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勇者先生 ~教え子が化物や宇宙人や謎の組織と戦っている件~  作者: 次佐 駆人


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18章 食い破る者  09

 指定された場所は、アパートから飛んで30キロほどの距離にある、とある公園の駐車場だった。もちろん夜なので車は一台もない。ただ街灯だけがアスファルトに描かれた駐車枠を照らしている。


 地上に下りると、どこからともなく4人の人間が闇から染み出すように現れた。20メートルほどの距離を取り、俺を半円に囲んでくる。


 その中の一人はもちろんレグサ少年だった。口の端を吊り上げてオモチャを前にした子供のようにニヤケている。


「ホントに飛んでくるんだな。『機動』魔法を生身で使うのは俺たちの側でも珍しいんだがな」


「まあな。それより残りの3人を紹介してくれないか?」


「だってよ。名乗ってやれば」


 レグサ少年が肩をすくめると、隣の女が口を開いた。スレンダーな身体をラバースーツで包んだ、なんとなく女王様と呼びたくなるキツめの女だ。


「アタシはロウナ。勇者さんならさぞかしいい声を上げてくれるんだろうねえ。期待させてもらうわよ」


 おっと中身も見た目通りか。見た感じ暗器使いっぽいな。


「オレはドルガだ。短い間だがよろしく頼む」


 次に声を出したのは2メートルを超える巨漢の男だ。厳つい顔にドレッドヘア、額に突き出る二本の角は鬼人族の証だ。見た目通りパワータイプだと助かるな。


 最後に残ったのはいかにもリーダーっぽい金髪の二枚目だ。白い貴族っぽい衣装を着ていて、腰には業物と思われる片手剣を下げている。


「私は一応この『赤の牙』のリーダーをしているランサスと言う。4対1だが上の指示でね。悪く思わないで欲しい」


「クゼーロに数は問わないと言ったのは俺だから問題ない。なるほどこれはなかなか骨が折れそうだ。魔王軍の精鋭先遣隊ってところか」


 まだ勇者としてレベルが低かったときに似たような連中と戦ったが、あの時は結構キツかったな。俺があれからどれだけ強くなったのか測るにはちょうどいい相手かもしれない。


「魔王軍、か。君が本当に伝説の勇者の子孫なら面白いのだがな。ま、戦えば分かることか」


「ランサス、さっさと始めようぜ」


 レグサ少年がもう待てないとばかりに前に出ようとする。


(はや)るなレグサ、いつもの通り行く。君の名はアイバだったかな、始めさせてもらうよ」


「オーケー、いつでも大丈夫だ」


 俺がミスリルの剣を取り出して構えると、4人もそれぞれ構えを取った。


 レグサは格闘、ロウナは投擲メインか。ドルガは格闘っぽいが多分魔法使いだな。ランサスは正統派の剣士のようだ。構えた剣は『デュランダル』並の聖剣だろう。


 瞬間、ロウナが10本以上の短針を投擲、同時に俺の周囲を炎が包む。


 レグサとランサスが『高速移動』で周囲を回りはじめる。俺が動くのを待っているのだろう。


 俺は『アロープロテクト』を発動、短針を防ぎつつ炎の渦の外に出る。


 眼前に閃くのは獣人の爪。かわして剣を振るがそこにはもうレグサはいない。代わりにランサスの剣が首を狙う。同時に短針が横から飛来、ドルガはすでに次の魔法陣を想起している。


 剣を弾いて押し返し、そのまま短針を避けつつドルガに全力『ロックボルト』を飛ばしてやる。鬼人族の巨体が吹き飛ぶがこの程度は耐えるだろう。レグサの爪をいなして腹を蹴飛ばし、短針を投げようとしたロウナに『高速移動』で迫る。腕一本もらおうかと思ったがランサスの剣がそれを阻んだ。3合ほど剣を合わせるがなるほど剣聖並みの腕だ。


「クソが、よく反応するもんだぜッ!」


 レグサが爪に炎をまとわせて突っ込んでくる。俺がカウンターを狙うと直前で方向を変え炎だけを飛ばしてくる。フェイントというか目くらましだな。俺が炎を突っ切るように前に出ると、後ろを巨大な岩石が通過していく。『ロックボルト』のお返しか。


