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転生龍は人と暮らす  作者: くらいさおら
第三章 王都ガルジア
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56.老獪さと若さと

 龍平はタエニアの指示に従い、国政の場において実質的なトップに位置する男の背後に立った。

 一分の隙もない堂々とした体躯に、若々しさを保った豊かな髪が目に入ってきた。


 聞くところによれば五〇代だというが、とてもそうは見えなかった。

 国の舵取りという重圧を軽々とはねのける男に、龍平は畏怖を抱いていた。




「閣下、ご光臨の栄に賜りましたこと、心より御礼申し上げます。今後は王国の盾となり、騎士の本懐を遂げる所存にございます」


 ティルベリーの時と同様に、挨拶の言上のあとはピッチャーを差し出した。

 乾杯の挨拶に立ったときとは別人のように好相を崩し、キルアンは龍平から酌を受けた。


「お、フレケリー卿、俺の時とはずいぶんと違うではないか。俺にも言ってほしかったな。殿下の剣となりて、敵を滅ぼす――」


「黙らっしゃい。殿下が仰ると洒落になりません。フレケリー卿、聞き流しておきなさい。それはそれとして。いろいろと迷惑をかけたようだな。この場では言えんが、のちほど、な。やりにくいことも多かろうが、ひとつ堪えてくれ。ここにはここのやりかたがあるでな」


