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転生龍は人と暮らす  作者: くらいさおら
第二章 セルニアン辺境伯領
43/98

43.別行動の朝

 朝に吹く冷たい風が、セルニアに冬の到来を告げていた。

 王都への出立も準備を急がなければ、途中で雪に見舞われかねない時期になっている。


 この日、龍平は珍しくレフィとは別行動で、野外で着られる服や夜具を探しに来ている。

 幻霧の森を旅立つときに、セリスがお手製の服や夜具を持たせてくれたが、どれも夏から秋のこしらえだった。


 季節に合わせて厚手の衣服を買い足してはいたが、本格的な冬の旅を前にしてコートのようなものが必要になっていた。

 さすがに雪が降るかもしれない道中に、町中で着るような服装で飛び出す莫迦はいない。


 もちろん別行動の理由は、女の子を連れて服を買いに行くといつまでたっても終わらないと、彼女持ちの友人から聞かされていたからだ。

 実体験なんかないけどな!


 だが、騎士爵ともあろう者が独りで町をうろつくなど、体面にかかわることだった。

 そのため、ミッケルから侍女をひとり、強制的に貸し与えられていた。



「タエニアさん、これなんかどうですかね? 俺、あまりこういうの詳しくないんで、教えていただけるとありがたいんですけど」


 龍平はハミルに紹介された衣料店で、商品を片手に侍女に尋ねていた。

 タエニアには龍平が見せるコートを一瞥し、僅かに表情を曇らせるが、すぐに平静を装っている。


 本来であれば騎士爵たる者が既製品、それも古着を買うなどあり得ない。

 だが、今は急を要するため、仕方ないことだった。


 もちろん、タエニアは龍平が庶民だったことを承知しているし、今の状況も理解している。

 それでも習い覚えた侍女としての習性が、たとえ上質であっても古着を忌避させていた。


「申し訳ございません、リューヘー様。これであれば、相当の風もしのげるのではないかと存じます。あと、こちらのチュニックと下穿きがあれば、冬の寒さもしのげましょう」


 やはり教育が行き届いているのか、タエニアは平静を保ったまま的確に商品を選別していく。

 元は商家の出というだけあってか、その目は確かだった。


「じゃあ、それにします。会計をお願いしてもいいですか?」


 最低限必要な物は、これで揃うはずだった。

 やっと買い物から解放された龍平は、安堵の溜め息をついていた。


 やはり趣味の物を選ぶのとはわけが違い、それなりの見てくれや品質を選択しなければ立場がない。

 幸いにして資金それなりに潤沢だったが、審美眼に不安しかない龍平にとって、タエニアの存在は煩わしくもありがたかった。


「かしこまりました。では宿に運ぶよう、手配してまいります」


 龍平に一礼し、タエニアは店員に指示を出すため離れていく。

 決して不愛想なわけではないが、侍女として一歩退いた態度がどうしても息苦しく感じられてしまっていた。



「お待たせいたしました。次のご予定はございますか?」


 レフィとなら気楽なのにと考えていた龍平に、タエニアが声をかけた。

 やましい思いを抱えていたせいか、龍平は飛び跳ねるほど驚いてしまった。


「ひゃいっ! と、特にありませんけど! お、お茶っ! お茶でもいかがですかっ!」


 怪しいよ。

 タエニアさん、どん引きしてるよ。


「……。ぷっ! リューヘー様、謹んで、お供いたします。今後、レディをお誘いなさる際は、もう少しスマートになされませ。騎士たる者のたしなみでございます」


