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転生龍は人と暮らす  作者: くらいさおら
第三章 王都ガルジア
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54.冒険者の憂鬱

 龍平が叙爵式へと連行された朝、ミウルはバッレに伴われて王都ガルジア冒険者互助会、通称王都冒険者ギルドの事務所へと向かっていた。

 王都に到着したその日に向かうべきではあったが、ミッケルの配慮で数日の猶予を取っていた。


 当然到着時には先触れが事務所に連絡済みであり、貴族からの申し入れに異を唱えることはなかった。

 もちろん、ふたりの仲間を失ったミウルへの気配りであり、落ち着いて報告できるようにとの配慮だった。



 数日のうちにミウルも落ち着きを取り戻し、ルテッセとラバレイの埋葬も済ませ、バッレの手を借りて報告書をまとめている。

 文字を読み書きできても文章を書けないミウルにとって、バッレの手助けは必須だった。


 言うまでもなくバッレにミウルの手助けを命じたのはケイリーだ。

 そこには純粋な同情と、幾ばくかの下心が含まれていた。




 ミウルは、ここ一〇日ほどのめまぐるしい日々を思い出し、ギルドの扉の前で溜め息をついた。

 最後にここを出てきたとき、ミウルの両側にはひとりずつ仲間が立っていた。


 それが今では、もういない。

 ギルドで知り合った同業者が還らなかったときは、これほどまでに心を乱されなかった。


 この仕事が死と隣り合わせであり、いつ自分がそうなるか分からないことも、充分すぎるほど理解していたはずだった。

 割り切ったつもりだったが、いざその現実を突きつけられてしまうと、己の無力さや甘さを思い知らされる。


 幸いといっていいか分からないが、仲間たちの武器と自身の剣は、ミッケルたちが回収していた。

 引きちぎられた防具も、修理すればなんとか使用に耐えられる程度で済んでいた。


 だが、ミウルはもう冒険者を続ける気はない。

 もう二度と、あんな目に遭いたくはなかった。



 仲間を失う恐怖。

 陵辱への恐怖。

 そして死の恐怖。



 あれだけ周到な準備を重ね、万全といっていいほどの体制で臨んだ魔獣の討伐が、ほんの僅かの偶然でその三つの恐怖をもたらした。

 ミウルは、もう自分が信じられなかった。




「おい、大丈夫か? また日を改めてもいいぞ」


 扉の前で溜め息をつき、立ちすくんだように見えるミウルに、バッレが心配そうに声をかけた。

 そのときは、バッレだけが事務所に入り、事情を話してくればいい。


 あとは春を待ってネイピアに帰るだけのバッレたちは、時間だけなら充分にある。

 しばらくミウルに付き合うくらい、どうということはなかった。


「……いえ……、行きます。今逃げたら、一生逃げ続けるようになりそうですから」


 バッレの言葉に背を押されたようにミウルは前を向き、そう答えた。

 だが、その言葉は、本心ではなかった。



 もう、逃げ始めている。

 おそらく、仲間を失った現実から、一生逃げ続けるんだと、ミウルはぼんやりと思っていた。


 現実に立ち向かうなら、冒険者をやめてはいけない。

 大成できなくとも、現実を乗り越えたのちに体力の限界がくるまでは、冒険者を続けなければならない。


 冒険者以外の道を選ぶことは、恐怖と現実からの逃避に他ならない。

 ミウルは、そう思い込んでいた。


「そうかい。ならいいけどよ。ま、この報告書を読んでもらえば、いちいち説明なんざしなくていいしな。いくつか質疑応答があるだろうけど、それで終わりだろうよ。さっさと終わりにして、なんか食いに行こうぜ」


 努めて軽く、バッレは言った。

 ミウルが何を考えているか表情からは判らないが、面倒と嫌なことはさっさと済ませるに限る。


 あとは、旨いものでも食って忘れちまえばいい。

 幾多の仲間を失ってきたバッレは、ミウルにそのやり方を見せるつもりだった。


「はい……。ご迷惑をおかけします……」


 バッレに軽く頭を下げ、ミウルは意を決して扉を開けた。

 事務所いる者すべての視線が、ミウルに集まる。


「ミウルか……。待っていた。ここじゃ話辛かろう? こっちに来い。付き添いのあんたも、お願いできるか?」


 受付カウンターの中から壮年の男が立ち上がり、ミウルに手招きをしてからバッレに目礼する。

 そして、簡素な作りのドアを開け、先に室内へと消えていった。


 王都ギルドの責任者か、それに近い立場の者とバッレは素早く結論した。

 そして、ミウルを急かすようにして男のあとを追う。




 殺風景な室内で、男は窓を背に立っていた。

 年の頃は四〇前後。がっしりとした肉体の上に載せられた、鋭い目つきが印象的だった。


 短く刈り込まれた濃い栗色の髪には白いものなど見えず、それが男の精悍さを増している。

 胸の前で組まれていたたくましい腕がほどかれ、風貌に似合わぬ丁寧な仕草で、男はふたりに椅子を勧めた。


「よく来てくれた、ミウル。ここへ来るのはつらかったろう。それをこらえて、よく来てくれた。そちらのあんた、まずは礼を言う。ミウルを助けてくれて、ありがとう。俺は、ガルジア冒険者互助会の事務長代理を務めるガジョン・オスデッガーだ」


