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勇者先生 ~教え子が化物や宇宙人や謎の組織と戦っている件~  作者: 次佐 駆人


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35章 『応魔』殲滅作戦 04

 艦隊分の『次元断層ドライバ』を用意してテストまで行うのに、一週間はかかる……というか一週間しかかからないらしい。


 なのでそれまでは平常運転である。


 青奥寺や雨乃嬢たちは以前と同じく例の『定在型深淵窟』や、突発的な『深淵獣』の対応を行っている。ただ『定在型深淵窟』については『赤の牙』のおかげで行くことはほとんどなくなって、青奥寺たち学生組は近々ローテーションから外されることになるらしい。


 新良については、『フィーマクード』が一時的にその存在を消したため、宇宙からの犯罪者が来る頻度は大きく減ったらしく出番がほとんどない。『応魔』が出たら対応してもらう予定だが、最近は勇者周りの人員が多いためそちらの出番もあまりない。もっとも本来の業務がなくなったとしても、俺という特大のイレギュラーがいる限り彼女が地球から離れることはないだろう。


 双党と絢斗も『クリムゾントワイライト』日本支部が消滅し、さらにアメリカ支部もおとなしくなったので『白狐』としての仕事は減ったようだ。とはいっても、時々2人とも東風原所長には呼び出されているので、出動すること自体なくなったわけでもないらしい。


 カーミラは九神関係で相変わらず飛び回っている。リーララも時々出動しているのを見かけるので『次元環』はまだ開き続けているようだ。


 学校では、青奥寺たちにレアを含めた4人娘が時々なにか言いたそうな目を俺に向けてくる以外は特になにもなかった。


 そして5日目の夜、俺がアパートで一人まったりしていると、珍しく青奥寺からスマホに着信があった。


「どうした?」


「済みません、少しお話がしたのですが……」


「電話では話せないことか?」


「できれば直接会ってお話がしたいんです。璃々緒とかがりも一緒です」


「あ~わかった。久しぶりに新良の『フォルトゥナ』に集まるか」


「ありがとうございます。璃々緒に言って転送してもらいますね」


 5分くらいして、俺の身体は新良の宇宙船『フォルトゥナ』の中に転送された。そういえば『ウロボロス』を手に入れてから、こちらにはほとんど来なくなってしまったので久しぶりだ。


 客室にはすでに青奥寺たち3人が揃っていて、俺が椅子に座ると全員が少しだけ気まずそうな顔をした。双党までがモジモジした感じなので、なぜかすごく不安になってしまう。まさかいきなり処刑が始まることはないと思いたい。


「済みません先生、急に呼び出したりして」


「真面目な相談ならいつでも受けるさ」


 青奥寺に答える間に、新良が飲み物を用意してくれる。


「それでなんの話だ? わざわざ呼び出したくらいなんだから、学校ではできない話だよな」


「ええ。その、この間の、先生が1人で『応魔』と戦うという話なんですけど……」


「それがどうかしたのか?」


「やっぱり私たちも連れていって欲しいんです。もちろん私たちが行ってもなにもできないかもしれませんけど、それでも先生と一緒に行きたいんです」


 青奥寺はそう言って、じっと俺の顔を見てくる。青奥寺だけでなく新良も双党も同じように目を向けてくるので、俺は少したじろいでしまった。なにしろ双党までが真面目な顔をしているのである。


「なにか理由があるのか?」


「あの後考えたんですけど、やっぱり今回のようなことを先生が一人で背負うのは違うと思うんです。だって先生はこの世界のために戦いに行くんですよね。それなのに、その苦しさを先生だけが受けるのは間違ってると思います」


「あ~、なるほど……。新良も双党も同じか?」


「同じです。先日の先生の言葉から、先生自身が『応魔』を殲滅することに精神的負担を感じているのだと思えました。その負担を私たちが共有することで軽減できればと考えています」


「私も同じですね~。やっぱり先生だけに押し付けるのはおかしいと思うんですよ、そういうの。先生が私たちのことを考えてくれているっていうのはわかるんですけど、でも私たちだって先生に守られてるばかりじゃダメじゃないですか」


 う~ん、俺にとってはそこまで重いものでもないんだけどなあ。もちろん多少自分がおかしいという自覚はあるけど、だったら俺が全部引き受ければいいってだけのことなんだよな。


「3人が俺のことを考えてくれるのは嬉しいが、実際俺にとってはそこまで大したことじゃないんだ。ただ3人にとっては、もし参加したとして、その時は気にならなくても後ですごく悩む時が来ると思うぞ」


「それでも構いません。というよりだからこそ一緒に行かせてください。先生が見ているものを一緒に見ないと、先生のことを本当に理解できないと思うんです」


 青奥寺が強い眼力で俺を睨んで……いるわけではないと思うが、強い視線を向けてくる。新良も双党も同じ、と言いたいが、新良は相変わらず光のない目なのでよくわからないな。


 まあどちらにしても、彼女たちは彼女たちなりに物事に正面から向き合おうとしているということか。だとすれば、俺としても強く断るのは違うということになる。


 先日のルカラスの助言もあるし、もしトラウマになるようならカーミラに精神魔法でもかけてもらえばいいだけだ。そこまで重く考える必要はないのかもしれない。


「わかった、そういうことなら連れて行こう。後で文句を言うなよ?」


「ありがとうございます!」


「ありがとうございます」


「先生はそういう適当な感じでいいと思いますよっ」


 ということで、室内に漂っていた妙に重い雰囲気はなくなった。


 しかし彼女たちが一緒に行けないことをそこまで重くとらえてる思わなかったな。


「あ~、なんというか、3人には礼を言わないとならないんだよな。今の話は、俺のことを心配してくれたってことなんだろう?」


「まあ……そういうことですね。ただその、先生とこの先も一緒に生きていくのに、こういうことを任せっきりにしたらいけないですから……」


 なぜか微妙に頬を染めて、ぼそぼそと話す青奥寺。心配してくれてるの? なんて面と向かって聞かれたら恥ずかしいところか。


「あっ先生、今ズレたこと考えていましたね。美園の言うことをきちんと理解してあげないと教師失格ですよ。ちなみに私も璃々緒も同じ考えですからねっ」


「そこはきちんと理解していると思うぞ。大切なのは責任の共有ということだな」


「はい失格~。重要なのはそこじゃありません~」


 双党が妙に腹の立つ顔をする。リーララ化が進行しているとしたら由々しき事態である。


「かがり、そこはもういいから。先生はこういう人だし、とりあえず一緒に行けるんだからそれで今日は納得しましょう。そういうわけで先生、私たちは先生を一人にはしませんから。これからもよろしくお願いいたします」


「お、おう……」


 再び眼力を強めた青奥寺が、そう言ってその場を締めようとする。


 う~ん、なんかよくわからないが、勇者の勘がこれ以上追及してはいけないとささやいているんだよな。


 勇者の勘がよく働く時はロクなことがないんだが……どうか処刑だけは避けたいところである。




 

申し訳ありません、前回こちらの更新を失念していました!

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― 新着の感想 ―
メインヒロインからの実質プロポーズ回! 二話同時更新で神回を読み飛ばすところでした。怖い!
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