 呆気に取られ、しばらく固まったタエニアは、こらえきれずに吹き出してしまった。

 仮にも騎士爵に、それも純然たる法衣貴族の侍女が、取っていい振る舞いでは決してない。


 それでも龍平の素性を知っている店の者や買い物客は、タエニアを咎めるような目で見ることはなかった。

 それどころか、まだ修行が足りないと、応援するような視線が龍平に注がれている。

 まだ叙爵してないからセーフ。龍平は心に叫んでいた。




「いや、ホントありがとうございます。考えなしに口にしちゃったのに。あれで断られてたらどうしようって、ずっと考えちゃいましたよ」


 以前ハミルと来たことのある食堂で、龍平はタエニアと向き合ってお茶を飲んでいた。

 形の上ではナンパに成功はしたようなものだが、ここからどう話を膨らませるか、龍平には皆目見当がつかない。


「いえ、わたくしにも好都合でございました。これから王都までご一緒する方のひととなりを、知っているのといないのでは大違いでございましょう。お近づきになれる機会をお作りいただき、感謝しております」


 いきなりそうきますか。

 身も蓋もありませんな。


 それでも、不快感を起こさせない所作や言葉の運びは、さすがミッケルの側付きになるほどの人材だ。

 育ちの良さが垣間見える仕草で、優雅にカップを口に運んでいる。


 服装で身分を表していなければ、どちらが貴族なのか判らないほどだった。

 生まれも育ちも純然たる庶民の龍平には、逆立ちしても出せない雰囲気をまとっている。


「そう割り切っていただければ、俺も気が楽です。で、いかがですか、俺は。ミッケル様のそばに置いておけそうですか?」


 余計な警戒をされるくらいなら、今の方がいっそ清々しい。

 ならば、こちらも必要以上に気を使うこともなかった。


「毒にも薬にも……。ええ、いろいろと心配でございます。ミッケル様もリューヘー様も。あなた様の底が見えません。わたくしといたしましては、あまりお近づきいただきたくはございませんが、ミッケル様がああも楽しそうにしていらっしゃるのを拝見すると、お諫めするのもいかがなものかと……」


 龍平のことも、一応は気にかけてくれているらしい。

 だが、ミッケルを第一に考え、場合によっては龍平を排除することも考えているようだった。


「こりゃまたはっきりと言ってくれますね。まあ、そりゃそうでしょうね。俺の素性はあからさまに怪しすぎますし。全部は聞かされてないんでしょ?」


 確かめたところで、はぐらかされるのがオチだが、それでも龍平は聞いてみた。

 もちろん、ミッケルが知らせていないことを、ここで口にする気はない。


「はい。誤召喚の被害者で、ご自分のお生まれになった国すら判らない山奥育ちの割には、テーブルマナーや未知の知識に通じた庶民が、ネイピア卿救援程度の功で騎士に叙爵されることになった、くらいのことは」


 嫌味とも、薄ら笑いとも取れそうな笑みとともに、タエニアは龍平について知るところを口にする。

 その笑いの裏に、龍平の正体が隠されているのかは、読みとることはできなかった。


「なんだか、ちょいちょい刺さるトゲがありますね。タエニアさん、俺のこと嫌いでしょ」


 龍平も負けじと薄く笑みを浮かべ、精一杯の嫌味を言ってみた。

 もっとも、貴族社会の裏方を泳ぎきっているタエニアとは、格も役者も違っていたが。


「あら。わたくし何か失礼を申し上げてしまいましたか? リューヘー様のことは、レフィ様を含めて大変好ましく存じておりますの。是非また、こういった機会にお誘いいただければと」


