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転生龍は人と暮らす  作者: くらいさおら
第二章 セルニアン辺境伯領
34/98

34.龍と少女と異世界人

 ――ティラン! だめぇぇぇぇぇぇっ!――


 赤龍のブレスが炸裂する瞬間。

 レフィが残された精神力を振り絞り、強引に身体のコントロールを奪い取る。


 喉元に迫る龍平に向けられたブレスを、止めることも逸らす余裕もない。

 レフィはありったけの力で、ブレスを飲み込むように口を閉じた。


――ガアァァァァァァッ!――


――きゃあああぁぁぁっ!――


 赤龍の口腔内で、大音響を上げて蒼い光が暴発する。

 絶叫と悲鳴が重なり合い、赤龍の巨体が暴発の反動で昏倒した。


「えっ! うっそぉぉぉぉぉぉ!」


 目の前から赤龍の巨体が消え失せ、龍平はそのまま放物線を描いて飛んでいく。

 おおよそy=-x^2+10(メートル)くらいか。


 巨木が倒壊するかのような音を立てて、赤龍が仰向けに倒れる。

 僅かな間をおいて、情けない悲鳴を上げる龍平が、大地に落下する音が聞こえてきた。


 その場にいた全員が、予想もしなかった光景に唖然とする。

 逃亡する千載一遇のチャンスを得たはずの武装集団まで、その場に腰を落としたまま倒れ込んだ赤龍を見つめていた。




「ひっ捕らえろっ! ひとりも逃がすなぁっ! バッレ! リューヘー殿をっ!」


 我に返ったケイリーから、鋭い命令が飛ぶ。

 唖然としたまま固まっていた三人が、それでようやく再起動した。


 クリフとヨグジーが、武装集団の生き残りを捕縛するため走り寄る。

 ほぼ放心状態で座り込む生き残りは、改めて数えてみると四人しかいなかった。


 バッレが砂煙を目印に、龍平の救助に走る。

 その背中を見送るケイリーの後方から、退避していた馬車が駆けてくる蹄の音が聞こえてきた。




「だめですね。恐怖が強すぎたのでしょう。完全に心を閉ざしています。これは、使い物になりません」


 武装集団の生き残りを捕縛してきたヨグジーが、ケイリーに報告した。

 誰も彼も、目の焦点が合わないまま、虚ろに口を開いている。


「まあ、いい。持ち物から身元が分かるかもしれない。手はず通り、バーラム様に突き出すことにしよう。とりあえず、そこいら辺に転がしておけ」


 片端から首を刎ね飛ばしてやりたい衝動を抑えつつ、ケイリーが命じた。

 そして、背後の街道に停車した馬車に、安堵の色を浮かべた視線を送る。


「ケイリー様、みなさまはご無事でしょうか!」


 サリサとライカがドアを開ける間ももどかしく、アミアが転がるように馬車から飛び出してきた。

 普段の慎ましさを、今はかなぐり捨てている。


「ああ、皆無事と言えば無事だ。が……レフィ殿下とリューヘー殿が、な」


 幸い、こちらに死者も負傷者も出ていないが、ブレスを暴発させたレフィと、狙いを外されて飛んでいってしまった龍平が心配だった。

 龍が伝承通りの強靱さを持っているなら大丈夫だろうし、龍に突っ込んでいく以上何らかの策を持っていたはずとは思うが、心配は心配だった。


「っ! レフィ様とリューヘー様に何が?」


 ケイリーがことの顛末を掻い摘んで話す。

 背後ではチビ龍に戻った赤龍が、仰向けのまま呆然としていた。




――……――


――ティラン、起きてるかしら……? お腹……焼けるぅ……はふぅ……――


 レフィの溜め息とともに、赤龍の口からぽふんと煙が吐き出される。

 尻尾の先が、細かく痙攣していた。


「サリサ、ライカ嬢、殿下の介抱を頼めるか? アミアはリューヘー殿が戻ったら治療を。一刻も早く、セルニアに戻らねばならん」


 ケイリーの命に従い、サリサが水で割ったワインを用意し、ライカが赤龍を抱え起こした。

 ワインを飲み下した赤龍が、辺りをきょろきょろと見回し始める。


 憤怒に我を忘れていた状態からは、脱したのだろう。

 濁ったルビーのようだった左の瞳が、深紅の光を取り戻しかけている。


――……っ! ボク……――


 我に返って呆然とするティラン。

 ひとつの身体にふたつの魂が目覚めているが、今はレフィが譲っているようだ。


――……また……ボクは……世界を……? ……ひくっ……ぐすっ……――


 ティランの目に涙が溢れ、そしてこぼれ落ちる。

 とめどなく流れる涙に、ティランの深い悔恨が見て取れた。


 龍が泣いている。

 最強最悪とまで言われた理性ある破壊神が、己が行いを悔いて泣いていた。


 前世では永遠に等しい悠久の時を生き抜き、強靱な精神力とあまたの賢知を兼ね備え、ひとびとから畏怖された龍が、子供のように泣いていた。

 忌まわしい過去を切り捨てたかのように、幼児退行した龍が泣きじゃくっている。


 涙は滂沱と流れ、足下には小さな水溜まりができていた。

 涙が瞳の濁りを浄化したのか、輝くようなルビーの光を取り戻していた。



――ティラン、泣くのはおよしなさい。私が怒りに飲まれなければ、あなたがあんな目覚め方はしなくて済んだの。それより、あなたのおかげでみな助かったのですもの。胸を張って。ね――


