異世界メモリアル【3周目 第4話】
投稿遅れてすみません! っていうのよくあるけど苦手。
別にそんな待ってねえよって思われるんちゃうかって……怖くないのかな。
次孔さんに与えられた課題はシンプルなものだった。
夏休み中に、学校新聞に掲載できるくらいのネタを掴むこと。
写真も必須ということだった。
写真部のカメラを貸与されてあてもなくうろうろと校舎を歩いてみるが……。
都合よくシャッターチャンスが訪れるわけもない。
ポケ○ンスナップっていうゲームだったら勝手に出てくるんだがなぁ……。
困ったときのボランティア部。
俺は馴染みのドアを叩いた。
中には実羽さんが居たが、俺の顔を見るなり嬉しそうに笑い、かと思えばすぐに酷いものを見るような顔になり、最終的に考え込み始めた。
なんだなんだ、この百面相は。
なぜそんなに表情を変える?
きょとんとしている俺に、人差し指を唇に当てながら近づいてくる。
喋るな、ということらしい。
ボランティア部のドアを開けた状態で直立不動していると、目の前までやってきた彼女は肯定の場合は首を縦に、否定の場合は首を横に振ってくださいと告げた。
何? スパイでもいるの?
不安になるが、とりあえず顎を引く。
実羽さんはゆっくりと頷く。
「あなたがボランティア部を訪ねたのは、助けを求めてですね?」
それはそうだ。
ただ、厳密にはボランティア部の実羽さんに助けを求めているのだが。
とりあえず頷く。
「あなたは私と今、出会いました。いいですね?」
ん。
3周目に関しては確かにそうだ。
首と目だけでイエス、と答える。
よろしい、と実羽さんは夏にも関わらず白くて細い腕を組んだ。
なんなのだ?
なんの尋問なのだ?
「あなたはきっと何かの事情で気力がなく、だから妙にみすぼらしい格好をしている、そうですね?」
さすが実羽さん、なんでもお見通しか。
コクコクと頷く。
「フフフ……傷心のうえまだ次の攻略ヒロインを決めていない……そしてまだ私と世界の秘密について話していない……今度こそ……イケるっ」
小声でぼそぼそと何かを呟いてから握りこぶしを掲げる実羽さん。
一体、どうしたんだろうか……。
困惑しつつも黙ったままでいると、そこへ賑やかなメンズがやってきた。
「やぁ~マイエンジェル実羽映子~、今日も美しいねえ~」
「ククク……エンジェルはエンジェルでも我と一緒にこの世に堕ちた堕天使だがな」
妙に白くてテカテカしている衣装に金髪のチャラそうな男と、妙に黒くておどろおどろしい格好の黒髪ロングの男が実羽に近づく。お前ら制服はどうしたんだ。
「あ、あんたたち、今ちょっと忙しくって」
引きつった笑いを見せる実羽さん。
俺と一緒にいるところをイケメンに見られてしまうのを嫌がっているのだろうか。
だとすれば申し訳ないことだが。
いや、待てよ?
そう言えば1周目で実羽さんはこんなことを言っていた気がする。
『イケメンばかりに囲まれていると、中身に惹かれるようになるんですっ』
そうか、イケメンに飽きている……!?
しかもあのときって俺に攻略されたいみたいなことも言ってなかったか?
実は俺のことが好き……?
なんてな。
それはないだろう。
酒を飲んで妹に暴言を吐くような男に惹かれるわけがない。
俺はクズだ、中身はクソだ。
すると白い方が歯を光らせながら、実羽さんの耳の横に腕を押し込む。壁ドンってやつだ、初めて見た。
「ボランティア部に助けて欲しい……オレの心を、寂しさから」
黒い方も動き出し、跪いて手を差し出す。王子様か? 騎士か?
「我を救えるのは……フッ、50兆年前から貴様だけと決まっている」
すげえな、宇宙ができる遥か昔だよ。どんだけ救われない人生なんだよ。
白いやつが赤いバラを差し出し、黒いやつが黒いバラを差し出す。
「オレと付き合ってくれ」
「我と共に生きよう」
うっわ~、異なる2人のタイプの男から告白されてるよ。
これが乙女ゲーの世界か、凄えなあ。
俺が美少女2人から告白されるとか絶対ないじゃん。いいなあ乙女ゲー。ギャルゲーはつらい。
そう思いつつ余りのレアな、しかも絵になる場面だったので、俺は思わず持っているカメラのシャッターを切った。
「ちょ!? なんで写真を撮っているんですか、ロトさん!?」
カシャッ
カシャッ
「ちょっと!?」
ううむ、なんか嫌がられると余計にスクープな気がしてしまう。
これは特ダネかもしれないぞという感じが!
マスコミってなんか楽しいかも!?
カシャッ
カシャッ
「やめて~!」
両手でカメラを防ごうとする実羽さん。
おおお、週刊誌とかで見たことある感じ!
「ありがとう、悩みはこれで解決だ!」
俺はシュタッと手を上げて、実羽さんに別れの挨拶。
非難の声を背中に受けつつ、新聞部へと駆けるのだった。
「で? 被写体の了解も得ずに写真を撮って、新聞に載せようって?」
「クフフ、話題騒然ですよ、次孔のあねご。これは間違いなく特ダネです。ボランティア部の部員が、ハーレム状態……! これで入部試験は合格ですね?」
「このバカクソパパラッチ野郎が!」
「ぐふぉっ!」
強く握った拳によるアッパーカットを食らった!
予期せぬ攻撃に、舌を噛んでしまい口内に血の味が広がる。
「私はね、活躍しているけど陽の目を見ない生徒とか、学校の良いところをもっと知ってもらうために新聞作ってんだよ! 面白半分に誰かを貶めるようなやつは出て行け!」
烈火の如く怒る次孔さんに、言い訳をすることも出来ず、すごすごと退室する。
俺を殴った拳から血が滲んでいた。
――本当に俺は馬鹿だ。
クズだ、クソだ。
余りの愚かさに死にたくなる。
いっそ1回死んで1学期からやり直そうか……。
いや、それは出来ない。
今回の次孔さんに俺は感謝しているんだ。
ラジオで俺のハガキを読んでくれた次孔さんに憧れているんだ。
そして、今俺を殴ってくれた次孔さんにも。
やっぱり次孔さんは素晴らしい人だ。
改めてそう思った。
次は早めに投稿します! っていうのもよくあるけど。
だから何やねん知らんがなって思われるんちゃうんかと。
続き楽しみです!みたいな感想いっぱい来る人達なのかなー。羨ましいなー。