 タエニアは、さっきとは違う弾けるような笑みを浮かべてはぐらかす。

 ミッケルの命だけではなく、独自に調査を行っているようだった。


「はい。是非また。じゃあ、そろそろ戻りますか。昼までに帰るとレフィには言ってありますので。ミッケル様のご逗留先までは、ご一緒させていただきますね」


 そう言って、龍平は席を立つ。

 女の子のエスコートなどしたことはないが、せめて送っていくくらいはしておきたかった。


 龍平に続いて、タエニアも席を立った。

 仕立てのいいメイド服に、透き通るようなプラチナブロンドがよく映えている。


 ふたりは周囲の視線を集めながら、静かに店を出てく。

 慣れないシチュエーションに、龍平は汗が流れるのを背中で感じていた。




 龍平が冬物衣料を選んでいた頃、レフィは鞍の最終チェックと携行食糧類の買い出しに来ていた。

 やはりこちらにも侍女がついていたが、それだけではなかった。


「レフィちゃん、私も乗せてくださる? ちょっとその辺り飛ぶだけでいいのだけれど……」


 艶やかな亜麻色の髪を腰まで伸ばした三〇代前半の女性が、妖しくしなを作ってレフィに言い寄っている。

 もっとも中身が若い女の子のレフィにまったく効果はなく、ただ困惑するだけだった。


「レフィ殿は御用向きがあって、こちらにいらしているのです。その邪魔をするのを、見過ごすわけには参りません」


 亜麻色の強い癖っ毛をショートボブに整えた少女が、たしなめるように強く言い放つ。


「レフィ様、荷物はすべて宿にお届けてしていただくよう手配なさいますか?」


 困惑するレフィとは対照的に、ミッケルからつけられた侍女のエヴェリナが、鞍やバッグの配送の手配を淡々と進めている。

 我関せずとは、まさにこのことだ。


――えっと、手配はお願いするけど、少し待っていただけるかしら、エヴェリナさん。ちょっと雲行きが怪しくなってるから――


 そう言ってレフィは、またふたりに目を向ける。

 ふたりは、徐々にヒートアップし始めていた。


「あなたばかり空を飛んできたなんて、そんなのずるいわ。私だってたまにはいいじゃないの」


 年若い娘向けの騎乗服に身を包んだ女性はレフィに乗る準備は万端だが、少女に行く手を阻まれている。

 どうみても三十路の女性とは思えない、若々しい格好がかえって痛々しい。


「お母様、なんですか、はしたない。領民の皆様の前で、恥ずかしいマネはおやめください。私は事前にお願いして、快諾を得ております」


 セルニアン辺境伯妃ラナイラ・デ・ワーデビットは、まるで少女のように駄々をこねていた。

 もし、館に置いてきたラーニーやヨークが知ったら、当分口も聞いてくれなくなりそうな言動だ。


「そうだとしてもよ。私は乗ってはいけないなんて、そんな殺生なこと……。ね、レフィちゃん、お願いだから私も乗せてくださらない?」


 娘である辺境伯一の姫チェルシー・デ・ワーデビットがいくら諫めようと、ラナイラは退く気配を見せない。

 年相応の騎乗服に身を包んだチェルシーは、似たような装いの母親にすっかり呆れかえっていた。


 レフィがこのあと予定があると知っているチェルシーは、なんとしても母親を止めたい。

 領民の目を気にしてか、普段の砕けた口調ではなくよそ行きの言葉遣いになっていた。




 ことの起こりは、龍騎士復活とレフィの試験飛行を聞きつけたチェルシーが、龍平に使いの者を送って試乗の依頼をしたことからだった。

 龍平とレフィは相談の上、安全に配慮し、飛行中はレフィに従うことの他に、いくつかの条件を付けて承諾していた。


 バーラムの許可を得ることは当然として、ラーニーとヨークには内緒であることを絶対の条件にしていた。

 さすがに馬をまだ満足に乗りこなせないラーニーと、やんちゃ盛りで言うことを聞かない可能性があるヨークを乗せるわけには行かなかった。


 そして、今日が鞍の最終チェックに合わせた依頼の日であり、既に町の外をひと回りしてきていた。

 そこへどこから聞きつけたのか、騎乗服に身を包んだラナイラが現れたのだった。

 いいんですか、奥様、そんなことやってて?