 ミウルを労い、バッレに礼を述べたガジョンが、遅れて腰を下ろす。

 鋭い眼光が、幾分か和らいだように見えた。


「どうも。ネイピア卿ケイリー・デ・アンソン様に仕えるバッレと申します。俺にお気遣いは無用に願います。あれを見捨てるなんざ、人としてどうかと思いますんで。それに、実際に助けたのは俺じゃないんで」


 ミウルに先立ち、バッレが挨拶を返す。

 思い詰めたようなミウルの発言を待っていては、いつまでも話が始まらないとみての配慮だった。


「あの……バッレさん、あたし、皆様のおかげでどれほど救われたか……。オスデッガーさん、ご心配をおかけしました」


 消え入りそうな声で、詳しくはこちらを、と付け加えながら、ミウルは報告書を差し出した。

 それをガジョンは受け取り、素早く目を通す。


 既にギルドは調査に動き、ミッケルからの先触れから得た情報と合わせ、現地の状況も概ね掴んでいる。

 あとは、ミウルの見てきた真実と、調査の結果に食い違いがないか確認するだけだ。


 今さら死体にむち打つつもりなど、ギルドにそのようなつもりはない。

 ただ、今後防げる事態であれば、その教訓を得ようとしているだけだった。



「よくまとめてくれた。ミウル、礼を言う。つまり今回の件は、偶然がすべて、ということだな。なんて言っていいか分からないが、力を落とすなよ」


 無謀に突入したわけではなく、入念な下調べや現地調査を実施した上での不幸な出来事だ。

 ミウルたちが万全を期すため、拠点としていた村に戻った僅かの隙が、盗賊団の侵入を見過ごすことにつながっていた。


 それまで情報がなかった盗賊団を、警戒しろと言う方が無理なことは、誰の目にも明らかだ。

 誰かひとり哨戒に残せというのは、後知恵にしかすぎない。


 仮に残したところで、盗賊団に捕らえられ、さらに悲惨な結果を招いたかもしれない。

 いずれにしろ、ミウルたちに過失はなく、依頼元からの事前情報に虚偽もなかった。


 ひとつのパーティが壊滅し、結果的に依頼元の脅威も取り除かれ、この先悩みの種になりかねなかった盗賊団が消滅した。

 それ以上でも、それ以下でもない。それがギルドとしての結論になった。



「あたしは、何もできませんでした。ルテッセもラバレイも、助けられなかった。もう、冒険者を続けることはできません……自信、ないんです」


 目を伏せたまま、ミウルは廃業を口にした。

 垂れ下がった前髪に隠れて見えないが、ときおり落ちるしずくは両目から溢れたものだろう。


「そうか。解った。廃業は受理する。お節介かとは思うが、辞めてどうするつもりだ?」


 ガジョンは引き留める素振りも見せず、ミウルの廃業を認めた。

 心が折れた冒険者を無理矢理引き留めても、依頼を受けなくなるだけか、自暴自棄に陥って死ぬだけだ。


 それを知り尽くしているガジョンは、留意など無駄だと分かり切っていた。

 だが、自分の娘のような年頃の女が、この先どうやって生きていくつもりなのか、それだけは聞いておきたかった。


 確たる意志を持って次の道を選ぶなら、それをとめるつもりも権利もない。

 たとえそれが、娼婦に身をやつすとしてもだ。


 だが、あてもなくさまよい続けた挙げ句に、色街に身を沈めるのであれば防ぎたい。

 ギルドの職員として雇うことはできないが、馴染みの店の店員くらいであれば斡旋できなくもなかった。



「ミウルさん次第なんですが、よかったらウチの村に来てもらえないかと。なにせ、ネイピアは田舎中の田舎ですから、いつだって人手が足りねぇんです。今この場でいきなり言い出すのもなんですが、ウチの村としちゃ歓迎するつもりなんですがね」