 ティランの悔恨は、レフィの悔恨でもあった。

 もし、あのときティランが目覚めていなかったら、レフィが同じことをしていたことは間違いない。



 解っていた。

 ティランの意識に、龍の本能に引きずられていたのは間違いない。


 いや、レフィの破壊衝動が、ティランを望まぬ意識で覚醒させていた。


――でも、ボクが……これ、ボクがやったんでしょ? やっぱりボクは……壊すことしかできないんだ……――


 赤龍から漏れ聞こえてくる、ふたつの魂による念話をケイリーは黙って聞いている。

 深い事情が解らない以上、軽々しく口を挟む気にはなれなかった。


――違うの! 私が……私が怒りに飲まれたから。私がもっと冷静でいれば、こんなことにはならなかったわ――


 レフィは暴虐と破壊衝動に溶け込みそうな、自我が怖かった。

 共生を一切否定する、殺戮に身を任せることが怖かった。


 やはり、龍が人と暮らすのは、無理なのか。

 一度は龍平に引き留められ、思いとどまったが、幻霧の森に隠生すべきか。


 いや、このまま帰っても、セリスに迷惑なだけだ。

 ティランの心が壊れたままでは、幻霧の森を破壊しかねない。


 やはり、この大陸を離れ、人間が到達し得ない最果ての地を探すべきか。

 ふたりの魂が寄り添えば、孤独にも耐えられるだろう。

 ティランが望まぬ形で目覚めさせてしまった責任を、レフィは取るつもりになっていた。



――でもっ! やったのはボクじゃないかっ! レフィが止めてたの、分かってるっ! なのに、ボクはっ! ボクはっ!――


「じゃあ、どうするんだよ。責任取って消えますってか? それとも、死にますってか? レフィ道連れにか? んなこと許さねぇぞ、このアホトカゲ」


 バッレに肩を借りて、足を引きずりながら龍平が戻ってきた。

 そして、ティランの横っ面を張るかのように、言葉を叩きつけた。


――リューヘー? 大丈夫なの? って、そんな言い方ないじゃない!――


 リューヘーの無事が判り、レフィは胸を撫で下ろした。

 だが、あまりの言いように、思わず言い返す。


「やかましい。だいたい、このアホトカゲは駄々こねてるだけだろうが。レフィもレフィだ。私が悪い、ボクが悪いって。どっちもどっちで、いいじゃねぇか」


 龍平には判っていた。

 どちらも相手を思いやり、そして自らの行動を悔いている。


 こうなると、ふたりの間に妥協が生じる余地がなくなる。

 互いにすべてを背負い込もうと、相手の負担をなくそうとしているからだ。


 だが、いたずらのかばい合いのような、なあなあで済む話ではない。

 じゃあ、ここはひとつ、痛み分けでなど、言い出せるような話ではなかった。



――だから、ティランだって悩んでるの! さっきもそうだけど、言い方ってものがあるでしょう! 私だって、こんな悩んでるのに!――


 レフィも後には引けない。

 自分を責められるのは構わない。


 だが、ティランが責められるのは、我慢ができなかった。

 ただでさえ、引き金は自分だと自覚している。


 これでティランが危険な生き物だと認識されるようなことがあったら、レフィは自分を許せなくなる。

 つまるところ、エゴから発したことでもあった。


 それはティランにしても、同じことだ。

 レフィにすべてを押しつけるなど、そうなったらティランは自分を許せない。