――あの、まだ時間には余裕がありますし、町の外をひと回りくらいであれば、私は構いませんが――


 少しだけ哀れになったレフィが、ラナイラに助け船を出した。


「まあ! レフィちゃん! ありがとう! 嬉しいわ! さあ! 行きましょう! 大空へ!」


 大輪の花のような華やいだ笑顔で、少女のようにラナイラがはしゃぎ回る。

 奥様、歳と立場を考えましょうよ。


「はあ……。レフィちゃん、あまり甘やかさないでほしいなぁ。いつもはきちんとしているのに、ときどきこうしてわがまま言うのよ。皆、それで苦労してるんだから……」


 思わず素の口調に戻ったチェルシーが、額に指を当てたままうつむいて嘆いてみせる。

 そんなふたりを見て、レフィはもうできなくなってしまった親孝行を、代わりにしてみようと思っていた。




「レフィちゃん、ありがとう! 私、一生の思い出ができたわ。あなたはリューヘーさんの騎龍ですから、もう乗りたいなんて言わないわ。安心してね。それから、私のことお母さんだと思っていいですからね。困ったことがあったら、いつでも相談するのよ」


 町の外をひと回りし、ヴァリー商会に戻ったラナイラが、レフィの手を取りながら言った。

 高位の貴族が持つ気品と、そうとは思えない柔らかな物腰が同居している。


――お喜びいただけたようで、私も嬉しいですわ、ラナイラ様。お心遣いにも、心よりの感謝を――


 龍の身体であるにもかかわらず、貴族の正統な礼法に則った動作でレフィは一礼した。

 気づける者であれば誰でも判る、王族に連なる高位貴族の礼法だった。


「レフィ殿とは、これで義理の姉妹となるわけですね。私も嬉しく思います。しかし、その作法はどちらで?」


 チェルシーは口調を戻しつつも、嬉しげにレフィに声をかける。

 さすがに、人前でいつまでも呆れたまま素の態度を取り続けるような、偏狭なマネはしなかった。


 しかし、場所をわきまえず、氏素性を尋ねるようなマネは不躾ともいえる。

 だが、それでもチェルシーはレフィが見せた礼法を、尋ねずにはいられなかった。


――義理の母上、義理の姉妹に隠しておくのも失礼ですね。機会を得ず、これまで申し遅れたことをお許しください。私は、元ガルジオン王国公爵ノンマルト家長女、アレフィキュール・ラ・ノンマルトでございます。ゆえあって、このドラゴンの身体を借り、二〇〇年の眠りについていました――


 再び完璧な作法で一礼したレフィの言葉に、ふたりの口が驚愕の形に開かれた。

 もちろんその自己紹介は、ふたりだけに念話で伝えている。


「ひ」


 ラナイラの口から、忌まわしいひと言が漏れ始める。


「ひ」


 チェルシーも期せずして、同じことを口にしようとしていた。


――それ以上は言わないでぇぇぇっ!――


 公爵家令嬢の淑やかさをかなぐり捨てたレフィの念話が、ふたりの脳裏に突き刺さった。

 周囲にいたひとびとの耳を、龍の咆哮がつんざいた。




――と、まあ、大変だったわ――


 宿で龍平と合流したレフィが、ラナイラのことを愚痴るでもなく話した。

 龍平は苦笑いを浮かべながら、エメラルドカラーのリボンを結んでいる。


「ま、仕方ねぇよな、なんせ支配者一族だし。よろしくやっとけば、ここでの安全が確保されるんだし。大変だとは思うけど、ひとつ頼まれてくれや。だけど、ラーニー様とヨーク様にバレたら、大変だろうな……っと、よし、できた」


 最近のレフィはチビ龍でいるときに、必ずリボンをつけるようになっていた。

 やはり年頃の女の子としては、おしゃれのひとつもしたいのだろう。


 それでも服選びをしようともしないのは、龍の身体が原因なのだろうと龍平は考えている。

 どう考えても着衣には翼が邪魔になるし、スタイルに合う服があるとも思えない。


 それを理解してか、今までレフィが服をほしがることはなかった。

 そう考えると、目の前には全裸の女の子がいることになる。


 龍平も健全な現代日本のカルマを背負う男の子だ。

 ネコミミや尻尾など、少なからずケモナー因子も有している。


 だが、それも女の子の柔肌あってこそだ。

 言うまでもなく、体毛に覆われていないおっぱいがあってこそだ。


 そうでなければ、セリスのバックチョークがご褒美になるはずがない。

 胸と胸が密着するアームロックが至福のひとときになるはずがない!