 考えあぐねて答えに詰まるミウルを見て、バッレはケイリーと相談していたことを話した。

 当然、慈善活動などではなく打算も下心も満載だが、ガジョンはそのようなことを気にするつもりはなかった。


「バッレさん、そりゃ本当かい? まあ、ミウル次第だが、そうしてくれりゃあ助かるな。俺が紹介できるのは、せいぜい酒場の女給くらいだからな」


 ほっとしたような表情で、ガジョンはバッレに聞いた。

 だが、この場でミウルの意向を確認することも、ネイピア行きを強要することもしなかった。



 ミッケルと組んで、カナルロクの国境侵犯を叩きのめしたネイピア卿の勇名は、ギルドにも知れ渡っていた。

 正義感溢れる領主が率いる、規律正しい勇士たちの村だ。


 そんな村に移り住めるのであれば、とめる気などさらさらない。

 農村出身というミウルの生い立ちを鑑みれば、王都生まれの王都育ちより溶け込むのにも苦労は少ないだろう。


 それを考えればガジョンとしては勧めたいところだが、あくまでもミウルの意志が最優先だ。

 どうすればいいか解らなくなって相談されるまでは、ガジョンから勧めるつもりはなかった。


「ええ。ミウルさんには是非いい返事をと思ってますが、今の今で返事してくれとは言えません。もし、王都に残るってんなら、ひとつ相談に乗ってやってくれませんか」


 バッレとしても、無理に強要などして断られたくはない。

 とりあえず、今は可能性を提示するだけに留めておく。


 本心を言えば、なにが何でも来てほしかった。

 この数日というもの、バッレの心にはミウルが住み着いてしまっていた。


 二〇歳を過ぎているとはいえ、男はいつまでも男の子のような青臭い正義感を持ったままだ。

 今の状況でミウルにネイピア行きを強要することは、弱みにつけ込むようで言い出せなかっただけだった。



「あの……バッレ、さん? あたし……」


 唐突な状況変化に、ミウルの思考はついていけなかった。

 戸惑いながらもバッレの真意を聞こうとしたが、上手く言葉が出てこない。


「ミウルさん、今は答えなくていい。いきなりこんな話、いいも嫌もないだろ? ただ、俺たちは、いや、俺は真面目に考えてるから、ミウルさんも心に留めといてくれないか」


 慌てた様子のミウルを見て、バッレの方があたふたしている。

 今はミウルを落ち着かせなければ、その場の勢いで答えかねない。


 それが応にしろ否にしろ、この場で出す答えがいいわけがない。

 ミウルには、一度すべてを省みる時間が必要だった。



 もし、バッレの誘いを断るなら、王都に残るか、生まれた村に帰るか、全く新しい環境を求めて王都を独り出て行くか。

 その先のリスクを、考えなければならない。



 王都に残るなら、手っ取り早い手段はガジョンに酒場の女給としての働き口を紹介してもらうくらいだ。

 だが、これは娼婦に身をやつすのと、たいして変わりはない。


 酒場の女給など、その日暮らしがやっとの給金だ。

 彼の口利きがあれば、もう少しマシな給金くらいは保障できるはずだった。


 だが、少しでもいい暮らしをと思えば、酔客に身体を開くくらいしかあとはない。

 もちろん、ガジョンはそれを勧めているわけではなかったが、彼にできる限界でもあった。



 では、生まれた村へ帰るという手段は、成立するかしないかでいえば、しないとしか言えない。

 なぜ、ミウルが王都に出てきたか、それを考えれば自ずと解ることだ。


 嫁の行き先がない。

 あっても、名主連中の有力者に囲われ、日陰で生きていくだけだ。


 それなりに整った容姿を持っていても、生まれがすべてを決する農村では、貧農の次女にたいした未来は待っていない。

 後足で砂を蹴ってきた村へ帰ったなら、待っているのは嘲笑と蔑みと憐れみの上だけに成り立つ、嫌いな相手の妾の道しか残されていなかった。



 もう、ひとつ。

 独り王都を離れるのであれば、それは身体を売るしかない。


 王都を離れれば、魔獣討伐の依頼は増える。

 だが、ミウルのように討伐ができなくなった冒険者が、ありつける仕事は逆に減る。


 王都であれば家屋の修繕や物品の配達といった軽い依頼が日常的にあるが、地方に行けば行くほどその類の依頼には専門に扱う者が増えていく。

 閉鎖的な思考が強い田舎では、ふらりと舞い込んだ流れ者にプライバシーに関わる依頼をする者は、ほとんどいなかった。


 そうなれば、あとに残された資本は身体しかない。

 セルニアンでもそうだが、兼業で夜の辻に立つ者や、娼館に勤める者も少なくなかった。


 生きるために見ず知らずの者に身体を開く娼婦を、今のミウルは軽蔑などしない。

 村にいたときから、食うことの厳しさは身に染みて解っている。


 だが、どうしても見知らぬ男に身体を開くことを、ミウルは許容できなかった。

 そして見知った相手に金目当てで身体を開くことは、それ以上に耐え難いことだった。


「今すぐ決めろなんざ、誰も言ってねぇさ。春までに決めときゃいいんだろ、バッレさんよ? ミウル、慌てるこたぁねぇんだぜ」


 ガジョンにしてみれば、この話には乗ってほしい。

 おそらくはこれで縁が切れてしまう若い娘が、見える範囲で不幸に見舞われるのはいい気持ちはしなかった。


「……はい……。……よく考えてみたいと思います……」


 選択肢はないように思えるが、ミウルはまだ決断できない。

 話の展開が急すぎて、混乱の方が先に来ている状況だった。


「ま、ゆっくりと考えるんだな。困ったことがあったら、俺でも誰でもいいから訪ねてこい。冒険者を廃業したら、縁を切らなきゃいけねぇなんて決まりはねぇからな。ただ、ヘンな奴らには引っかかるなよ」


