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異世界メモリアル【3周目 第1話】

ついに3周目突入でございます。おかげさまで3万PV突破しました。これからもよろしくおねがいします。


夢から醒めたにも関わらず、真っ黒な世界。

暑くも寒くもない、現実味のない空間に、身体の感覚だけはある状況。

3周目が始まったことを自覚する。


時間の感覚は卒業式の翌日の気分だが、朧気にニコとのその後の人生の印象が残り、幸せだった余韻だけが心を満たしている。


やがて事務的な声が聞こえてきた。音声ガイダンスのような落ち着く声色だが、果たして声を出しているのは男か女かすらわからないので本当に人間なのだろうかと疑問を持ちながら耳を傾ける。


「あなたはロトだね。前回プレイのアイテムを引き継ぎます。また、前回でのエンディング時のステータスからボーナスをポイントを算出します」


やっぱり名前は変更不可だった。もう諦めたけど。

前回終了時のステータスが脳裏に浮かんでくる。


―――――――――――――――――――――――――――――

文系学力 235

理系学力 593

運動能力 103

容姿   152 

芸術   235

料理   176

―――――――――――――――――――――――――――――


いやー、頑張ったね、昨日までの自分。

自分で自分を褒めてあげたいですよ。

その後も新薬をバリバリ開発して世の中を変えたらしいしね、俺。

実感を伴っていないので、その後の人生については少し他人事に思えるけど……。


「理系学力に+80のボーナスポイントが付与されます。そして理系学力が倍の早さでアップする特技『理系の心得』を取得しました」


特技! あったのかよ特技!

そうか、デッドエンドじゃなくて最後までプレイしてからのスタートによる恩恵がちゃんとあったのだ。

毎回コツコツとプレイしていれば、何周目かには楽に生きていく事が出来そうだ。

むしろ、特技を持たずに頑張って生徒会に入った俺はスゴイんじゃないだろうか。


これなら誰が勝てるかよ、と思った真姫ちゃんの親父だっていつかぶっ飛ばしてみせらあ。

料理だって沙羅さんの親父に土下座させるくらいわけないだろう。

ようやくこのゲーム、いや世界のプレイ、いや生き方がわかってきたぜ。

チュートリアル長すぎ。


とすると、ギャルゲーとしては難易度の低い順に攻略していきながらアイテムと特技を集めていくがセオリーというわけか。

……いや、誰が難易度低いのかはわからないが……。


「初期ステータスを確認して、ボーナスポイントを振り分けてください」


【ステータス】

―――――――――――――――――――――――――――――

文系学力 15

理系学力 91

運動能力 15

容姿   12

芸術   9

料理   5

ボーナスポイント 30

―――――――――――――――――――――――――――――


理系のスタート楽ゥ~!

もちろん運動能力が高い状態で始めたいィ~!

今回も俺は迷いなくステータスを割り振る。


【ステータス】

―――――――――――――――――――――――――――――

文系学力 15

理系学力 91

運動能力 45

容姿   12

芸術   9

料理   5

―――――――――――――――――――――――――――――


ブサイクでも死にはしないが、運動能力15は生きていくだけで精一杯だからだ。

なんにせよ3周目は理系以外の何かにズバ抜けて特化する戦略になるだろう。

ただ単に4周目のことを考えるなら運動能力を上げておくのが望ましい気がするが……。


そんな考えをしていると、もはや慣れ親しんだ春の香りが鼻に運ばれてくる。

期待を持たざるを得ないくらい、爽やかで澄み渡った空と桜を見上げた状態で肉体に魂が宿るのを感じる。

この始まり方は嫌いじゃない。

いかにもこれから青春が始まるって感じがするからだ。

誰もがワクワクドキドキ、夢や希望に溢れた気持ちでプレイするに違いないゲームのオープニング。

運動能力が45あることも手伝って、石段を上がっていく足も軽やかだ。

周囲の生徒達の挨拶も声が弾んでいる。


「よーう! 義朝! 相変わらず元気だな!」

「おお! ロト! お前もな!」


義朝に挨拶を済ませ、校舎に向かう。

ただの設定だった親友も、もはや紛れもない親友になっていた。

こういう部分でも3周目は今までとは異なる生活になるだろう。

タイムリープや、やり直しとはちょっと違う。

それらに比べれば積み上げる事ができる分、優しい世界と言えるのかもしれない。


もともと俺はゲーマーなんだ。

ギャルゲーはやったことはあるが、メインで遊んでいたジャンルじゃない。

それでも3周目になったことでゲームらしさ、攻略の方法が見えてきた。

今度こそ、俺のゲーマーとしての腕を見せてやる。


今までに培った情報や経験と、3周目になったことで得られたアドバンテージを活かす。

4周目、その次の5周目にどのキャラクターを攻略していくかという戦略を立てて、そのパラメーターが有効となる女の子を今回は選択してエンディングを迎える。

デートやイベントを楽しみながら、次のプレイにつながるよう情報収集とアイテムの持ち越し、特技の予測などを行って自分のための攻略情報を蓄積するんだ。


さぁ、輝かしいときめきなハイスクールギャルゲーライフが始まるぜ!


……なんてな。

んなわけねえだろ。


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