 ビバおっぱい!




 いくらそんな龍平でも、龍に発情することはあり得なかった。

 まあ、それならそれでアーリの蔑むような視線が、ご褒美になるだろうが。


 そのはずだったが、ふと気にしてしまうと、中身である本来の容姿がやはり気にかかる。

 龍平はこびりつき始めた妄想を追い払うように、数回頭を振った。


 いつになく真剣な眼差しでリボンを巻く龍平から、レフィは不穏な気配を感じ取っていた。

 しょうがないよ、男の子だもん。




 午後、冷たい風が吹く曇天の町を、龍平とレフィはうろついていた。

 それなりに格が高い宿暮らしのおかげで、日用品すら買わずに済んでいた毎日は、町を知る機会を失わせていた。


 ヴァリー商会やハミルに紹介された食堂、さっきタエニアと行ってきた古着屋以外、どこにどんな店がありなにを商っているかよく知らずにいた。

 せっかく幻霧の森を出てきたのに、それはあまりにももったいないと、ふたりは町の散策に繰り出していた。


 龍平にしてみれば、未知の異世界であり、現代日本との共通点や相違点が楽しい。

 レフィにしてみれば、なかば篭の鳥だった昔には知る機会がなかった、町の風景が楽しかった。


 王都への出立にはまだ間があるとのことなので、ふたりは以前冗談で話していた幻霧の森への里帰りを考えている。

 それならば、セリスへのみやげも買わなければと、ふたりは様々な店を覗いていた。


「レフィ、これなんかどうだろう? あんまり大きなものじゃ邪魔になるし、小さいとなくしそうだし」


 龍平は店の棚に並んだアクセサリーの材料から、石をひとつ選び出していた。

 宝石ではないが、深く落ち着いた透明感のある赤が印象的な、小指の先ほどの小さな石だ。


――いいんじゃない? あなたが考えている装身具にするにはちょうどいい大きさよ。セリスの瞳に近い色だし、あの髪の色には映えると思うわ――


 たしかに言われてみれば、ガーネットのような深い赤はセリスの瞳を思い出させた。

 無意識に選んだはずだが、やはり慕う心がそうさせたのかもしれなかった。


「うん。じゃあ、これで頼むか。革紐より、銀の細い鎖の方がいいかな」


 龍平が考えていたアクセサリーは、フェロニエールだった。

 ネックレスや指輪はありきたりすぎて、今ひとつ心に響かなかった。


 もっとも、最初にイメージした絵柄は、某国民的ロールプレイングゲームの第四作で、親の敵を追い求める褐色の肌を持つ姉妹が着けているものだった。

 あくまでもイラスト上のデザインであり、日常的に着けるには重すぎるのではというレフィの意見に従い、フェロニエールへと変更していた。


――きっと喜んでくれるわ。値段じゃないの。こういうものはね。リューヘーが選んだってことが大切なことなのよ――


 ちょっぴり悔しそうに双眸を歪め、レフィが言った。

 私だって選んでほしかったわよ。


「おう。じゃ、次はおまえのだな。どれにすっかなぁ……」


 様々な石が入った箱の中を、龍平は掻き回し始める。

 チビ龍ならさらに小さな石がいい。


 首元と角にはリボンがあるし、互いに引き立て合う方がいいだろう。

 やはり、瞳の色に近い翡翠なんかがいいだろうか。


 龍平の背後で、レフィが何度もトンボを切る。

 もちろん、はしゃいでいることを龍平に気づかれないようにだが、店員がそんな小さな赤い龍をほほえましく眺めていた。

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