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勇者先生 ~教え子が化物や宇宙人や謎の組織と戦っている件~  作者: 次佐 駆人


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26章 留学生  11

 とりあえず九神と宇佐さんの異世界行きが決まり、俺は再び車で送ってもらうことになった。さすがに帰りも九神が同乗するという話で、またよく分からない質問攻めにあいそうな予感である。


 九神邸の玄関を出て、表に止まっている高級車へと向かう。


 その時、俺は微かだが刺すような視線を感じた。対象は俺ではなく九神たちのようだ。相手が相当な手練れだというのはその気配の殺し方でわかる。


 可能性としては『クリムゾントワイライト』の新手か、それとも――


「すみません、その道を左に曲がって、そのビルの横で車を停めてもらっていいですか?」


 俺は車に乗ってすぐに、中太刀さんに声をかけた。ちなみに乗っているのは同じ防音仕様の車だが、マイクを使えば運転席とのやりとりはできた。


「了解いたしました」


「先生、どうかされたのですか?」


 九神が隣の席から怪訝な顔を向けてくる。


「どうも九神の家を見張ってる人間がいるようだ。しかも相当デキるやつだから、普通の興信所とかそういう連中じゃないと思う」


「九神家はそのような方たちがいてもおかしくはないのですけれど……でも普通なら宇佐家のものが気付くはずですから、確かに手練れなのでしょうね」


「そうだな。ちょっと気になるから確認してくる。ここで少し待ってもらっていいか?」


「ええもちろんですわ。九神家のために動いてくださるのですから、お待ちするのはむしろ当然です」


「どんなやつなのか気になるってだけなんだがな……じゃあ行ってくる」


 俺は車から降り、『光学迷彩』『機動』を発動して、姿を消して空に舞い上がる。


 恐らく視線は近くのビルからだ。俺はそちらに飛んで行きながら『気配感知』を全開にして探る。


 怪しいビルは3つ。2つ目のビルの5階に、窓際にはりついて動かない気配がある。しかもその気配自体かなり微弱で、気配を意識的に消しているのが分かる。こいつで決定だな。


 俺はそのビルに飛んでいき、そいつのいる部屋の窓に近づいていく。


 ブラインドを下ろして隙間からカメラのようなものだけを突き出して監視しているようだ。こりゃ徹底してるな。


 さてこれだと何者なのか特定ができない。しょうがない、強硬策を取るか。


 俺は一旦窓を離れ、1階の入り口からビルに入る。


 ビルは普通のマンションだった。姿を消したまま5階の部屋の前まで行く。部屋の中にはまだ気配がある。


 扉には鍵がかかっているだろう。俺は『風魔法』で扉の隙間から金属製のボルトを切断する。一応『防音』の魔法を効かせたが、さすがに振動は伝わるか。部屋の中の気配が動いたのが分かる。


 俺は一気に扉を開く。そこにいたのは、シャツとジーンズを着た金髪ポニーテールの少女。


 転校生レア・ハリソンが、ナイフを片手にこちらを睨んで構えていた。




「何者でぇす……?」


 レアは入り口あたりに視線を向けたまま、ゆっくりと近づいてきた。


 彼女は俺のことが見えていないはずなので、恐らく扉を開けた者が廊下にいると思っているのだろう。


 しかしどうしたものか。彼女が九神を調べているのは想定内ではあるので放っておいても問題はない。


 そもそも視線は感じたが殺気はなかったし、この部屋にも別に銃のようなものを持ち込んではいないようだ。


 ただなあ……留学生であっても教師としてはこんなことを隠れてこそこそやって欲しくないんだよな。女子校に勤務してわかったが、生徒同士が腹に一物を抱えたまま表面上仲良くしてるってのは、実は教員的にすごいストレスなのである。


 さらに言えば、たぶん立場を明らかにして直接やりとりをした方が話は圧倒的に早いと思う。レアとしては隠れて探れとか命令されてるんだろうけど、正直ただの無駄でしかないんだよなあ。


 あ、だめだめんどくさくなってきた。これじゃ双党に笑われるけど仕方ない。


 俺が『光学迷彩』を解くと、レアは目を大きく見開いてバックステップした。


「アイバセンセイ……!? まさかセンセイは……ニンジャなんでぇす!?」


 あ~そっちで理解しちゃったかあ。

 