 どちらも、誰かに自分を許してほしい。

 無意識下で、そう願うが故だった。


「悩め、悩め。今すぐ答えが出るようなことじゃねえんだろうが。だから――」


 だから、龍平は。

 だから、口を挟んだ。


――酷いっ! ティランが何を悩んでっ! 解りもしないくせにっ!――


 龍平の言葉を食いちぎり、レフィが激昂する。

 瞬間的にティランから身体のコントロールを奪い取り、龍平に掴みかかった。


 尻尾が龍平の首に巻き付き、口腔内に赤い光が集束していく。


「ああ、解んねぇよっ! 解るもんかっ! 今いきなり言われて、じゃあこうしましょうなんて言えるほど、俺が頭いいとでも思ったかっ!」


 龍平もレフィのマズルを掴み絞め、両の鼻の穴に指を二本突っ込んだ。

 あの、一応中身は女の子なんだからさ。


――ふぎぃっ! そんなの誰も思わないわよぉっ!――


 さり気に酷い返しだな。

 鼻の穴に指突っ込まれたの根に持ってんだろ。


――ふたりとも、やめてよぉっ! ボクのことで喧嘩なんか――


 あまりのヒートアップぶりに、ティランがふたりを止めようとする。


「うるせぇっ! 黙ってろっ! てめぇにゃ関係ねぇっ!」


――あなたは黙ってなさいっ! この莫迦とっちめてやるんだからっ!――


 関係大ありだよ。

 ティランのことだよ。

 もう、何がなんだか……このふたりは……。


「それにそんな簡単な悩みなのかよっ!」


 ティランが割入ったことで多少頭が冷えたか、話が元に戻る。

 レフィのマズルを握り締める手に、いっそう力が込められた。


――そんな簡単なら誰も悩まないっ! 放しなさいよっ! んん~っ! んっ~! んぎぃぃぃっ!――


 レフィは龍平の手を振りほどこうと、その手首を掴んで暴れ回る。

 だが、龍平の首に巻き付けた尻尾のせいで、距離を取ることができなくなっていた。


「だから……くぇっ! ……俺も一緒に悩んで……やるっ! ぐっ! 三人で悩めば、げへっ! なんか見えてくるかもしれねぇだろっ!」


 龍平の顔色が蒼くなり、レフィの身体から力が抜けていく。

 それでもふたりは、意地になって相手を放さなかった。

 何があっても離れたくない、と言わんばかりに。



「ケイリー様、このままではおふたりとも……」


 アミアがふたりを心配して、ケイリーに仲裁を求めた。

 だが、ケイリーは涼しい顔で、ふたりを見つめている。


「大丈夫だ。心配はいらないよ、アミア。もうすぐ……ほら。サリサ、ライカ嬢、ふたりを馬車に。バッレ、手伝ってやってくれ」


 程なくして相打ちになって気絶したふたりを介抱するように、ケイリーは命じた。

 サリサに抱えられて馬車に運ばれていく赤龍の表情が、穏やかだったのは気のせいではないだろう。




「では、殿下、ティラン殿。よろしくお願いいたします」



 街道からしばらく歩いた草原に、八つの遺体が並べられた。

 その近くには、下は人間だったとは思えない肉塊が、ひと塊にされている。


 誰もが痛ましい表情で遺体を見つめ、頭を垂れていた。

 赤龍による火葬が、始まろうとしている。


――はい。始めます――


 ふたり分の念話が返され、巨龍が大きく息を吸い込む。

 一瞬の静寂のあと、薄い橙色の炎の奔流が轟音とともに遺体と肉塊を包み込んだ。


 燃え上がる炎の中で、浄化されるように肉が焼け消えていく。

