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異世界メモリアル【3周目 第12話】


「ちわっす、新聞部でーす。噂の人工知能にインタビューに来ました~」

「うわわ、ロト先輩じゃないですか」


新聞部の俺としては我が校にやってきた自立歩行型人工知能にインタビューを持ちかけた。

1周目では次孔さんのインタビューに俺が付き合って酷い目にあった。

今回は新聞部だからな。

俺がインタビューをするのが至極当然の流れである。

突撃で1年のクラスに入ったところ、あいちゃんは両手でバッテンを作って拒否のポーズを取った。


「ちょっと~、事前にアポを取ってくれないと~。お肌のコンディションだってあるし」

「ないだろ! 常に完璧だわ! 紫外線浴びまくっても真っ白で一切寝なくてもクマ出来ないだろ!」


インタビューなのに、いきなりツッコミから始まってしまった。


「常に完璧とか本当のことを……」


照れているつもりなのか頬に両手を当てつつ、くねくねと体をよじっている。

別に褒めてるわけじゃないんだが。ただの事実。

食事をしないこと以外はほとんど普通の人間で、そう扱って欲しい、からか?

それにしたって、肌のコンディションなんて、ロボッ娘ジョークとしか思えん。


とりあえず彼女の対面の椅子を勝手に拝借する。放課後なので持ち主はおそらく戻ってこないだろう。

1つの机に向かい合って座る格好で、言葉を切り出す。


「いいからアポ無しでインタビュー受けてくれ、興味津々なんだ」

「えっ、ロト先輩が私のカラダに?」

「み、ん、な、が、人工、知能に、だ」

「でも私のカラダにも興味はあると」

「やめろ! そういう聞き方をするな! 無いって言ったら嘘って判定されるだろ」


相変わらずだな、と話してて思う。

するとあいちゃんは、机の上に両手を組んで顎を乗せてにんまりと笑って言った。


「ロト先輩は私にインタビューするまでもなく、よ~くご存知みたいですけどねぇ~」


……確かに結構知ってるけどな。

今更そんなこと聞いても確認になっちゃうような気もしているけどな。


「私の大事なところも知ってたりして」

「毛が無いこと以外は普通なんだろ」


言ってしまってからハッと口をつぐむ。

余計なことを言ってしまったっ!

あいちゃんは大事なところって言っただけ。これはからかわれるっ!


「え……えええっ……恋人じゃなかったはずなのに……そこまで……」


顔を赤らめていく、あいちゃん。

おお、意外にも恥ずかしがるのか。

あっ、そうか!

俺が見たと思っている……のか!?

見てはいないんだ、知ってるだけ……


「ってそれどころじゃねえ! 湯気が出るから気をつけろ!」

「えっ!? どういうことです!?」

「お前は頭が沸騰すると、本当に頭部が熱くなって湯気が出るんだよ!」

「そんな!? 嘘ですよね!?」

「博士のイースターエッグなんだ、マジであぶねえから、落ち着け」


頭部からはホカホカと湯気が上がっている。

煮えくり返ったら、火傷しかねんからな。


「ひっひっふー。ひっひっふー」

「それは出産するときのラマーズ法だが……、まぁいい落ち着け」


どうどう、と両手を下に向けて冷静になるよう促す。

落ち着きを取り戻したあいちゃんは、恨みがましい目で俺を見てくる。


「私より、私のこと、知ってるのに、よくもインタビューだなんて」


ぐぬぬ、と悔しそうな顔だ。

ううむ、以前は俺が振り回される立場だったが前前世の記憶があるせいで俺が優位に立ってしまっているのか……。

これは……愉快だ!

こいつに対して優位!

やった! このチャンス! 活かさずにおられるか!


「こほん、ではインタビューをさせていただきたいのですが」

「完全に無視して進めるとは想定外ですね」


困惑しているぞ。

人工知能を困らせるのは実に楽しい。

このあいちゃんは知らないだろうが、前前世のあいちゃんには俺は散々っぱらやられてるんだ。

今こそ、そう、倍返しだ!


「うわぁ、なんでそんないじめてやろうっていう顔付きなんですか」

「おっと、バレてしまった」

「隠す気すらない!?」

「どうせ隠したって無駄だからな」

「ここまでふてぶてしい人間は初めてですね……」

「いやいや、まだ生まれて5ヶ月も経ってないだろ」

「そんなことまで知っててインタビューするんですか」


ろくに知らない相手が自分のことをやたら知っている。

それも前前世で会っているからという理由で。

普通の人間だったら恐怖だろうな。

こいつ以外にはしないようにしないとな。


「さて、好きな食べものはなんですか」


食べることは出来ないからそんなものはない、というのが答えだとわかっているが。


「ポタージュです。特にじゃがいもの」

「あ~。なるほど~」


納得の答え。

つまりは液体なら良いんだよな。


「おや、それは知らないんですね」


目を丸くするあいちゃんだが、本当に丸くなるの面白いな。

ちょいちょい博士の趣味が出るよな。


「煮込みの汁を啜るくらいしか知らん」

「うっ、なぜそれを……」


目を><(こんなふう)にするあいちゃんだが、本当に><(こんなふう)ってなるの超面白いな。


「居酒屋にはポタージュスープなんかないから仕方ないよな」

「うっ、いつも居酒屋でレストランは1回しか行ったことないことまで」

「いや、それは知らなかったが」

「むぅ~」


してやられたという顔。

くぅ~、気持ちいいー!


「好きな男性のタイプはイケメンで頭が良くてスポーツもできる人ですか?」

「……まぁ、そうですね。普通ですみません」


なんで好きな男性のタイプを聞くのにYESかNOかの二択なんだよ! って言うと思ったのに。

どうやらツッコミを諦めてしまったようだな。テンションが低いぜ。

追加の質問でもっと困らせてやろう。


「俺がイケメンで頭が良くてスポーツもできたら好きになりますか?」

「そうですね、1%くらいの確率でなるかもしれませんね」

「あー、それは現状の俺の可能性だろ」

「えっ!?」


しまった、親密度がわかることを攻略対象に知られるのはタブーだろ。どう考えても。

こいつぁいかん、誤魔化さないと。


「卒業するまでに100%にしてやるからな」

「……先輩、それ告白ですか?」


――あ。


「インタビューしてるのはこっちだ! 質問すんじゃねー!」

「あ、誤魔化してる」

「えーと、えっと、今日のぱんつの色は?」

「履いてません」

「ええー!?」

「嘘ですよ」


結局、以前のように、俺が翻弄されるパターンに移行してしまった。

せっかく、やり込めると思ったのに。

その後インタビューが終わるまでその流れは続き、俺は懐かしのやり取りを楽し……いや楽しくなんてないが。

全く、かわいくないやつだぜ、江井愛(えいあい)





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