 とりあえずその部屋で俺とレアは向かい合って話をすることになった。


 広めのマンションだが家具類は備え付けの最低限のものしかなく、互いにフローリングの床にじかで座ることになる。


「ええと、ではセンセイはクカミのニンジャではないのでぇすね?」


「そうだな。いわゆる在野の忍者だ。今回は用があって九神の家に行っただけで、九神の配下にあるとかそういうことはない」


「なぜセンセイはセンセイをやっているのでぇすか?」


「今の世は忍者だけじゃ食っていけないし、忍者として活動するにしても表向きの職も必要だからな」


「なるほどぉ。でもやっぱりまだジャパンにはニンジャがいたのでぇすね。感動でぇす」


 う~ん、流れで忍者ということにしてしまったが、なんか本当に信じてる感じなんだよな。どうもレアは、九神家にいる忍者を調べていたらしいのだが……たぶん宇佐さんの一族のことなんだろうな。


「まあ俺のことはともかくだな、ハリソンさんがこうやってこそこそ調べるのは感心しないぞ」


「それはニンジャとしての意見でぇすか? それともセンセイとしての忠告?」


「どっちかって言うと教師としての意見だな。九神に聞きたいことがあるなら直接聞いた方がいい。答えられることなら答えてくれるし、聞きづらいことなら俺が仲介してやってもいい」


「う~、そんな簡単に教えてくれるんでしょうか?」


「ハリソンさんが自分の正体をはっきりさせればね。まあその正体に信用がなかったらダメだろうけど」


 そう言うとレアは眉と口をまげて難しい顔をした。


「センセイは、ワタシの正体は知らないのでぇす?」


「まずはハリソンさんの口から聞きたいね」


「それは卑怯な言い方でぇす……」


 ふむ、体術などから見るとかなり訓練を受けた子のようだが、こういうやり取りはあまり得意ではないのだろうか。演技だとしたら大したものだけど。


「どっちにしても九神にはハリソンさんが探ってるってことは伝えるつもりだし、隠れて探るより正面から行く方にシフトするしかないんじゃないか?」


「……そういうことなら仕方ないでぇすね」


 レアは溜息をついてから姿勢を正した。


「ワタシはレア・ハリソン、USAの対『クリムゾントワイライト』機関である『アウトフォックス』のメンバーでぇす。今回は『アウトフォックス』の上官の命令でジャパンに調査に来たのでぇす」


「調査する相手は九神だけなのか?」


「一応ソウトウサンとダイモンサンの2人も対象でぇすね。センセイは『クリムゾントワイライト』についてはどこまで知っていまぁすか?」


「日本の支部が潰されたってのは知ってるよ」


「それって結構な秘密だと思うのでぇすが、でもニンジャなら知っていて当然なんでしょうか」


「まあそれくらいはね。もしかして誰が支部を潰したのかとか、そういうのを調べに来た感じなのかな?」


「そうでぇす。支部のリーダーは普通に倒せる相手ではないので、どんな戦力で倒したのかを知りたいのでぇす」


「あ~なるほどね……」


 ここも予想通りなんだな。


 しかしそうすると、俺の正体が分からない限りレアは真相にはたどり着かないということになるわけだ。


 う~ん、それはそれでなんか申し訳ない気もしないではないな。ただ知られるとやっぱりちょっとめんどくさそうではあるんだよなあ。


 いやまああれか、普通にメチャ強い忍者が倒しました、ならいけるのか?


 それならせいぜい手伝ってくれとか言われるだけで済みそうな気もしなくはないが……


「あ、それとでぇすね、アオウジサンとニイラサンにも興味がありまぁす。彼女たちも普通の人たちではありませんよねぇ?」


 あ~やっぱりそっちも気になっちゃったか。


 こりゃ面倒だからみんな集めて話させてしまうか。事前にどこまで情報を開示するかを決めさせておけば大丈夫だろう。そういえば『深淵窟』って海外にもあるんだろうか。もしそうなら青奥寺家みたいな人たちもいそうなものだが……そっちも気になってくるな。

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― 新着の感想 ―
[一言] ニンジャの…勇者! 先生も大概属性過多になってきて草
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