 ガジョンはそう言って、聞き取り調査の終了を告げる。

 調査結果の食い違いがないのであれば、根掘り葉掘り聞いてもたいして新しい情報があるわけでもない。


 元々この聞き取り調査事態が、ミウルの今後に関することが主だ。

 バッレから移住を提案されたことで選択肢が増えたなら、あとは選んだ結果だけ聞かせてくれたらそれでいい。


 冒険者として登録している者すべてが、善良な人間ということはない。

 裏ではなにを考えているか、解らないのが人間だ。


 心が弱っているときは、特につけ込まれやすい。

 パーティに入ったはいいが、こき使われてポイ捨てにされることも少なくはない。

 そのまま性奴隷のような扱いを受けることも、娼館に売り払われることも皆無ではない。

 警察権など持たないギルドに、すべてを防ぐことはできるはずもなかった。



「はい……。オスデッカー事務長代理、短い間でしたがお世話になりました。……お心遣い、ありがとうございます……きっと、お報せにあがります」


 深々と頭を下げたミウルは、部屋を出た。

 バッレもガジョンに一礼し、そのあとを追う。


 残されたガジョンは報告書に目を落とし、深く溜め息をついた。

 この仕事を長くやっていれば、今回のようなことは珍しくもない。


 だが、当事者にしてみれば、一生を左右する一大事だ。

 そのケアもできずに互助会など名乗る資格があるものかと、ガジョンは常々思っていた。


 ガジョンは事務室に行くと何人かに声をかけ、数件の馴染みの店に連絡するように伝える。

 そして、最後のひとりには、ケイリーに連絡するように命じ、自室へと戻っていった。




「あの、バッレさん! さっきの話……本当、ですか?」


 ギルド事務所近くの食堂で、テーブルを挟んで向き合ったバッレにミウルが聞く。

 心が、揺らいでいた。


 王都に残るにせよ、ネイピアに行くにせよ、別にふるさとには関係のないことだ。

 せいぜい、それほど多くない友人知己に、別れを告げるだけで済む話だった。


「ああ。ケイリー様とも話していたんだが、俺たちにしてみれば、村の人口が増えることは歓迎だ。ただ、ミウルさんの弱みにつけ込むようで、なかなか言い出せなかったんだよ」


 堅いパンを引きちぎり、スープに浸しながらバッレは答えた。

 王都では柔らかいパンも市販されているが、バッレにすれば腹持ちが違うらしい。


「でも、いきなりあたしみたいのが行っても、嫌がる人とか、戸惑う人とか、困る人とかいるんじゃ……」


 地方の農村がどれほど排他的か、出身の村を考えればミウルにはよく分かっている。

 しきたりや暗黙の了解は、決して余所者には教えず、陰湿な嫌がらせがあることはどこでも同じだ。


 地方の現実を肌で理解していない、ガジョンのような王都住民には理解し得ない、深い闇がそこにはある。

 自身の目で見てきたことであるがゆえ、ミウルはこの話に即答できずにいた。


「ま、そりゃそうだ。ミウルさんは解ってんだから大丈夫だろ。それに、ご領主様の決定だ。事故ってなあ、いつ遭うか判らないもんだよなぁ」


 その先は言わなくても解るだろ、と視線に乗せてミウルを見た。

 もちろん、ケイリーの庇護に甘えるだけでなく、ミウル自身の溶け込む努力が最も大切だ。


「そう……ね。うん、バッレさん、しばらく考えさせてください。まだ、あたし決断できない……から」


 ミウルは前に置かれたスープの皿に、視線を落としながら答えた。

 本心では連れて行ってほしいが、異分子扱いに耐えきることができるか、その自信がない。


 領主の庇護下にあるなら滅多なことは起きないだろうが、僻みや妬みといった悪感情が渦巻く可能性が大きい。

 近々アミアと結婚するらしい領主が、早々に妾として囲うつもりなのかもしれなかった。


 ミウルの考え過ぎなのだが、心が弱っている今は何でも悲観的に考えてしまう。

 王都に残ってもろくな未来が見えないミウルは、疑心暗鬼と混迷のまっただ中に放り込まれていた。

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