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勇者先生 ~教え子が化物や宇宙人や謎の組織と戦っている件~  作者: 次佐 駆人


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26章 留学生  15

 俺が部屋に入ると、ちょうど絢斗(あやと)が『クリムゾントワイライト』のエージェントを蹴り飛ばすところだった。


 部屋の中はメチャクチャになっていて、隅の方でレアが脇腹をおさえて片膝をついている。その前に強化フレームをつけた双党がゲイボルグを構えて立っているが、絢斗が完全に格闘戦にはいってしまっているので手をだしあぐねているようだ。


「あ、先生、レアが!」


双党に呼ばれて俺はレアの側にいく。脇腹をおさえた手の間から血がにじんでいる。トレーニングを積んでいるはずの彼女がかなり苦しそうな顔をしているので、結構なダメージを食らってしまったようだ。見ると双党も何か所か攻撃がかすったようなダメージを負っている。


「回復しよう」


 俺はレアの手の上に自分の手を重ねて、『回復魔法』を発動する。


「……んんっ……オウ? 痛くない……でぇす?」


「傷は塞がったはずだけど、血は失ったままだから無理はするな」


 ついでに双党も『回復』してやり、まだバチバチ格闘をしている絢斗を見る。


 絢斗の相手……『クリムゾントワイライト』のエージェントは、全身黒づくめの人間だった。いや、人間だと思ったが、どうも先ほどの『影』の人型バージョンのように見える。


 絢斗の斬撃を受けても、その部分が切り離されるだけですぐ再生する。しかも攻撃は手や足が瞬時に剣のように変形しての刺突や切り払いだ。明らかに人間ではない。


--------------------

クリムゾントワイライト アサシンシャドウ リーダー


術者によって創造された偽りの生命体

上位個体で他のアサシンシャドウを統率する

弱点は体内の核


特性

物理耐性 


スキル

格闘 刺突 再生 

--------------------


『アナライズ』するが、やはりこいつ自身作られたモンスターっぽいな。しかしこの手の奴は手の内さえわかってしまえばそこまで強敵ではない。


「こいつっ! しつこい上に核が逃げるっ!」


 なるほど絢斗が決めきれない理由がそれか。なかなかにいやらしいな。


 と思っていると、その人型『影』は大きくバックステップをして顔を俺の方に向けた、そんな気がした。


「……ミツケタ」


「しゃべった!?」


 双党が驚きの声を出す。


 それに反応したように、『影』……『アサシンシャドウ』がいきなり『高速移動』した。俺ではなく双党に向かって、両腕を剣に変形させながら。


 だがその切っ先が双党に届くことはない。俺のオリハルコンダガーが、人型の影のなかで動き回る核を真っ二つにしたからだ。


「ナルホド、ツヨイ」


 そう言葉を残して『アサシンシャドウ』は消えていった。


「先生すみません、仕留めきれませんでした」


 絢斗が悔しそうな表情で歩いてくる。


「時間をかければ倒せただろ。気に病むことはないさ」


「そうかもしれませんが、初見の敵に対しての反応がダメですね。やっぱり経験が足りてません」


「そこはまあ仕方ない。しかしあんな奴は初めて見るな」


「先生でも見たことないんですか? さっきのやつ、先生を見て『見つけた』って言ってたように見えましたけど」


 双党が意外そうな顔で俺を見る。


「たしかに俺に用があったみたいな感じだったな。最後も俺の力を試していたっぽいし」


「もしかしてアメリカの支部に目をつけられてるってことですか? どこで情報が……」


「ん~、まあ心当たりはなくはない」


 以前戦った『赤の牙』は俺のことを知ってるし、奴らが『魔人衆』の誰かに話した可能性は普通にあるだろう。先日異世界でやりあった『バルロ』とかいうのも多分俺のことを探っているだろうし。


 ただなあ、さっきの『ミツケタ』は女の声だったんだよな。しかも覚えのない声だった。まさかあれがアメリカ支部の支部長なんだろうか。


 そう考えると、どうやらまたクゼーロレベルの奴と戦うことになるんだろうか。異世界のこともあるし、宇宙犯罪組織の件もあるし、こっちは少し大人しくしていてもらいたいものだが。

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