 ティルベリーを一喝して黙らせたキルアンは、立場上言えないことを言外に含ませ目礼した。

 龍平個人を恐れるわけではないが、背後に控える龍はやはり脅威だ。


 王国が一地方の諸卿に屈するわけにはいかないが、誠意だけは見せている。

 もっとも、見せるだけの誠意にどれほどの価値があるかは、受け取る側次第でしかないが。


――閣下、もったいないお言葉でございますわ。わたくしどもが王国に弓引くなどあり得ません。理不尽なことでもない限り――


 ぎらりと言葉を白刃に換え、レフィが返した。

 龍平の知識を吸い上げるだけなら、それは許さないとの意志が込められている。


 かわいらしくリボンとフェロニエールを飾っているが、それが却って凶相を引き立たせてもいた。

 もちろん、それに怯むような男ではなかった。


「何を以て理不尽とするか、そなたの胸下三寸というところか。これはまた、難しいことを言いなさる。せいぜい気をつけるとしよう。そなたの暴威が吹き荒れんようにな」


 平然とした表情で、声を荒げる様子もなくキルアンは言い返す。

 言葉の刃の応酬に、龍平は呆気に取られていた。


「おい、なにもそんな喧嘩腰にならなくたって……」


 止めに入ろうとした龍平の肩に、そっとタエニアの掌が置かれた。

 驚いて振り返った龍平に、タエニアは無言で首を横に振ってみせる。


 ミッケルとバーラムの言い合いに比べたら、今の会話など日常の挨拶の範疇だ。

 貴族社会に身を置くタエニアにしてみれば、この程度で腰が引けているようではこの先が不安だった。


――そうですね、閣下。賢明なご判断を――


 放っておけばいつまでも続きそうな言葉の応酬は、レフィがあっさりと退いたことで終わりを告げる。

 だが、最初からこれでは次のテーブルからどうなることやらと、既に龍平は胃が痛い気がしていた。


「我らとて、そなたとこと構えようとは思わん。程良い付き合いができることを願うとしよう。フレケリー卿、いろいろと期待しておるでな」


 刃を収めたキルアンの表情が、一瞬で穏やかに変わる。

 大人の世界の恐ろしさを、龍平は垣間見た気がした。


「はい……。精一杯勤めますので、よろしくお願いいたします……」


 完全に飲まれた龍平は、なんとか言葉を捻り出すとキルアンに一礼する。

 レフィは呆れたような視線を、龍平に向けていた。


――何飲まれてるの、あなたは。そんなことでは、何から何までむしり取られてしまうわ。あなたは、幻霧の森を守らなければならないのよ?――


 レフィの叱咤が、龍平には耳が痛い。

 もちろん、念話を向けた相手は龍平だけだ。


――分かってるって。分かってるけど、怖いもんは怖いんじゃ――


 膨れっ面をレフィに向け、当然念話も漏れないように気をつける。


「って、タエニアさん、何笑ってんですか……」


 レフィの態度と龍平の表情で、タエニアはおろか周囲の大人たちにはばれている。

 人間としての格が、根本的に違っているようだ。


「まあ、ドラゴン殿、長い年月を生きるお主と違って、こちらはまだまだ若い。ひとつ、お手柔らかに願いたいものだな」


 楽しそうな表情で、サミウル財務尚書が話しかける。

 このままでは、いつまでたっても挨拶が終わらなそうだった。


「閣下、申し訳ございません。本日はご光臨の――」


「あー、よいよい。ひとりひとり同じことを言っていたら、いつまでたっても食い物にありつけんぞ。そのようなことは、殿下ひとりにでも言っておけば、それで充分。それよりも、そなたに聞きたいことは山ほどあるからな」


 型通りの挨拶を遮り、サミウルは気さくに話しかけた。

 両尚書の性格の違いなのか、それともその場で硬軟使い分けているのか、それは分からなかったが、龍平にはちょうどいい助け船となっていた。


「え? 何でございましょう、閣下。俺……私に答えられることでございましたら……」


 それでも、最後のひと言に身が竦むような思いに捕らわれる。

 まさかここで正体について切り込むとは思えないが、知識を試されることは間違いない。


「そんなに身構えるな。ここで長々と話をしようというのではない。言葉のあやだ。おもしろい計算の仕方を知っておるそうだの? あとでひとつご教授願おうか。賠償金を決めなくてはならんからの」


