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勇者先生 ~教え子が化物や宇宙人や謎の組織と戦っている件~  作者: 次佐 駆人


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32章 応魔  13

 ともかくもとりあえず突発的な『応魔』出現についてはケリがついたので、再び少年たちの件である。


 といっても、『応魔』が消えたあとも、坂峰少年たちはひとかたまりになってコンクリートの上で震えているだけで、俺とクウコが近づいただけでもビクッとしているような状態だった。


『アナライズ』の内容を考えると今後も『応魔』が現れる可能性は十分ある。であれば彼らは今後も戦士として鍛えておいてもらわないといけないのだが……。


「な、なあ、アンタ、さっきの奴はいったいなんなんだ? あれも『応魔』だっていうのかよ?」


 震える声で聞いてきたのはリーダーのソウヤ少年だ。


「そういうことだな。いわゆる上位個体って奴だ。しかもあれでもまだ中くらいの強さみたいだぞ」


「は……!? あんなのがまた現れるっていうのかよ!?」


「多分な。そういうわけだから、クラスメイトにイキがったりしてる暇はないぞ。これからガンガン鍛えないと勝てない相手がでてくるからな」


 うん、なんか丁度いい感じに『応魔』の本物がでてきてくれたのかもしれないな。力が足りてないとわかれば、彼らも心を入れ替えるかもしれない。


 と楽観的に考えていたんだが、少年たちは全員が首を横に激しく振り始めた。


「あんなのいくら鍛えても無理でしょ! だってさっきの奴、『鑑定』したらレベル350とか出てたんだから! あれ倒せるおじさんの方がおかしいの!」


 と叫ぶように言うのは魔導師風の少女だ。


 その言葉に全員が首を縦に振る。


「すまん『鑑定』ってなんだ?」


 俺の素朴な質問にクウコが答えてくれた。


「わたくしが……彼らに与えた能力の一つです……。相手の持つ霊力や魔力を計測して……レベルという数値でだいたいの強さを表示する……力があります」


「へえ、便利だな。それで350っていうのはそんなに高いのか?」


「今の彼らの平均が……50くらいですので……」


「なるほど、そりゃちょっと絶望的な差なのかもしれないな」


 強さなんて魔力の量だけで測れるものでもないんだが、一つの指標としては意味があるか。少なくとも魔力量が高いほど強いのは間違いないからな。


「あ~、じゃあどうするんだ。お前達はもう戦う気はないってことか?」


「あんなのがこれから出てくるなら、オレはもう戦わない!」


 それをリーダーが言ったらだめだろう、と注意しようと思ったら、どうやら全員が同じ意見のようだった。


「だそうだ。クウコはどうする?」


「彼らを……無理に戦わせることは……できません……」


「なら力を取り上げるか? 記憶とか消せたりはできるか?」


「力が失われれば……それに関する記憶も失うように……してあります……」


「そうか……」


 さすがに彼らがあの『応魔』と戦ったらなにもできずに全滅だろう。もとはただの少年少女だ。さすがにそれは忍びないというレベルではない。


 クウコは少年たちの前に立ち、深く頭を下げた。


「貴方たちの相手が……あれほどのものとは思いません……でした。わたくしとしても……貴方たちを、これ以上この戦いに巻き込むつもりは……ありません……。ですので、勝手ですが……その力は……封じさせてもらいます……。貴方がたは……今後は普通の少年少女として……生きてください。本当に……申し訳ありません……でした」


「ちょ、ちょっと待ってくれ。勝手に力を与えて、役に立たないからって勝手に力を消すのかよ!?」


 ソウヤ少年の意見は、ある意味もっともな話ではあるかもしれない。


 まあただ相手は女神のフリをした超常的存在だからな。一般人としては多少の理不尽は諦めるしかない。極端なことを言えば命を取られないだけマシなくらいだ。そういう意味ではクウコはむしろ良心的まである。


「それに関しては……本当に申し訳ないと……思います。今後も……人としては多少高い能力を維持できるとは思いますので……それでお許し……ください」


「なんだよそれ。ちょっと勝手すぎるんじゃないのか……?」


「まあまあ。お前らスタイルが良くなって、運動も多少できるようになったんだから文句は言いっこなしにしておけ。それに相手は女神だぞ。キレさせていいことがあると思うか?」


 と先人として忠告をすると、さすがに自分のやっていることの危険度に気づいたらしい。ソウヤ少年は黙り、他の4人も渋々納得したようだ。


「では……能力を封じます……。さようなら、そしていい人生を……」


 クウコは尻尾を出して、二度三度とそれを振る動作をした。すると少年たちは、その場で力を失ったように倒れ込み、眠り始めてしまった。


「これで問題は……ありません。あとは彼らを……家に帰さないとなりませんが……」


「家は分かってるから俺が転送しておく。ベッドで起きたらすっかり普通の高校生って感じになるようにな」


「そのようなことが……できるのですね……。相羽様はいったいどのようなお方……なのでしょう……」


「それは後で一度詳しく話をしよう。『応魔』についても対応を考えなくちゃならないしな」


 さすがに『厄災』レベルのモンスターが現れるとなったら、勇者としては見て見ぬふりはできない。というか無視してもどうせ戦うことにはなるだろうしな。だったらさっさと対策を考えた方が精神衛生上問題が少ないというものだ。諦めが肝心なのは、なにも少年たちだけに限ったことではないのである。

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― 新着の感想 ―
まーた、人外のハーレム要員増やしましたよ、この人(笑)
あ、レギュラー化はしないのね少年たち 素直な少女は見込みありそうだったけど、流石にレベルで7倍もの差がある相手と戦えと言われたら「止めます」と言いたくもなるか
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