「勇者の子孫とはこれほどか!」


 正面にランサス、刃が光っているのは『切断強化』か。怒涛の剣技に圧される、そのフリをして短針をかわす。迫るレグサを『ファイアランス』で牽制し、剣の速度をあげてランサスを押し返す。刃が胸に届くか、というところで邪魔をするのは炎の槍。『ファイアランス』、同じ魔法を使ってくるとはドルガも芸が細かいな。


「アタシの攻撃が当たらないってぇ!」


 叫びながらロウナが短針を二本投擲。針と針の間に見えない鋼糸が張られている。嫌らしい技だが『アロープロテクト』の前には無意味だ。針を弾くとその下を低い体勢でレグサが滑り込んでくる。ランサスが合わせて上半身を狙ってくるが、俺は瞬時にもう一本の剣を取り出して両方を受ける。そのまま二刀で2人の相手をしてやると、刃と爪が交錯する閃光の暴風が吹き荒れる。瞬時に場所が入れ替わる俺たちの動きに、『赤の牙』の後衛2人も手を止めて見守るしかない。


「なんという男だ。今まで戦った中で間違いなく最強の相手だな」


「だねえ。あの二人を同時に相手するなんて普通じゃないよ」


 ドルガとロウナがそんなことを言っているが、休んでる場合じゃないぞ。


 俺は二刀を操りながら『リッピングストーム』を発動。真空刃入りの竜巻を察した後衛2人は慌てて飛びのいた。


「貴様、化物かっ!」


「くうッ、楽しいぜェッ!」


 ランサスの剣とレグサの爪、その回転がさらに上がる。だが勇者の回転力はその上を行く。俺の二刀は別個の意志を持ったかのように二人の攻撃をすべて弾く。ついでに魔法も連続発動し、後衛の2人を追いかけまわすのも忘れない。


「4人同時に相手して余裕って、なんなんだオマエはよォッ!」


 レグサがそろそろ焦れてきたか。ランサスも多少疲れが見えてきたな。おっと休むと反撃するぞ、そうそうどんどん打ってこい。レグサも『高速移動』のキレが落ちてるぞ。気を抜くと尻尾が飛ぶからな。


 しかし俺の強さが異常なのはともかく、コイツらも相当にいい腕だ。このレベルがまだ他にもいるというなら、クゼーロたちは魔王軍にも近い戦力を持っているということになる。リーララみたいのも他に多くいるなら『あっちの世界』は強さがインフレしているのだろうか。


 そんなことをちょっと考えていると、ズボンのポケットでスマホの呼び出し音が鳴った。どうやらあっちは苦戦してるみたいだな。


「タイムオーバーだ、悪いがここまでだな」


 俺は『感覚高速化』を発動、ランサスの剣を飛ばして膝をみぞおちに食らわせる。


「なッ!?」


 驚くレグサの爪は軽く弾いていなし、後頭部に剣の柄を叩きつける。


「ちょっと、2人があっさりやられちまったよっ!?」


 叫ぶロウナと動揺するドルガは魔法の連続攻撃で動きを止めて、『高速移動』ですれ違いざまに当て身を食らわせて気絶させた。


 俺は倒れた4人をまとめておいて一応隠蔽魔法をかけてやる。結構な打撃を与えたのでしばらくは動けないだろうがまあ致命傷にはならないはずだ。これで気がつけば勝手に帰るだろう。俺の勘ではこいつらは力の差を感じれば余計なことはしないタイプだ。


 スマホの呼び出しに出ると「先生助けてくださいぃ~」の声。


 俺は『機動』魔法を発動、魔力を全開にして夜空へ飛び立った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 確かにこんだけ強けりゃ殺生与奪も握り放題か。本当に殺すまでも無いってのはこの事ですな
[一言] ぅわゅぅιゃっょぃ やっぱ前半は遊んでたっていうか様子見だったか 本気出さなくても瞬殺とか、やっぱ半端ないな…
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