 ミッケルが大丈夫だと判断して漏らしているならば、特に問題はないはずだ。

 しかし、サミウルの表情から賠償金の学が適正なのか、それとも非常識なのかは窺えなかった。


――たしかに、あれは私たちから見ると非常識、いえ、もう魔法に等しい早さね。仕組みと理屈が分かれば、誰でもできるけれど――


 特殊技術だと思われると、あとあと面倒だ。

 レフィはさりげなく、たいしたことではないとアピールしていた。


「はい。詳しくはのちほどになりますが、私はあの程度の計算であれば、しょ……いえ、七、八年前に習得しております」


 あやうく小学校と言いそうになり、龍平は慌てて言い直す。

 だが、隠すところは、そこではない。


 既に周囲の耳目は集まっていた。

 ある程度龍平の正体を把握している王太子や両尚書とは違い、招待されている伯爵以下の法衣貴族や、地方領主たちの視線は間違いなく鋭くなっている。


 龍平は現代の地球でもよくあるように、この世界では実年齢より若く、もしくは幼く見える。

 見ようによっては、この世界での成人年齢である、一五歳程度にしか見えていない。


 それが七、八年前に財務尚書をしておもしろい計算法を習得していたとなれば、その教育レベルは相当のものと思われてしまう。

 それは、自分が属する国さえ知らぬ山奥出身の少年が、受けられるようなレベルではなかった。


「さようか。若いのう。ま、あとでゆっくりと聞かせてもらうとしよう。それで構わんかな、ご両所?」


 失言に気づいたレフィに小突かれる龍平を見て、サミウルは苦笑いを浮かべながらアーノルとトロン神官長に話を振る。

 面倒な挨拶を省こうという、ちょっとした配慮だった。


「はっ、私どもも、それで結構でございます。ご教授願いたいことは、フレケリー卿にもドラゴン殿にも、山ほどございますれば」


 愛娘より若い龍平を見て、アーノルの心が痛んだ。

 もし、自分の愛娘が同じ境遇に落とされたとしたら、我が身を引き裂かれるよりつらいと率直に思う。


 この少年にも、親兄弟がいるはずた。

 当人だけではなく残された者たちの心境を思うと、神殿の不始末を伏して詫びたい衝動にアーノルは駆られていた。


「アーノルよ、それより先にせねばならんことがあろう。フレケリー卿、立場などという下らぬことのために後回しになってしまうが、この場は収めてくれぬか」


 好々爺然としたトロンが、アーノルをたしなめるように言って龍平に向き直る。

 さすがに衆人環視の中、ガルジオンにおけるブーレイの総帥が頭を下げるわけにはいかなかった。


「アーノル様、トロン神官長、その件につきましては、また場を改めて。私に含むものはございませ……いえ、何でもございません。失礼いたしました」


 前半はレフィの念話に合わせていたが、アドリブをかましたところで、またレフィに小突かれる。

 謝罪の件を誤魔化しておきながら、自ら口にしてしまっては台無しだった。


――アーノル殿、神官長。私たちもいろいろとご教授いただきたいことがございます。一度、神殿にお邪魔させていただけないでしょうか? 改めてご都合のよろしい日を、お知らせ願えればと――


 取り繕うように話を変えたレフィは、腹の中で龍平に毒づいている。

 いくら平和な世界にいたからといって、これではあまりにも子供過ぎだ。


 この世界は、間違いなく優しくない。

 このままでは、大人たちのいい食い物にされてしまう。


 騎士の礼法に関する修行が一段落ついたら、幻霧の森に腰を落ち着ける前にケイリーの領地へ行かせてもらおう。

 蠱毒まみれの王都ガルジオンではなく、もう少し剥き出しの人間関係を学んだ方が良さそうだった。


「い……ああ、それは……」


「そうじゃのう。一度ゆっくりと起こし願おうかの。アーノルよ、何か問題でも?」


 ナルチアを思い出して言い澱むアーノルに、トロンが言葉を重ねた。

 もちろん、トロンがナルチアのことを知らないはずはない。


 火に油を注ぐようなことを、なぜわざわざしようとするのか、アーノルには理解しがたい。

 それとも筆頭巫女を更迭せよとのことなのか、それまでにナルチアをおとなしくさせろとのことなのか、咄嗟のことにアーノルは混乱するばかりだった。


 もちろん、ミッケルから聞かされていた龍平とレフィは、アーノルが言い澱んだ理由を解っている。

 トロンが何を考えているかは知らないが、跳ねっ返りに一度会っておいて損はないと思っていた。


 いきなり命を狙うようなマネはしないだろうし、レフィがついていてそれを黙って見過ごすはずもない。

 何より神殿自体が、それを許すわけがなかった。


 おおかた、召喚の儀ができない憂さ晴らしか、神殿にケチをつけた存在とでも思っているのだろうとレフィは考えている。

 ならば、一度会って考えを見極め、必要に応じて脅しつけるなり宥めるなりすればいい。


――はい。神官長にそう仰っていただけるなら、喜んでお邪魔させていただきますわ。いいわよね、リューヘー?――


 トロンが差し出してくれたアドバンテージに乗らせてもらい、レフィは龍平に答えを求める。

 もちろん、念話での先導付きで。


「ああ。ありがたく、お誘いにあずかろう。神官長、日を改めてゆっくりとお目にかかりましょう。アーノル様、慌ただしくて申し訳ございません。本日はありがとうございます。ごゆっくりお過ごしください」


 レフィの囁くとおりに龍平は挨拶し、主賓のテーブルをあとにする。

 そして、タエニアの先導に従って、次のテーブルへ挨拶に向かった。




「リューヘー様、次の方々は、この国の近衛と軍を統べる皆様でございます。近衛騎士団長が伯爵スティルバイ・ラ・バフラー卿。そして王国軍軍団長の伯爵リパロス・デ・ラトゥーレ・エリン卿は、戦の際にはリューヘー様の謂わば上司となられる方。お心にお止め置きください」


