとしているのは、銀河連邦の枠組みを変えかねないほどの技術だ。これは議長本人の言いようだが、銀河連邦の長以外対応してはならない案件なのだ』


「あ~、確かにそうかもしれませんね。本来ライドーバン局長が窓口をするのもおかしい話ですしね」


『ふふっ、本当にその通りだ。ともかくその旨を了承してくれるとありがたいのだが、どうだろうか?』


「そうですね……」


 正直組織のトップと会うこと自体はあまり気乗りしない。ただ相手は基本的に関わり合いのほとんどない銀河連邦だし、そのトップというのにはすごく興味があるのも確かである。


「会うとしたらどのような形になるのでしょうか?」


『連邦版図内にシラシェルという惑星がある。高級リゾート地が多いことで有名な美しい星でね。そちらにあるグロートーレという高級ホテルの一室で行いたいとのことだ』


「戦艦で行って大丈夫なんでしょうか。データは『ウロボロス』が管理していて、直接渡したいそうなんですが」


『うむ、もちろん最初からそのつもりだ。シラシェルは今回のような超法規的な取引をするのにもよく使われる星でね。そのあたりの受け入れ態勢は問題ない』


「わかりました、それなら問題ありません」


『では来てもらえるということで議長には連絡をする。追って日時など詳細をアルマーダ独立判事の方に送ろう』


「わかりました、お待ちしています」


 とそんなやり取りがあって、翌日。


 俺はその『日時』を、放課後に呼び出された校長室で、明智校長から聞かされた。


「すみません、なぜ校長先生がその話を……?」


「新良さんを預かるときに、ライドーバン局長とはすでに一度接触をしているのです。その後は今に至るまで関わってはいなかったのですが、先日のダンジョン説明会の後に、やはり新良さんを通して接触があったのです。相羽先生の派遣をお願いすることがある、と」


「はあ。そんな話を宇宙を隔ててするのもすごいですね」


「ふふっ、その通りかもしれませんね。さて本題ですが、ライドーバン局長から相羽先生を銀河連邦に派遣してほしいと依頼がありました。日時は、こちらで言うと来週の火曜になります。そこで前後の移動時間もとって5日間を出張扱いとしたいと思います」


「はい」


「出張の名目は、『総合武術同好会』の研修としました。ですので、新良さんや青奥寺さんたちを連れて行くことも可能です」


 う~ん、それはありがたい采配ではあるなあ。


 青奥寺たちには「また璃々緒と二人きりは絶対だめです」と強く言われてしまっているし。


「わかりました。青奥寺、新良、双党、それとハリソンさんも連れて行きます」


「結構です。出張の申請はしておいてください。それと戻ってきたら報告をお願いします。できれば写真などを見せていただけると嬉しいですね。本当は私も行きたいところですが」


 女優系美人の明智校長がいたずらっ子のように笑いながらそんなことを言うので、つい「一緒に行きますか?」と言いそうになってしまった。


 そう言えば山城先生は宇宙船に来てもらったことがあるのだが、明智校長にはまだ経験してもらってなかった気がする。


 今度誘ってみてもいいかもしれない。色々とお世話になっているし。

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― 新着の感想 ―
引率者が知らない所で JS二名追加
また嫁を増やすのか 連邦の議長も美女だったりして
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