 真っ白い骨が露わになり、生者の痕跡が消えていった。



 遺骨を家族の元に返せばそれで終わり、ではない。

 その家族に対する補償は、それだけではなかった。


 弔慰金や賠償金といった金銭による補償はもちろんのこと、男手が減った家に対するさまざまな義務の免除もある。

 跡継ぎがいなければ、婿や養子の斡旋もそうだった。


 なによりも、もし跡継ぎ以外の兄弟がいれば、代わりに従者として取り立てる。

 もし、姉妹だけならば、侍女として取り立てる。


 こうして一度仕えた家は、そちらから離反しない限り何があっても支え続ける義務を、貴族は課せられていた。

 だからこそ、従卒たちは命を懸けることができる。



「こちらの者たちは、いかがなされるおつもりでしょうか」


 燃え落ちていく遺骨の塊を見ながら、アミアが聞いた。

 その視線の先には、武装集団のなれの果てが積み上げられている。


「こちらは殿下とティラン殿に、骨も残さず焼き尽くしていただく」


 何もケイリーは怒りのあまりそうしようとしたわけではない。

 事後を考えてのことだった。


 制式な軍同士の戦闘であれば、遺体はよほどのことがない限り遺族へと変換される。

 感情の好悪はあれ、国の命令に従い戦った者たちを無碍に扱う文化はなかった。

 仮に宣戦布告のない、先の偵察隊を殲滅したような戦闘であってもだ。


 だが、盗賊団のような犯罪者であれば、この限りではない。

 せいぜい首を持ち帰り、身体は大地に埋めていく程度だ。


 もちろんこの場合の埋葬は、供養などではない。

 遺族の下に遺体や遺骨を返せない戦友を、せめてもの供養に埋葬するのとはわけが違う。

 不死者への転生を防ぐためだ。


 恨みや無念を残して死んで野ざらしにされた遺体と魂が、悪霊などにそそのかされてゾンビやグールに転生することは少なくない。

 少なくとも埋葬しておかなければ、不死者に転生する可能性が高くなる。


 それでも遺体を掘り返され、放置などされてしまえば、さらにその可能性が上がってしまう。

 万が一、逃亡に成功した者がいて、そうしないとも断言できない。


 ケイリーを亡き者にするために、これだけの用意周到な計画を練ってくる相手だ。

 骨まで焼き尽くすのは、それを考慮してのことだった。




「よし、セルニアに戻る。あまり遅くなると、義父上が心配するからな」


 ケイリーの号令で、馬車はセルニアに向かって走り始める。

 周囲を三騎の騎馬兵が取り囲む。


 龍平も周辺警護に就くつもりだったが、鞍を吹き飛ばされていたため、おとなしく馬車に揺られている。

 レフィとティランは心の中で何か話しているのか、碧と紅の瞳のまま黙り込んでいた。


「どうしたもんかな……」


 ぼそりと龍平が呟いた。

 どうしても、ティランにかける言葉が見つからない。


 何を言っても、無責任で軽薄に思えてしまう。

 ティランの過去の重さを想像で片付けることは、冒涜だと思えて仕方がなかった。


 だからといって、目覚めてしまったティランに、危ないからまた眠ってろなどとは、口が裂けても言えはしない。

 それを言ってしまえば、表面上は納得してみせるだろうが、ティランの心は破壊されてしまう。


 そんなこと、レフィは決して許さない。

 龍平も、そんなことは許せない。


 だが、万が一にでもティランがキレてしまったら、大惨事を引き起こす程度では済まないだろう。