 タエニアが重要な情報を、耳打ちしてくる。

 知っているといないでは、大きな違いだ。


――私の知る限り、近衛騎士団と、王国軍は独立しているわ。王都の最後の守りが近衛騎士団。そして、実際に戦場に立つのが王国軍よ。軍団長を頂点に、師団長、千騎長、百騎長、十騎長の順ね。で、あなたは叙爵に伴い、十騎長になるの――


 レフィが軍の編成について補足する。

 この辺りは、二〇〇年程度では変化がなかったようで、タエニアも特に口を出していない。


 騎士団長と軍団長は、伯爵の中でも特に評価の高い家が勤め、千騎長を束ねる師団長四人の伯爵がその下につく。

 千騎長を男爵が、百騎長を準男爵が勤め、龍平たち騎士爵が十騎長となる。


 とはいえ、その数の騎士を率いるのではなく、あくまで職の名称だ。

 それぞれの領地から、できうる範囲で領民を動員することになる。


 もちろん、領地の状況によっては、百騎長の方が千騎長より動員力がある場合もある。

 そして、戦闘単位は領地ごとであり、規模の小さい騎士爵は懇意にしている千または百騎長の指揮下に入ることが通例だった。


「タエニアさん、ありがとう。レフィ、助かる。って、なんだよ、それ? 俺は戦争なんか行きたくねぇよ」


 危うく聞き流すところだったが、龍平はとんでもないことに気がついてしまった。

 知らぬ間に、軍に取り込まれていた。



「仕方がございません。それがこの国の決まりでございますので。高貴なる義務とお心得くださいますよう」


 タエニアが同情するような目で、だがきっぱりと言い捨てる。

 いわゆる、ノブレス・オブリージュというやつだが、当然その意味を龍平が知るはずもなかった。


――そうね、貴族としての教育なんて、あなたの世界にはないものね。領地のすべてがあなたのものになる代わりに、果たす義務と思いなさい――


 周囲には伝わらないよう、龍平とタエニアのみに念話を飛ばす。

 しかし、七〇年以上の長きにわたり、戦争とは無縁の国に育った龍平にとって、戦場に立たなければならないなどまっぴらだった。


「でもよ……、俺にそんなこと、できるわけねぇよ……。戦争なん……て……」


 盗賊に襲われたなら、まだ偶発的なこととして殺人を消化していた。

 だが、戦争となると、また話が違ってくる。


 うまく説明ができず、龍平はもどかしい思いに囚われている。

 旅の途中の危険に備えることと、あからさまに人殺しの準備をして、人を殺す意志を持って出かけることは、龍平の中では別物だった。


「そろそろ参りましょう。スティルバイ様もリパロス様も、痺れを切らしておいでです」


 タエニアの言葉は、まるで死刑宣告のように龍平には聞こえた。

 生きている世界が違うことを、龍平は否応なしに思い知らされている。


――ほら、しゃんとしなさい。何も今すぐ戦争に行くわけじゃなし。その辺の覚悟は、追々で構わないわ。いざとなれば、私がついているわ――


 思わず後込みしている龍平を、レフィが後ろに回って押し始める。

 端から見れば小さな龍が、大貴族相手に怯む主人を無邪気に押しているような、微笑ましい光景だった。


「分かった。分かったから押すな。タエニアさん、とりあえずよろしく」


 やっぱりこの人、俺のこと嫌いなのかと思いつつ、龍平は職業軍人たちがたむろするテーブルへと歩を進める。

 龍平には、そのテーブルだけが異質な空間に見えていた。




「おお、やっと来たな、坊主。どうした、腰が退けてるじゃねぇか。そんなへっぴり腰じゃ、敵はぶった斬れんぞ」


 既にエンジン全開のスティルバイが、龍平より先にワインのピッチャーを差し向けてくる。

 周りのひとびとは、それをまたかといった視線で眺めているだけだ。


「やだやだ。これだから職業軍人ってやつぁ。フレケリー卿、気にすることはない。こいつは騎士団にいるときと酒の時は正反対の性格になるんだ。気楽にやってくれよ。スティルバイ、最初くらい作法に則ってやらんか」


 横からリパロスが助け船を出した。

 荒々しいスティルバイと違い、落ち着いた雰囲気を持つ人物だった。


「言ってくれるな、リパロス。なぁにが、こいつは正反対の性格だぁ? それは、そっくりそのまま、おまえに返してやらぁ。いいか、坊主。こいつにこき使われて死なねぇように、充分気をつけるこったぁ。ほら、礼法なんざ殿下んとこだけでたくさんだ。飲め飲め」


 気さくなのか、無遠慮なのか、それとも傍若無人なのか。

 礼法や礼典に人一倍厳しいはずの騎士団長が豪放磊落で、戦場を駆けめぐる軍団長が細やかな心配りの人というのもおもしろい組み合わせだった。


 いつの間にか龍平の手には杯が持たされ、ワインで満たされている。

 男たちの視線が、龍平に集まっていた。


「ま、仕方ないから、まずはそれを空けるんだな、フレケリー卿。それで、君のところは何人くらい、動員に応じられるのかね?」


 穏やかな表情で、リパロスが言う。

 とりあえず、空けないことには話が進まないようだ。


 タエニアもレフィも、既にフォロー不能と諦めている。

 それでもレフィは、水属性魔法の解毒を使うどうかで迷っていた。


「はい、いただきます……。ふぅ……。ド、動員ですか? 俺と、レフィ?」


 戦力的に充分すぎるほど、充分だ。

 それ以前に領民自体いないが。


「ぷっ! こりゃぁ、いい! そのドラゴン殿がホンモノってヤツなら、それだけでおれたちゃぁ、お払い箱だぜ、リパロス。あの戦闘詳報が本物なら、な」


 ケイリー暗殺未遂事件の詳細は、ミッケルとの連名で報告されている。

 当然、このテーブルの男たちは、それに目を通す立場の者たちだ。


 レフィというより、ティランの暴威は承知している。

 こいつは王都の守りだと、スティルバイは決めていた。


 龍を戦場に出したら、騎士の誇りも何も台無しだ。

 こんな危ない終末兵器を、戦場に出すわけにはいかなかった。



「そうだな。フレケリー卿、まだ領地を見ていないのかね? 早めに検分して掌握することだ。そちらのドラゴン殿が想像を絶する力を持っているとしても、ある程度の体裁は整えなければ他の諸候や諸卿が納得しないのでね」


 リパロスは笑い飛ばすこともなく、穏やかなまま龍平にアドバイスを送る。

 戦闘が始まってしまえばともかく、龍平とレフィの一騎だけでは周囲とギクシャクしかねなかった。


「はい。ありがとうございます、エリン卿。そこは信頼できる者と、早急に詰めたいと存じます。本日はお越しくださいまして、まことにありがとうございます。どうぞ、ごゆっくりお過ごしください」


 やっと挨拶らしい挨拶ができて、龍平はほっと胸をなで下ろした。

 だが、男たちが次々に、ワインのピッチャーを差し出してくる。


 これでは次のテーブルに回る前に、龍平が酔い潰れそうだ。

 いや、若さに任せて飲んでいる分、いつ突然崩壊するか予測ができない。


 ここは、いっそのことしばらくの間のませておいて、次のテーブルへ向かう前に中座させた方が安全だ。

 次のテーブル以降にはタエニアを向かわせ、スティルバイに捕まったことを報せておけばいい。


 レフィはそのことを、タエニアだけに念話で伝える。

 次のテーブルに向かうタエニアの背中を見送ったレフィは、ティランの魔法ライブラリから解毒の魔法を選び始めた。


 龍平の足元が、揺れ始めている。

 レフィは、一刻の猶予もならないかも知れないような、そんな気がしてきた。

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