 セルニアが壊滅で済めば、まだマシな方だと思う。


 先ほどはレフィと機転で、何とか収拾がついた。

 しかしそれは、おそらくふたつの魂を有する身体を、それぞれが完全にコントロールできていないだけだろう。


 もし、ティランがレフィを封じる術を持ってしまったら、もう龍平には止めることはできない。

 そんな危険分子をセルニアに連れ帰ってもいいのか、その疑問が捨てきれなくなっていた。


 だが、だからといって、レフィを幻霧の森に送り返すようなこともしたくない。

 すでにレフィは龍平にとって、掛け替えのないパートナーになっている。


 単に危険な存在だからといって、遠ざけるような不義理はしたくないし、できるわけがない。

 龍平の悩みは、尽きることがなかった。



――ねえ、リューヘー。……リューヘー? ねえってば!――


 レフィがしきりに呼びかけるが、思考の深い海に沈んだ龍平は気づかない。


――リューヘー! ちょっと聞きなさいよっ! もうっ!―


 あまりにも反応のなさに業を煮やしたレフィが、軽く尻尾で龍平の膝を叩いた。


「……。……ん? あ、あぁ、すまん。ちょっと考え事してた。何だ、レフィ?」


 ようやくレフィの呼びかけに気づくが、考えていた内容は口にできない。

 素っ気なく答えたが、龍平は内心穏やかではなかった。


――もう、しゃんとしてほしいわね。ティランと話し合ったんだけど、これからのこと。ティランね、リューヘー以外の人がいるときは眠るって。誰もいなくなったら、起きるってことになったわ――


 リューヘーは黙って頷いた。

 現状、それ以外ないだろう。


 レフィ以外に、人間との交流を断ってしまうのも考え物だ。

 徐々に交友関係を広げ、ティランについて理解してもらいながら、ティラン自身も感情の抑制を覚えればいい。


「ああ。まずはそれでいいと思う。俺もティランのことを、知るところから始めないとな。でも、俺だけでいいのか?」


 だが、その最初がこの世界のことをよく知らない自分でいいのか、龍平には疑問だった。

 ケイリーやアミアといった理解あるひとびとや、デイヴやサリサ、ライカといった世事に長けた人間との交流も、早期に必要なのではないかと龍平は考えている。


――まだ、早いわ。私も、ティランはたくさんの人と、付き合う必要があるって解ってるの。でも、まだ早いの。リューヘー、お願い。ティランとみんなの架け橋になって――


 何かの拍子にひとりでも怯えたり、悪意を持ってしまったら、すべてはそこで終わってしまう。

 エメラルドのような右の瞳が強い意志をたたえ、ルビーのような左の瞳が哀願するように龍平を見つめていた。


「リューヘー様、少しだけ寂しく思いますが、早く私たちもティラン様と交流できますよう、どうかお力添えを」


 慈母のような瞳で、アミアが言った。

 ケイリーも、言葉には出さないが頷いている。


「解りました。早く皆様とティランが心置きなく交流できるよう、俺も精一杯やらせていただきます」


 何をどうすればいいか、まるで思いつかないが、やるだけやってみると龍平は心に決めた。

 その決意から逃さないと言わんばかりに馬車は進み、セルニアの門が近づいてきた。

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